Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

小学校で理科実験(2010)

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今週は,地元の公立小学校で6年生を対象にボランティアで理科の授業を行いました.

この小学校には,学校外からいろいろな専門家を招いて授業をしてもらう制度があります.学区に隣接する天文台からは,ときどき広報担当の方が来られて,星座や宇宙の話をしてくださいます.また,学区内にいらっしゃる南極観測隊隊員の方が,日本を出てから南極基地に到着し,観測を終えて帰国するまでの体験を話してくださったこともあります.

私の場合には,化学の研究者ということで,6年生を対象に簡単な化学演示実験をやりながら物質の世界を話しています.「水溶液の性質」という単元が終わった頃に招かれることになっており,

  • pHに依存して色を変える溶液(pH指示薬)に,pHの異なる5種類の水溶液(塩酸,炭酸,食塩水,石灰水,アンモニア水)を加えて色の変化を見せる実験,
  • アンモニア噴水,

の2点を化学マジックとして見せています.

pH指示薬としては,「ムラサキキャベツの絞り汁」を使います*1.ムラサキキャベツがもっているアントシアンという色素は,pHの違いによって色を変えます(中性では紫色).

5本の試験管にムラサキキャベツの絞り汁を入れておいて,ここにアンモニア水(黄緑色に変わる),石灰水(緑色),食塩水(紫色のまま),炭酸水(ピンク),塩酸(赤)の順番に色の変化を見せて行きます.

「次はどうなるかな?」

と問いかけると,

「赤!」,「黄色!」,「白!」

といった色の当てっこがはじまるとともに,

「煙が出る!」

とか

「爆発する!」

といった意見も飛び出します.一色ずつこのやりとりが続きます.

続いて,フェノールフタレインを使って同じ実験をやってみます.今度は,アルカリ性の水溶液が赤くなります.指示薬の種類が変わると変色パターンも変わるのです.

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これに続いて,化学マジックの定番「アンモニア噴水」.300 mLの丸底フラスコにアンモニア水を入れ,栓(ガラス管が2本通っている)をして手で温め,ムラサキキャベツの絞り汁が入ったビーカーにガラス管を差し込み,もう一本のガラス管から呼び水を注入.丸底フラスコの中では勢いよく絞り汁が吹き上がります.このときにムラサキ色の絞り汁は緑色に変わります.

蒸発する,溶解する,減圧される,吸い上げられる,変色する,というステップが連続してこうした実験ができることを説明しました.

実験のあとは質問タイムです.毎回これが楽しみです.今回は色が変わる仕組みとか,アンモニア以外でも噴水ができるかといった質問が出た他*2,宇宙や人体まで幅広い素直な質問が飛び出しました.私にわかる範囲で答えました.

今年で4回目となる小学校理科授業ですが,自分自身の子供時代を思い出し,新たな気持ちで化学に向かい合う気分リセットの機会になっています.

つづき

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*1:これは理科のとりまとめをされている先生に毎回お願いしています.

*2:小学生レベルで答えるのは難しいですね