2018年12月10日(月),「今さら聞けない! 実験ノートの取り方と重要なポイント」と題してセミナーをおこないました.情報機構 が主催する一般向けのものです.
会場は東京都大田区の 大田区産業プラザPiO でした.
演題は講演依頼があったときに主催者から提示された仮題をそのまま使っております.
セミナーの元になっている情報
今回のセミナーは主に以下の3点を組み合わせたものとしました.
- 野島 高彦,『誰も教えてくれなかった実験ノートの書き方』,化学同人,2017年7月
- 野島 高彦,『コンピュータは科学者から何を奪ったか』,化学,2016年11月号,p26-29,化学同人
- 野島 高彦,『実験ノートには何を記録するのか』
上記3点は学生や理系大学教員を対象に書いたものなので,民間企業の技術者や研究者を対象とした構成にアレンジしました.上記3点には記載していない内容も盛り込んだ構成としました.
また,公的機関から公開されている以下の2点も参考資料としました.
- 科学技術振興機構,『研究者のみなさまへ 〜責任ある研究活動を目指して〜』,2017年10月
- 日本医療研究開発機構,『事例から学ぶ公正な研究活動 ~気づき、学びのためのケースブック ~ 普及版』,2017年3月
セミナーの構成
セミナーは12時30分開始で,途中で2回の休憩時間をはさんだ,90分+60分+60分の構成となっていました.ほぼこの時間に合わせて進めました.途中の質問も受け付けました.
(1) どんな実験ノートが よい実験ノートなのか?
(2) 実験ノートは何のために書くのか
(3) 実験ノートのおやくそ
(4) 実験を始める前に書いておくこと
休憩
(5) 実験を進めながら書くこと
休憩
(6) 実験が終わってから書けること
(7) 紙のノートにWebのしくみをとりいれる
(8) 実験ノートを書くことであなたは成長する
「こうしろ!」ではなくて「こういうのはいかがでしょう?」
今回のセミナーでは「こうやらなければならない!」ではなく,「こういうのはいかがでしょう?」を基本的な考え方にしました.
そのため,実験ノート関連のネタもイロイロと紹介しました.
以下,当日のスライドの中からいくつかを紹介します.
今回は「記憶より記録」と「頭脳の拡張」を実現するためにノートを使う,という考えでセミナーを進めました.
人間の記憶はいいかげんなものなので,記録を残すことが重要です.
また,人間の頭脳は「考えるため」のものなので,「覚えておく」ことに使うのも無駄です.
今回は「実験結果記録帳」ではなく,「研究日誌」としてのノートの使い方を考えました.アレもコレも記入していく方法です.
アレもコレも記入するとなると,記入するタイミングも実験中だけに限定されなくなります.
ココで最後の「感想」という部分に違和感を抱く人もいるかもしれません.実験研究においては「考える」ことが重要であって,「感じる」とか「思う」とかはどうでも良いことだからです.しかし,実験ノートに感想を残しておくことにはメリットもあります.それは,記録しなかった「記憶」を引きずり出すために使える可能性があるからです.
同様に,実験をおこなった日の天気とか気温とか気圧とかも,実験結果に影響しない場合でも,記憶を引きずり出すために使える可能性があります.
そういうわけで,実験に無関係なものごとでも,思いついたことや気付いたことや実験中のできごとなどを記録しておくと,あとで意外な場面で役に立つことがあります.
「記憶より記憶」を徹底するためには,すべての情報が1箇所に集まっていると便利です.そのため,細々とした紙資料はノートに貼り付けておくのがオススメです.別に保管していると紛失します.
ただし,電子データがPCやクラウドに保存されているとか,大判データがバインダーに綴じ込んであるなど,実験ノートとは物理的に別の場所に記録が存在する場合もあります.そいういうときには,具体的にどこにあるのかをノートに書いておきます.とりあえずノートを開けばどこにあるのかがわかるしくみにします.
「次」とか「この前」のようなあいまいな記録を残すと,後で間違いを犯すことがあります.判断に迷わない具体的な記録を徹底することが必要です.
今回の主なポイント10点
セミナーを終えて
私がこれまでおこなってきた招待講演はすべて教育機関・研究期間からのものだったので,聴衆の主な層が民間の技術者というセミナーは今回が初めてでした.セミナー後の質疑応答ではさまざまな「悩ましい問題」についての相談もあり,いくつかの提案をさせていただきました.お役に立てれば何よりです.普段 接点のないお仕事をされている方との交流はとても勉強になります.
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