[グループワーク]ベストレポート選定
先週行った簡単なグループ実験についての実験レポートをグループ内で相互評価し,もっともよく書けているものを選定してもらいました.
[講評]実験レポート発表と講評
グループごとに選定したレポート1点を発表してもらい,それに私がコメントして行きました.7班で同じ実験を行ったのですが,その内容をまとめたレポートは同じにはなりません.まとめかた,説明のしかた,見せかた,といった点に自由度があるからです.
[解説]論理的に考える」
文章を書くときに犯しがちな論理展開上の誤りを紹介しました.
フグの肝臓にはテトロドトキシンが含まれている.これは運動麻酔を引き起こし,重症の場合には呼吸麻痺により死亡する.しかし,フグにはテトロドトキシン以外の毒は見いだされていない.だから,肝臓を取り除いて食べれば,フグも安全である.
野矢 茂樹,『入門!論理学』p25より引用.
- 作者: 野矢茂樹
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「食べられる!」と自信をもって答えたヒトは要注意.
ここでは「肝臓にはテトロドトキシンが含まれている」とは書かれていますが,「テトロドトキシンが含まれているのは肝臓だけだ」とは書かれていません.実際,他の臓器にもテトロドトキシンが含まれています.そういうわけで,肝臓を取り除いただけではダメなのです.
このように,ちょっと油断していると誤った結論を下してしまうことがレポート作成時にも,それ以外の文章作成時にも珍しくありません.また,こうしたパターンを利用した悪徳商売も世の中に溢れています.「論理的に考える」習慣は,大学生活を通じて身につけたい能力の一つです.
[解説]悪魔の証明
「○○が存在しないことは証明されていないので,○○が存在すると考えてよい」というような結論を下してしまうことがあります.これは「悪魔の証明」と呼ばれる論理構成です.医療や食品の安全性に文句をつけてくる困ったヒトの多くがこのパターンを使っています.
この世界に悪魔が存在しないことを証明してみろ.証明できないだろう?証明できないということは,悪魔が存在するってことだ.悪魔は存在するんだ.
このような乱暴な論理展開をしてはいけません.「ある・できる」 vs 「ない・できない」の論争になった場合には,「ある・できる」側に証明義務を負わせるのが近代的な物事の考え方です.
残念なことにこうした基本的なことを理解していない困ったヒトが世の中に溢れています.そういうヒトたちの相手をしてはいけません.時間の無駄です.
- 作者: 野崎昭弘
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次回予告
「(10)伝わる文章の組み立て方」を考えます.文章を「作る」のではなくて,「組み立てる」ことによって,伝わるメッセージにするための技術です.