Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

2021年:生活スタイルの移行

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2009年度に北里大学に赴任して13年目でした.もしも定年 (2034年3月) まで北里大学に勤めるとした場合,在職期間の半分 (12.5年) が過ぎたことになります.

赴任初年度から続けているものごとも,改良を続けているうちに姿を変えています.さらに今回の感染症対策で急に始まったオンライン環境の整備や,これに伴う大学の仕組みや私の生活スタイルに変化があり,そこから次の時代に進むために生活スタイルが移行しつつあることを感じる1年間でした.

●担当科目

  • 「化学」,医療衛生学部医療検査学科,選択必修,通年,火曜3限,履修107名
  • 「化学」,医療衛生学部医療工学科臨床工学専攻(必修) + 診療放射線技術科学専攻(選択必修),通年,水曜1限,履修96名
  • 「化学要習」,学部学科専攻イロイロ,前期,火曜4限コース,履修36名
  • 「大学基礎演習」,学部学科専攻イロイロ,前期,火曜5限,履修22名
  • 「化学実験」,学部学科専攻イロイロ,通年,木曜午後・金曜午後,履修約700名

講義+演習が88回,実験が48回(講義168回に相当),合計256コマ = 23,040分.

●再び人々が集い始めたキャンパス

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2021年度は一部の科目や一部の実習を除いて,2019年度までと同様に講義室や実習室に学生が集う日々が戻りました.

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講義室では座席間の距離を空けて着席し,窓を開け時間を短縮して講義がおこなわれました.全員マスク着用なので,講義室に集う人々の顔を覚える機会ができなかったのが残念でした.

●オンライン教材を充実させるとりくみ

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2020年度に急激にオンライン化されたことがきっかけとなって,教材をオンラインで提供するしくみを積極的に活用できるようになりました.担当講義では,昨年度に制作した動画教材を再編集して予習動画と復習動画に作り替え(作り替えることを前提に作ってありました),講義室での講義と組み合わせる形式にしました.実際のところは講義室で講義を受けなくても,講義内容は動画で学べる状況になっています.

動画教材は黒板や印刷物といったフォーマットの限界を超えるために有効な手段だと考えています.一時停止して確認するとか,わかりにくいところをリピート再生するとか,すでに理解している部分をスキップできるといったメリットがあります.

高校化学基礎リメディアル「化学要習」向けに作った13本を含めて,2021年度は67本の動画を制作しました.

2022年度も,自習環境を支援するために動画を中心とする教材を作って行きます.


●チャットと添削でつながる化学実験

6週間6テーマに取り組む化学実験のうち,4テーマは実習室でおこない,2テーマはオンライン動画を視聴しつつGoogle Meetを利用したチャットでの質疑応答をおこなう,という形式になりました.化学実習室での3密を回避するためです.このチャット対応を1年間にわたって担当しました.毎週木金午後がこの時間でした.

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6テーマのうち「陽イオンの系統分析」の実験レポートについては詳しく添削したうえで返却することになっており,その添削を担当しました.特に指摘する箇所のない場合であっても,必ず一言コメントをペンで記入して返却しました.

スクリーンを介しての文字列のやりとりと,実験レポートを介しての一往復の文字列の交換が,約700名の化学実験履修者とのコミュニケーションでした.

●リモートワーク主体の生活

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担当科目,会議,学生との面談などがある日は大学に行きましたが,基本的には自宅で仕事を進めた1年間でした.
昨年春以降,学外とのビデオ会議の機会も増えましたが,大学にオフィスがないのでビデオ会議への参加は自宅の個室からになります.
時間の自由度や通信環境,作業スペースの確保などにより,生産性は飛躍的に高くなったのですが,適当なタイミングで休みを取ることの難しさも感じています.

●オンライン企画イロイロ

2月には #キャンナビ @KitasatoNavi 主催の「オープンキャンパス番外編」がオンラインでおこなわれました.

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ここでは特別講義「理系の大学って何するの?」を担当しました (Zoomウェビナー).パネリストとして参加したキャンナビのイロイロな学年イロイロな学部のメンバーに私から簡単な質問を投げかけて行って,それに対するコメントに私が情報を付け加える,というやり方にしました.

6月には情報機構主催のセミナー「実験ノートの取り方、使い方と重要なポイント~基本の考え方、思わぬ落とし穴、優れたノートとは!?等~」で講演する機会がありました (Zoomウェビナー).

8月にはテックデザイン主催のセミナー「研究者・技術者のための今すぐ実践したい!実験ノートの書き方・活用のポイント」で講演する機会がありました (Zoomウェビナー).

●執筆

2月に『はじめて学ぶ化学』(2012年)が第11刷増刷となりました.また,12月には『誰も教えてくれなかった実験ノートの書き方』の第8刷増刷が決定しました.読者のみなさまにお礼申しあげます.

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この2冊がきっかけとなって,書籍出版や講演などの依頼が続いております.大学業務の妨げとならない限りお引き受けすることにしています.
8月には「月間研究開発リーダー」誌に「研究者・技術者のための実験ノートの書き方と活用ポイント」と題して解説記事を執筆する機会がありました.
現在,執筆を進めている書籍が何冊かあります.

●感染症から身を守る

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モデルナのmRNAワクチンを2回打ちました.1回目はちょっとした筋肉痛のようなものが発生しただけでしたが,2回目は発熱しました.
mRNAの試験管内合成は大学院生の頃から数年前まで何度も何度もやった作業なので,それと同じ原理で調製された生体高分子が自分の身体に打ち込まれて,感染症との戦いで力強い味方になってくれるという状況に感激しました.

●孫

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3月,2020年秋に生まれた孫 (長女の長男・初孫) に会いに行きました (大学からの強い旅行自粛要請に従っていました).
12月には長女夫婦が孫を連れてやってきました.
娘2人は育てた経験があるものの,息子のいない私にとって,小さな男の子の成長ストーリーは未知の世界です.

●2022年へ

2021年のテーマは「未来へのスイッチを入れる」でした.感染症拡大で2020年に強制的に停止したままのものごとについて,次々とスイッチを入れて行く日々にしようと考えたからです.このとき,2019年までの世界に戻すことを考えるのではなく,望ましい姿の未来を築くためにさまざまなものごとを再起動して行くと考えることにしました.

2022年のテーマは「調和を目指して進んで行く」です.2021年に次々と再起動してきたものごとに加えて,新しい計画も立てて実行に移し始めました.そうしたものごとが全体として調和の取れた状態で進行して行く日々にしようという考えです.

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