Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

実験レポートの書き方(4)参考文献はどう書くのか?/提出前に何をチェックするのか?

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「参考文献」には何を書くのか

さて,次は最後のセクション,「参考文献」です.
f:id:takahikonojima:20130604183258p:plain
実験レポートを書くにあたって,実験テキスト以外の資料を参考にしたことでしょう.

その際に参考にした情報をすべてリストにしたものが「参考文献」です.

f:id:takahikonojima:20130604183310p:plain
自分で発見した情報でない限り,それはどこかの情報源から見いだしてきた情報です.

その情報がどこに記されているものであるのかを明記した上でレポートに記載する行為は「引用」であり,正当な行為です.

一方,明記しなかった場合,レポートを読む第三者には,その情報が「あなたのアイデア」なのか「別の人のもっていた情報」なのか区別できません.

このように,自分のアイデアではないものを,情報源を明記せずに報告する行為は「剽窃(ひょうせつ)」と呼ばれ,窃盗と同等の扱いを受けます.

不正行為として処罰の対象にもなり得るので,注意が必要です.

f:id:takahikonojima:20130604183319p:plain
参考文献を記載するにあたっては,「それを見た第三者が,その情報源にたどりつける書き方」をしなければなりません.

著者名,書籍名,出版社,出版年,といった情報があれば,図書館なり書店なりに行って情報源にアクセスできますね.

学術専門誌などの定期刊行物に記載されている情報を引用する場合には,巻号,該当ページ,も記載する必要があります.

レポートを書き上げたら・・・

f:id:takahikonojima:20130604183329p:plain

  • 指定された項目はすべて記されているか?
  • 図表番号に重複・欠落はないか?
  • 図表番号と本文とは対応しているか?
  • 単位に誤りはないか?
  • 計算間違いをしていないか

というような基本事項を確認します.

〆切厳守

f:id:takahikonojima:20130604183337p:plain
〆切に間に合わせることが重要です.

どんなにクオリティの高いすばらしいレポートでも,〆切過ぎたら減点.注意せよ.

お礼

ここに書かれている内容は,私自身が大学時代にティーチングアシスタントの大学院生とか,要領のいい生産性の高い先輩から教わった内容をもとにして,2010年度前期の「教養演習B『大学生としての学び方』」に向けて準備したものが元になっています.

2010年度版作成においてはTwitter上でのディスカッションが役に立ちました.

アドバイス,提案,などを下さったTwitter上の皆様にお礼申し上げます.

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実験科目関連記事

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誰も教えてくれなかった実験ノートの書き方 (研究を成功させるための秘訣)

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実験レポートの書き方(3)考察ネタはどのように探すのか?

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● ソレ,考察ではありませんから

f:id:takahikonojima:20130604181935p:plain
実験レポートでもっとも苦労するのが「考察」です.

ここは得られた結果から何が言えるのか,「あなたの考えを述べるところです」.

なんですが,

そもそも考察って,何でしょうか?

これを考えるにあたって,「考察ではないもの」を例に挙げておくと参考になるかもしれません.

f:id:takahikonojima:20130604181954p:plain
「とてもおもしろい実験テーマでした.」とか「炎が緑色に光ってきれいでした.」というようなのは考察ではなくて「感想」です.

「溶液をこぼしてしまったことが悔やまれる.」とか「今回学んだことを将来に活かしたい.」というのは「反省文」とか「決意表明文」であって,考察の欄に書くものではありません.

家に帰って日記にでも書いて下さい.

というあたりで,「考察をどうするか問題」にとりくみましょう.


● 考察ネタ探しはツラくない

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実は大学の実験実習で扱われる実験の考察は,難しくありません.

そのことを理解するために,そもそも大学ではどんな実験実習が行われているのかを考えてみましょう.

まず,開講されている講義科目の内容を実体験することが目的として実験科目が開講されている場合がほとんどなので,講義関連のトピックから実験テーマが選定されています.

どんなテーマでもよいのかというと,そういうわけにも行きません.

大学の設備を使って,何十人もの学生が,時間内に,安全に,そして,ソコソコの成功率でできる実験,が選ばれているのです.

多くの場合は何年も前から続いているテーマで,他の大学でも行われているテーマが選ばれています.

だから,考察するためのネタはすでに世の中にストックされているのです.

いきなり高度にクリエイティブな論を立てる必要はないのです.

● 考察ネタ探し:3大考察ネタ

学生実験実習の考察には,実は,よく使われるネタがあります.
f:id:takahikonojima:20130604182047p:plain

1 誤差と精度と信頼性に関するもの

「誤差と精度と信頼性に関するもの」は,たとえば「理論上は100 gの目的物が得られるはずのところで50 gしか得られなかった.なんでだろう?」というようなものです.

この場合は,自分の実験操作をふりかえってみて,こぼさなかったか,というようなあたりからチェックすると,何か思い当たるフシがあったりするものです.

まずは「誤差と精度と信頼性に関するもの」を攻めるのがストレートな戦略です.

2 実験方法の妥当性に関するもの

「実験方法の妥当性に関するもの」は,たとえば「理論上は100 gの目的物が得られるはずのところで50 gしか得られなかった.でも別の方法を使ったら80 gになるかもしれない」というようなものです.

実験に関する書物を何冊かめくっていると,同じテーマでも異なる器具や試薬を用いている場合があります.

そういうのが参考になります.

3 実験の発展案に関するもの

「実験の発展案に関するもの」は,「今回のやりかたでは80 gあたりが限度だが,○○○装置を用いれば90 gくらいになるだろう」というようなものです.

レポートを採点する側が,「おぬし,やるな」となるのはこういうパターンです.

それなりに下調べが必要だし.

● 考察のやりかた

というわけで,今回は学部実験実習レポート考察の定番である「理論値と差異を論じる」場合を例に,考察のやりかたを考えてみましょう.

1 実験が順調に進んで,理論値に近い値が得られた場合の考察

f:id:takahikonojima:20130604182233p:plain
どのような場合に上手く「いかない」かを調べてみて,それを自分(たちのグループ)が避けたことを述べます.

そして,そのことが成功につながったこと,その要素が実験を進めるために重要であること,を述べます.

実験テキストや実験書を読むと,実験を行ううえで注意しなければならない点が書かれているものです.

そういった点を「実験前に」調べておくと,実験がうまく行くし考察も楽ですね.

2 実験操作に対する制約条件をネタにする考察

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たとえば実験テキストどおりに操作を進めてみても,やりにくい操作とか,判定しづらい判断基準とかにぶつかることがあります.

そういった点があったために,理論値から外れた結果になった,という論理展開です.

実際に実験をやりながら気づいた点をノートに記録していれば,この手のネタがいくつかみつかるものです.

3 自分が犯したミスをネタにする考察

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「もうちょっとしっかりやっていれば,もうちょっと理論値に近い値になっただろう」という内容を,反省文ではなく考察文として書くのです.

理由は3つくらい挙げておくことをおすすめします.

そうすれば「それだけの理由でこんなに低い値になるのか?」というツッコミを防ぐことができるかもしれません.

● 考察は実験の予習をするときに始まる

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というようなことを考えると,考察で苦しまないためには,実験にとりかかる前からどのあたりで考察するかを決めておく必要があることに気づきます.

まず実験操作の原理と操作と,それらに関する歴史的経緯,というようなあたりを関連書籍などで調べておくと,注意を要する点や,成功の秘訣といったものが見えてくるものです.

そういった点をアタマの片隅に置いておきながら,実際に手を動かして操作をやってみると,前もって調べておいたものごとの意味がよくわかります.

そこで気づいた点を考察のテーマとして選びましょう.
f:id:takahikonojima:20130604182321p:plain
考察は実験予習時にはじまるのです.

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●この記事参考情報としている記事

http://kobe-u.libguides.com/content.php?pid=656863

● 実験科目関連記事

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実験レポートの書き方(2)それぞれの項目には何を書くのか?

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「目的」には何を書くのか

f:id:takahikonojima:20130604181055p:plain
「目的」には,「何のために何をやったのか」を書きます.

これは実験テキストに書かれている内容を要約して書けばOK.

「原理」には何を書くのか

f:id:takahikonojima:20130604181101p:plain
「原理」には,「どのような手段で実験目的を果たすのか」を書きます.

実験で用いられる手法の原理に関して説明します.

ここも実験テキストに説明が載っているものですが,教科書なり実験書(実験テキストとは別の書籍)をめくって内容を充実させましょう.

ここで参考にした書籍は,レポート最後の「参考文献」リストに加えておくことを忘れずに.

「実験方法」には何を書くのか

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「実験方法」には,「どのような装置・試薬・技術を用いたのか」を記載します.

これも実験テキストの内容をもとに,参考文献を見ながら内容を充実させましょう.

f:id:takahikonojima:20130604181115p:plain
「実験方法」では「過去形」で記述します.実験書には「これからやる方法」が記されているので現在形が使われています.

実験レポートには,「すでにやったこと」を書くので過去形になります.

「実験結果」には何を書くのか.

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「実験結果」には,「どのような結果が得られたのか」を記載します.

数値データとか観察記録といった,「具体的な情報」です.

その情報から推定されるものごととか,その結果の解釈については「考察」で述べます.「実験結果」には,中立な結果だけを記載します.

f:id:takahikonojima:20130604181126p:plain
実験結果は具体的に記述します.

化学実験で反応にともなって試料の色が変わったことを記録するのであれば,単に「色が変わった」ではなく,「薄い黄色から青緑に徐々に変化した」というように,第三者が読んでイメージできるよう,具体的に書きます.

図表を書くときの注意

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表や図を使って説明するのもおすすめです.

このとき,表や図の通し番号を飛ばしたり重複させたりしないようチェックしましょう.

また,本文中の番号と実際の番号がズレていないかも要チェック項目です.

改訂作業のときにズレることがあります.

図ではタイトルを下に,表では上に書く,という決まりを忘れずに.

計算式を書くときの注意

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計算式を記す際には,数値だけでなく単位も常に記しておくこと.

こうすることによって計算ミスや単位の間違いを防ぐことができます.

数値だけで計算を進めて,最後に単位を付け足すというやりかたは,ミスの元になりますので,やめ!

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数値と単位の間にはスペースを入れます.国際的な決まりです.

数値と単位の間には通常1字分の空白(スペース)を挿入する.


国際単位系(SI)の要約日本語版/独立行政法人産業技術総合研究所計量標準総合センター

「15 m」は「じゅうごめーとる」,「15m」は「じゅうごえむ」と読みます.

たとえば「15 cmの鉛筆一本の長さをmとした場合,この鉛筆を縦に10本つないだ際の長さ」は「10m」(じゅうえむ)になります.

「10 m」(じゅうめーとる)と書いたら間違いです.

一方,その時のながさをメートルで表すなら,「1.5 m」(いちてんごめーとる)になります.

「1.5m」(いちてんごえむ)ではありませんね.

半角スペースを入れないと減点される場合があります(特にワードプロセッサで印字するとき).

温度をあらわす場合は,「37 °C」が正しく,「37° C」や「37°C」は国際ルール違反です.

スペースは数値と「°C」の間に入れます.

「パーセント」の場合も,数値と「%」の間にスペースを入れます.

「15 %」は正しく,「15%」はダメ.

ただし,°Cと%についてはわざとスペースを入れない書き方にしている専門書もあります.

習慣でそうなっちゃってるわけです.

単位のルールについての日本語によるわかりやすい解説→日置 昭治:量の表しかた,ぶんせき,2011年2月号,p66-71

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実験科目の「過去レポート」や「過去ノート」が手に入ったときにはどうすればいいのでしょうか?

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おことわり

  • この記事では実験実習科目を履修する大学1年生を読者として想定しています.
  • この記事では大学としての考え方を説明しているわけではなく,私の考え方を説明しています.

過去問ゲットは試験勉強の基本

試験勉強をする際には,過去に出題された問題,いわゆる「過去問」が役立ちます.大学入試でも,大学が公式ウェブサイトで入試問題過去問を公開しています.大学の定期試験においても,過去問が公開されている科目があるし*1,公開されていなくても,上級生がまとめた過去問のコピーが出回って来ることがあります*2

実験科目でも過去の資料が手に入る場合がある

実験科目においても,上級生から「過去レポート」やそのコピーが回ってくることがあって,ときどき「過去ノート」まで出回ってくることがあります.こういうものが入手できる場合,どうすればいいものでしょうか?

私の考えは,「入手できる資料は利用せよ!」です.過去レポートの場合,考察ネタ探しのヒントが得られるし,「だいたいどのような実験結果が得られる」という情報がわかるので,実験中に集中して取り組まなければならないポイントを絞れるからです.

丸写しダメ

過去レポートを丸写しして提出するのはダメです.レポートを丸写しして提出する行為は,試験時間内に隣の席の受験生の答案を盗み見して解答するカンニングと同等の不正行為だからです.大学によっては処罰される場合があります.「参考にする」のはOKで,「丸写しする」のはダメ.「参考にする」のと「丸写しする」のとを厳密に区別することはできません.ここはあなた自身の良心で決めてくださいな.

過去ノート

「過去ノート」も役に立つ場合があります.上手にまとまったノートが入手できた場合には,実験記録の取り方のお手本になるし,観察記録や測定結果からは,これから自分が取り組む実験においてどのようなことが起きるのかをイメージしやすくなるからです.失敗例が記録されている場合もあって,どのような点に注意して操作に取り組むべきかのヒントが得られることもあります.

おまえはどうだったのか?

私も大学1年生から3年生まで,ほとんどの実験テーマについて過去レポートのコピーを集めていました.中にはコピーが繰り返されて字がつぶれて読みにくいものもありましたが,何年もコピーされて続けてきたレポートは良く出来たものである場合が多く,そういうものを複数ルートから手に入れて見比べて参考にして,さらによいレポートづくりを目指したものです.

注意

以上は私の考え方です.実験科目の担当者から「過去の資料を参考にしてはいけない」と指示されている場合には,そっちの指示に従ってください.また,禁止されていなくても,この世の中には,過去レポートの入手を快く思わない担当教員もいることをお忘れなく!

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誰も教えてくれなかった実験ノートの書き方 (研究を成功させるための秘訣)

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はじめて学ぶ化学

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*1:私は定期試験の過去問と解答をセットにして自由にダウンロードできる状態にしてあります.講義初回に前年度の試験問題を配付している科目もあります.

*2:良くできた過去問と解答例が回ってくるかどうかが勝負の分かれ道,などという科目もあります.日頃の努力ではなく,人脈で成績に差が付く場合があり,それが問題だという意見もある一方,情報入手ルートの開拓も含めて大学での学びであるという主張もあります.どれが正しくどれが正しくないという性質の問題ではありません.

実験科目の「予習」って具体的に何をすればいいんでしょうか?

おことわり *1

  • この記事では実験実習科目を履修する大学1年生を読者として想定しています.
  • この記事に書いてあることと,実験担当者の言ってることとが違ったら,後者に従ってください.

(1) 実習書を読んでどこがわかんないのかハッキリさせておく

まず実習書を読みます.読んでみて知らない用語が出てきたら,ソレが何なのか調べます.
すでにそのテーマをやった班があれば,その人々に聞きます.そういう班がなければ,Web検索します.
Web検索してわからなければ,実験当日の説明が終わってから,担当者に質問します.

(2) とるべきテータの一覧表をノートに書いておく

その日に行う測定や観測の一覧表を実験ノートに書いておきます*2
実習書を読めば,その実験で具体的に何を測定するのか,何を観察するのかわかります.
たとえばこんな感じにまとめておくと,記録し忘れを防げるでしょう.
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(3) 操作手順をノートに書いておく

その日にやる操作の操作手順を箇条書きとかフローチャートっぽいの*3とかにしてノートに書いておきます*4
実験室では実習書ではなく,こっちを見れば自動的に実験が進む状態にしておきます.
たとえばこんな感じに書いておくと,間違えずに操作が進められるでしょう.
f:id:takahikonojima:20140527154134p:plain

チェックリストにするのもオススメします.
f:id:takahikonojima:20140527154140p:plain

1ページを左右に分割して,左側に操作手順,右側に結果を書く,とか,見開きページの左側に操作手順,右側に結果を書く,というやり方をすると便利です.

(4) 自分で書いた操作手順を読みながら実験操作をイメージする

具体的にどうやるのかイメージできないところがあったら,実習書を読み直して操作手順に追記します.実習書を読んでわからなければ(1)に戻ります.

(5) よく寝ておく

寝不足で説明が頭に入らなくて操作を間違えて最初からやり直しになったりケガをしたりっていうことがあるし,いったん始めると休めないテーマもあるから,前の晩には よく寝ておくこと.

(6) 実験前の説明を聞くときのポイント

実験前の説明はミスやケガを防ぐためにも,実験前の説明を聞くことは重要です.
でも,長い説明を集中して聞き続けるのはムリです.だから集中して聞くポイントの選択と集中が必要になります.

具体的には以下の2点.

(a) 注意点

「実習書に書いてあるコレはこういうことを意味する」とか,「ココでこうやると失敗する」とか,「やり忘れる人が多いのはココ」っていうポイントはメモしておきます.

(b) 予習してわかんなかったところ

みんながわかんない点については説明があります.説明をきいてもわからなかったら必ず質問すること.早期解決重要.

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*1:ここに書いた内容は学生実験の予習について「よくあるパターン」であって,「世の中の全ての実験科目に対して こうやるのが正しい」と主張するものではありません.こういうガイドをオンライン公開すると,「いや,そうじゃない場合だってある」とか「俺は こう教わった」とか「そうやってない科目もある」とか「そのとおりにやって問題が生じたときにオマエは責任をとるのか」などとわざわざコメントして来るヒトがいるので,先にそのことをお断りしておきます.

*2:実験ノートではなく別のシートに書いてくる決まりになっている実験科目もあります.

*3:「フローチャート」っていうのには「書き方の決まり」があって,ここでは「フローチャート」って言わないで「フローチャートっぽい」って書いてます.

*4:実験ノートではなく別のシートに書いてくる決まりになっている実験科目もあります.

実験レポートで「方法」と「結果」をうまく分けて書けない場合にはこうすればOK

おことわり *1

この記事では実験実習科目を履修する大学1年生を読者として想定しています.

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実験レポートでは「目的」,「方法」,「結果」,「考察」,「参考文献」を分けて書くのが「おやくそく」になっています.

ここで,実験テーマによっては「方法」と「結果」を分けて書くのが難しく感じる場合があります.

2つの例を挙げてみます.

1 もしもこうなったらこうする/ああなったらああする

実験書にはこう書かれている↓

箱のフタを開けて,中にネコがいれば魚を,イヌがいれば肉をエサとして与える.エサを与えた後の動物の反応を観察する.

実際に進めた実験はこんな具合だった↓

  1. あなたは箱のフタを開けた
  2. あなたは箱の中にイヌがいることを見いだした
  3. あなたはイヌに肉を与えた
  4. あなたから肉をもらったイヌはワンワンワンと吠えた.
  5. あなたは「イヌがワンワンワンと吠えた」と実験ノートに記録した.

ここで実験書を丸写ししたヒトがレポートにこういうことを書いてくることがあります.

コレはダメな例.

[方法] 箱のフタを開けて,中にネコがいれば魚を,イヌがいれば肉を与えた.

なんでダメかっていうと,あなたはネコには会っていないのだから,「中にネコがいれば魚を」やった,と書いたら,やってもいない「ウソ」を書くことになっちゃうからです.

「あなたがやった方法」にはネコは登場しないのです.登場するのはイヌだけ.

っていうわけで,こんな書き方をする人が出て来るわけです↓

[方法] 箱のフタを開けたら,中にイヌがいた.イヌに肉を与えた.

コレもダメです.

なんでダメかっていうと,「何をやったらどうだった」ってのは「方法」じゃなくて「結果」に書くのが「おやくそく」だからです.

「中にイヌがいた.」っていうのは,フタを開けるっていう操作をやってみた「結果」としてわかったことですよね?

だったら「方法」に書いたらダメで,書くとしたら「結果」になるのです.

じゃ,どのように書けばいいのかっていうと,たとえばこんな感じ↓

[方法] フタを開けて箱の中の動物がイヌかネコなのかを判別した.箱の中にいたイヌに肉を与えた.
[結果] フタを開けたところ,箱の中にいた動物がイヌであることがわかった.イヌに肉を与えたところイヌは〜

もっと簡潔に書くとしたらこんな感じ↓

[方法] フタを開け,箱の中にいたイヌに肉を与えた.
[結果] イヌに肉を与えたところイヌは〜

実験書を読んで「こうなった場合にはコレ,そうなった場合にはソレ」っていうパターンに出会った時には,その実験についてレポートに書くとき,こんな調子に対応してください.

2 こうなったらこうする

実験書にはこう書かれている↓

箱のフタを開けて中にいるイヌに肉をエサとして与える.エサを与えた後のイヌの反応を観察する.

この場合,箱の中にイヌがいることは実験前からわかっていることなので,「箱の中にはイヌがいた.」などとレポートにわざわざ書く必要はありません.

こう書けばOK↓

[方法] フタを開けて箱の中のイヌに肉を与えた.
[結果] 肉を与えられたイヌは〜

実験書を読んで「こうなることがわかっている.その次はソレ」っていうパターンに出会った時には,こんな調子に対応してください.

これで例えば「A液をB液に加えたときに沈殿が生じたらこうする.」と「A液をB液に加えたときに沈殿が生じるかどうかを確かめる.」のそれぞれについて,方法と結果の書き方が違うの,わかったよね?

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*1:追記:2014-09-05

実験レポートの書き方(1)実験レポートって何でしょう?

おことわり

  • この記事で主な読者として想定しているのは,実験実習科目を履修する大学1年生です.
  • 2010年6月3日に公開した記事を継続更新しています.

実験レポートって何でしょう?

f:id:takahikonojima:20130604180505p:plain
実験レポート提出は,実験実習の最終段階です.

そして実験レポートは,あなたが実験を行ったことを宣言する書類です.

だから,実験レポートを提出しなければ,実験実習をやったことにならないのです.

やってはいけないこと

f:id:takahikonojima:20160209141750p:plain
絶対にやってはいけないことがあります.

やってもいない操作をやったと書いたり,数値をごまかしたりしてはいけません*1

こういう行為は試験中のカンニングと同等の行為として,処罰の対象になります.

f:id:takahikonojima:20130604180634p:plain
誰かが書いた実験レポートを丸写ししてもいけません.

過去のレポートのコピーだとか,友達のレポートだとかを丸写しする行為は,カンニングと同等の行為です.

特に,友達にレポートを見せてもらって,そっくりそのまま提出した,というような場合には,レポートを写した方も,写させてやった方も処罰の対象になります.

試験時間内に答案を見せてやった方も罰せられるのと同じです.

実験レポートは「あなたの課題」です.だれかの丸写しはダメです.

実験レポートの形式

f:id:takahikonojima:20130604180643p:plain
実験レポートには万国共通の形式というものがありません.

実験科目ごとにイロイロと違いがあります.

用紙のサイズだとか,書式だとか,枚数だとか,そういったことは各実験担当教員の指示に従って下さい.

ここでは,そういう細かい違いは考えず,世間いっぱんに「実験レポート」と言われたときに想定される平均的なレポートを想定してハナシを進めます.

だから,ここで述べられて行く内容と,自分が履修している実験実習科目の担当者からの指示とが違った場合には,後者に従って下さい.

実験レポートの文体

f:id:takahikonojima:20130604180656p:plain
ですます調ではなく,断定調で書きます.

実験実習レポートに限らず,大学でのレポートとか論文とかは断定調で書くものです.

実験レポートの構成

f:id:takahikonojima:20130604180704p:plain
実験レポートの構成は,だいたい決まっています.

  1. 目的
  2. 原理
  3. 実験方法
  4. 実験結果
  5. 考察
  6. 参考文献

です.

「原理」と「実験操作」はいっしょになっている場合もあります.

「参考文献」は厳密には「参考文献と引用文献」に分かれているはずなのですが,学部実習実験レポートではこのふたつはごちゃまぜになっていることが珍しくありません.

それぞれの項目に何を書いて行けばよいのか,ひとつずつ見て行きましょう.次の記事に続きます↓
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誰も教えてくれなかった実験ノートの書き方 (研究を成功させるための秘訣)

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はじめて学ぶ化学

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*1:実験ノートも同様です.