夜空を眺めるにはもっともよい条件の季節です.
毎年この時期に,近所の小学校では国立天文台のご協力のもと,「夜空を観る会」を開催しています.校庭に望遠鏡を並べて星を眺めたり,天文台天文情報センター普及室の方に宇宙の話をしてもらったり.寒い季節ですが,毎回100名以上の参加者があります(今回は150名以上の申し込みあり).
最初に開催した2年前には,強風で上空の雲が完全に吹き飛ばされた後だったので,天体観測に最高の夜でした.ちょうど土星を望遠鏡でとらえることのできる時期で,土星のリングを望遠鏡ごしに見ることができました.
2回目となった昨年は,残念ながら悪天候になってしまい,望遠鏡は体育館に並べて取り扱い説明会に変更しました.壁に天体の写真を貼って遠くから望遠鏡越しに眺める,というものです.「来年は晴れて欲しい!」と,関係者一同願ったのでした.
そして迎えたのが第3回目となる昨日.今回も空が雲に覆われてしまいましたが,そのスキマから月を見ることができました.
体育館では望遠鏡制作会社勤務のエンジニアと,天文台勤務の方から天体についてのお話をしていただきました.
国立天文台ではPC用天文シミュレーター「Mitaka」を開発しており,今回もこのソフトウェアを使った銀河旅行を体験させていただきました.以下のリンクから無償ダウンロードできます.
寒い季節のイベントなので,「おやじの会」で「ぜんざい」をつくって参加者に提供しています.2月14日の記事で紹介した餅つきは,このためのものだったのです.
さて,日常生活とかけはなれたスケールのものごとを表す際に,「天文学的」という言葉を使うことがあります.天文の話をきいていると「天文学的数値」の連続にノックアウトされます.「この星とこの星は『近い』んですよ,たったの 400光年しかはなれていないのだから」というような感じ.
400光年をメートルであらわすと,3.8 × 1018 m くらいになります.一方,分子スケールでものごとを考える化学の世界では,炭素-炭素の結合1個ぶん離れただけでも「遠い」と表現することがあります.
炭素-炭素の結合距離は0.14 nm程度なので,400光年とのスケールの違いは
3.8 × 1018 m/0.14 × 10-9 m = 2.7 × 1028
1028 倍のスケール違いを前に,もう,何も言葉が出ません.
星空を眺めていると,「近い」,「遠い」という言葉のもつ意味がさまざまだと感じられます.来年こそ晴天の夜空に望遠鏡を向けたいものです.