Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

看護学科の化学講義(24)ベンゼン環を含む有機化合物

f:id:takahikonojima:20161118141728p:plain*1
さまざまな薬品が分子内にベンゼン環を含んでいます.

キーワード

m-配向性,o-,p-配向性,置換基効果,転位,ニトロ化,配向性

事前配布資料

前回の講義終了時に予習用の資料を配付しました.コレがテキストになってます.

講義内容要約

  • 医薬品,体内,日常生活用品のあちらこちらに組み込まれているベンゼン環
  • ベンゼン分子の構造
  • ベンゼン分子の置換反応
  • 一置換ベンゼンの配向性:先に入った官能基が2個目の入る場所を決める
  • 薬品の合成ルートを決めるときの考え方

関連トピック

人類は複雑な構造をもつ医薬品の合成に取り組んできました.その一例として,抗がん剤「タキソール」を紹介しました.

質問

  • CH2=Cと H2C=Cは同じですか?

同じ.好きに書いてOK.

  • ベンゼン環に直接導入できるものとできないものの違いは何ですか?

直接導入する方法が見つかっているかどうか,です.

コメント

  • o-,m-,p-配向性があることを初めて知りました.
  • o-位,p-位,m-位は知っていましたが,見分け方は知らなかったので,答えやすくなりました.
  • 配向性がo-,p-になるのかm-になるのか決まりがあることを初めて知った.
  • ベンゼンからたくさんの生活に役立つものがつくられていることがわかりました.また,ベンゼンはこんなに身近にあるものなんだなと思いました.昔の人は命がけで薬をつくっていたことに驚きました.今は天然にあるものから,身体に害がなく,薬としての作用があるものを化学を使って合成しているということがわかりました.
  • 肺がんや乳がんの患者さんを助けられる「タキソール」というものが合成するのが難しいと知り,化学は常に進化と発展がつきものだと思った.
  • これからも治療薬がどんどん増えて行くのはすごく良いことだと思いましたが,変な副作用が出たら怖いなと思いました.
  • 高校では割と有機化合物は得意だと思っていましたが,改めてやると複雑で難しく,きちんと分かっていないんだと分かりました.復習して定着させたいです.そして化学合成を人間が考え,編み出したことを知り,昔の人は やはりすごいと思いました.今を生きている私たちより生きる力が備わっていると思います.
  • 高校生のときに入試対策でやっていた構造決定の問題が好きだったので,薬品合成ルートのデザインのところが楽しかったです.学祭がおわって試験も見えてきたので,後期前半にやったことの復習も少しずつはじめようと思います.
  • 身近なものに関連した説明がわかりやすかった.学祭が終わって時間にゆとりができるので,予習を頑張ってみようと思う.
  • ベンゼン環を描きすぎて途中から五角形になっていた.
  • 授業を聞くのはおもしろいですが実際問題をとくと難しいです.復習がんばります!
  • この先もっと医療は発展していくと感じた!!
  • 肺がんなどの治療薬を見つけ出したのはすごいと思った.そして病気を治す薬を開発するためには,技術とお金が必要だと思った.
  • 薬を作るのにとてつもないお金と材料と時間がかかっていることがわかった.

薬の開発がいかに困難な事業なのかは,以下の書籍に具体的なデータとともにわかりやすく記されています.

医薬品クライシス―78兆円市場の激震 (新潮新書)

医薬品クライシス―78兆円市場の激震 (新潮新書)

出席者数推移

次回予告と自宅学習

窒素を含む有機化合物について学びます.配布物で予習して来ること.

www.tnojima.net

参考書籍

マクマリー有機化学(中)

マクマリー有機化学(中)

  • 作者: John McMurry,伊東二,児玉三明,荻野敏夫,深澤義正,通元夫
  • 出版社/メーカー: 東京化学同人
  • 発売日: 2013/02/12
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
↑『15 ベンゼンと芳香族性』,『16 ベンゼンの化学:芳香族求電子置換』,『17 アルコールとフェノール』
有機電子論解説―有機化学の基礎

有機電子論解説―有機化学の基礎

↑『16章 ベンゼンの構造と芳香族性』,『17章 芳香族の反応(I).求電子置換反応』,『18章 芳香族の反応(II).いろいろの反応』
炭素文明論 「元素の王者」が歴史を動かす (新潮選書)

炭素文明論 「元素の王者」が歴史を動かす (新潮選書)

↑『第3章 大航海時代を生んだ香り 芳香族化合物』
新化学読本―化ける、変わるを学ぶ

新化学読本―化ける、変わるを学ぶ

↑『第9章 建築家の夢が扉をあけた芳香族-ベンゼン』,『第10章 柳の樹皮から生まれた解熱剤-アスピリン』
世界史を変えた薬 (講談社現代新書)

世界史を変えた薬 (講談社現代新書)

↑『第6章 消毒薬/ゼンメルワイスとリスターの物語』,『第10章 アスピリン/三つの世紀に君臨した医薬の王者』
スパイス、爆薬、医薬品 - 世界史を変えた17の化学物質

スパイス、爆薬、医薬品 - 世界史を変えた17の化学物質

  • 作者: ジェイ・バーレサン,ペニー・ルクーター,小林力
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2011/11/24
  • メディア: 単行本
  • 購入: 2人 クリック: 128回
  • この商品を含むブログ (13件) を見る
↑『七章 フェノール/医療現場の革命とプラスチックの時代』,『十章 医学の革命/アスピリン、サルファ剤、ペニシリン』

このブログを書いている人

www.tnojima.net

もう一つのブログ

www.takahikonojima.net