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化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

実験レポートの書き方(3)考察ネタはどのように探すのか?

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● ソレ,考察ではありませんから

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実験レポートでもっとも苦労するのが「考察」です.

ここは得られた結果から何が言えるのか,「あなたの考えを述べるところです」.

なんですが,

そもそも考察って,何でしょうか?

これを考えるにあたって,「考察ではないもの」を例に挙げておくと参考になるかもしれません.

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「とてもおもしろい実験テーマでした.」とか「炎が緑色に光ってきれいでした.」というようなのは考察ではなくて「感想」です.

「溶液をこぼしてしまったことが悔やまれる.」とか「今回学んだことを将来に活かしたい.」というのは「反省文」とか「決意表明文」であって,考察の欄に書くものではありません.

家に帰って日記にでも書いて下さい.

というあたりで,「考察をどうするか問題」にとりくみましょう.


● 考察ネタ探しはツラくない

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実は大学の実験実習で扱われる実験の考察は,難しくありません.

そのことを理解するために,そもそも大学ではどんな実験実習が行われているのかを考えてみましょう.

まず,開講されている講義科目の内容を実体験することが目的として実験科目が開講されている場合がほとんどなので,講義関連のトピックから実験テーマが選定されています.

どんなテーマでもよいのかというと,そういうわけにも行きません.

大学の設備を使って,何十人もの学生が,時間内に,安全に,そして,ソコソコの成功率でできる実験,が選ばれているのです.

多くの場合は何年も前から続いているテーマで,他の大学でも行われているテーマが選ばれています.

だから,考察するためのネタはすでに世の中にストックされているのです.

いきなり高度にクリエイティブな論を立てる必要はないのです.

● 考察ネタ探し:3大考察ネタ

学生実験実習の考察には,実は,よく使われるネタがあります.
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1 誤差と精度と信頼性に関するもの

「誤差と精度と信頼性に関するもの」は,たとえば「理論上は100 gの目的物が得られるはずのところで50 gしか得られなかった.なんでだろう?」というようなものです.

この場合は,自分の実験操作をふりかえってみて,こぼさなかったか,というようなあたりからチェックすると,何か思い当たるフシがあったりするものです.

まずは「誤差と精度と信頼性に関するもの」を攻めるのがストレートな戦略です.

2 実験方法の妥当性に関するもの

「実験方法の妥当性に関するもの」は,たとえば「理論上は100 gの目的物が得られるはずのところで50 gしか得られなかった.でも別の方法を使ったら80 gになるかもしれない」というようなものです.

実験に関する書物を何冊かめくっていると,同じテーマでも異なる器具や試薬を用いている場合があります.

そういうのが参考になります.

3 実験の発展案に関するもの

「実験の発展案に関するもの」は,「今回のやりかたでは80 gあたりが限度だが,○○○装置を用いれば90 gくらいになるだろう」というようなものです.

レポートを採点する側が,「おぬし,やるな」となるのはこういうパターンです.

それなりに下調べが必要だし.

● 考察のやりかた

というわけで,今回は学部実験実習レポート考察の定番である「理論値と差異を論じる」場合を例に,考察のやりかたを考えてみましょう.

1 実験が順調に進んで,理論値に近い値が得られた場合の考察

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どのような場合に上手く「いかない」かを調べてみて,それを自分(たちのグループ)が避けたことを述べます.

そして,そのことが成功につながったこと,その要素が実験を進めるために重要であること,を述べます.

実験テキストや実験書を読むと,実験を行ううえで注意しなければならない点が書かれているものです.

そういった点を「実験前に」調べておくと,実験がうまく行くし考察も楽ですね.

2 実験操作に対する制約条件をネタにする考察

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たとえば実験テキストどおりに操作を進めてみても,やりにくい操作とか,判定しづらい判断基準とかにぶつかることがあります.

そういった点があったために,理論値から外れた結果になった,という論理展開です.

実際に実験をやりながら気づいた点をノートに記録していれば,この手のネタがいくつかみつかるものです.

3 自分が犯したミスをネタにする考察

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「もうちょっとしっかりやっていれば,もうちょっと理論値に近い値になっただろう」という内容を,反省文ではなく考察文として書くのです.

理由は3つくらい挙げておくことをおすすめします.

そうすれば「それだけの理由でこんなに低い値になるのか?」というツッコミを防ぐことができるかもしれません.

● 考察は実験の予習をするときに始まる

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というようなことを考えると,考察で苦しまないためには,実験にとりかかる前からどのあたりで考察するかを決めておく必要があることに気づきます.

まず実験操作の原理と操作と,それらに関する歴史的経緯,というようなあたりを関連書籍などで調べておくと,注意を要する点や,成功の秘訣といったものが見えてくるものです.

そういった点をアタマの片隅に置いておきながら,実際に手を動かして操作をやってみると,前もって調べておいたものごとの意味がよくわかります.

そこで気づいた点を考察のテーマとして選びましょう.
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考察は実験予習時にはじまるのです.

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更新日

  • 旧ブログで公開: 2010-05-27
  • こっちに引っ越し: 2013-06-01
  • 最新更新: 2018-08-30

●この記事参考情報としている記事

http://kobe-u.libguides.com/content.php?pid=656863

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