11月2日(金),東京都北区の順天中学校・高等学校で出張講義をおこないました.
順天高等学校は,文部科学省の スーパーグローバルハイスクール (SGH) 指定校です.
その活動の一環として,今年は10月末日から11月上旬の間の5日間,「Global Week 2018」イベントが開催されました.
この5日間は,さまざまな分野のさまざまな人々がトピックをもって集まり,生徒も教職員も学び会う,というものです.
トピックの数は75件です.生徒・教職員は,これらの中から複数のトピックを選んで学ぶ,という仕組みになっていました.
私は「伝わるプレゼンテーション:スライドショー準備のポイント」という講義をおこないました.
どうしてコレを担当することになったのかというのは置いといて,この内容は2012年度から毎年,キャンナビのメンバーを対象におこなっている「伝わるプレゼンテーション研修」が元になっています.
それを高校生向けにアレンジしました.
以下,当日のスライドの中から主なものを紹介しつつ,ところどころに説明を追加していきます.
スライド制作は最後の作業
重要なことから先に説明する
分割して伝える
一度に複数枚の写真を投影して説明していく,というやり方をすると,聴衆は説明を聞かずに次から次へと写真を見比べ始めます.
だから,1枚ずつ見せて説明していく,というやり方をするのがオススメです.
文章を投影しない
こういう文章を投影すると,聴衆は文字を読んでしまって話を聞きません.
図をどこかからみつけてきてそのまま全体を投影すると,聴衆はアレは何だコレは何だと注意が分散してしまい話をききません.
というわけで,情報を「減らす」ことを考えます.必要に応じて「足す」ことも考えます.
まず,凡例一覧を消し,図中の番号も消します.これで「アレはどこだ,ココは何番だ」ができなくなります.
目標地点の「A3」を追加しておくとわかりやすいでしょう.
「色」も不必要な要素です.白黒で済むのであれば白黒とすることによって,重要箇所に聴衆の視線を集めます.
次は「足す」ことを考えます.道順を赤線で追加しておくとわかりやすくなります.
目的地の目印となる何かがあれば,その情報を付け足しておくと親切でしょう.
「中庭」と言われてもどんな中庭なのかわかりません.中庭の写真があれば親切です.
この写真があれば,「中庭」の文字は必要ありません.
こうして,「A3」の2文字を残して全ての文字を消して整理した説明図にすることができました.
写真1枚で済ませることを考える
自分に見えればみんなにも見える,わけではない
こういう色の組み合わせだと,「読みにくい」だけなく,「よく見えない」人もいます.全人類の色覚が同じではないからです.
世界的にみて,男性の1割強が一般的な色覚とは異なる色覚をもっています.AB型血液型の存在比を上回る割合です.
自分に見えればみんなにも見える,というわけではないのです.
白地に黒文字なら色覚を考える必要はありません.
色覚の異なるさまざまな人々にどのように見えるのかをシミュレーションしてくれる無料のソフトウェアが公開されています.
「色のシミュレータ」 というスマートフォン用のアプリです.
iOS用とAndroidOS用とが提供されています.
このソフトウェアも紹介しました.
レーザーポインターを振りまわさない
たとえば図があって,その脇に凡例が書いてあって,凡例と図とを何往復もする,なんていうことをやると,
こういう視線移動を強制することになります.
コレ,暴力的.
まず,説明に関係無い余計な情報は消しておいて,
アニメーション機能を使って1つづつ情報を見せていく,というやり方を考えます.
そうすると視線移動はこんな感じになります.
レーザーポインターは一切使わないことを前提とし,必要な箇所はアニメーション機能で作っておきます.
今回の講義でも,「レーザーポインターを使った場合」の説明でわざとレーザーポインターを使った以外は,すべてアニメーション機能を使いました.
質疑応答
講演終了後,熱心な高校生たち,および先生がたとの質疑応答が続きました.いくつか紹介します.
スライドショーを組み立てるときのアイデアを得るために,どのようなものが参考になりますか?
映画の予告編,TVコマーシャル,電車の中吊り広告などが参考になります.限られた時間,限られたスペースで,見る人の関心をひきつけ,印象に残る構成になっているからです.
たとえば映画の予告編の場合,数時間の動画の中から適切な場面を選んで抜き出して順番を入れ替えたものになっています.「むかしむかしあるところに〜」から始めたら,誰も関心をもってくれません.
スライドショーの途中で寝てしまう人が出てしまいます.どうしたらよいでしょうか?
何かやらせることです.たとえば簡単な質問を出して,その答えを紙に書かせるとか,何かをイメージさせて,それをイラストで描かせるとか.黙って何分間も眠らずに話を聞くってタイヘンなんです.ときどきみんなで席を立たせるとか,両手を挙げさせるとか,そういうのでも効果はあります.
スライドショーのプレゼンテーションを自習するために参考になる書籍があったら紹介してください.
「プレゼンテーションzen」と,この著者による書籍はとても参考になります.逆に,「パワーポイントの使い方」系の解説書は,この目的には役に立ちません.
↑まず,この本をオススメします.↑続いてコレを読むとヒントがたくさんみつかります.↑動画DVD付き.プレゼンテーションのお手本になっています.健闘を祈る☆
ちょうどこの数日後に,順天高等学校では課題研究の発表会が予定されていたらしく,どのようにプレゼンテーションを組み立てれば良いだろうか,ということへの生徒の関心が高まっていた模様です.
今回の講演と質疑応答が,今後の人生に何かのかたちで役に立つことを願っています☆
順天高校サイト内の記録
当日の模様は,順天高校の先生が撮影され,ホームページで公開となっています.
グローバルウィーク・ダイジェスト2018-3日目(11/2実施分)/SGH/お知らせ/順天中学校・高等学校
こういう学外活動にも取り組んでいます
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