私が子供の頃,私のことをかわいがってくれた叔父*2は,1964年に東京オリンピックが開催された時の聖火リレーを見たそうです.
叔父は五十代後半にクモ膜下出血になって東京郊外のリハビリ施設に入院しており,私はときどき見舞いに行っていました.別の叔父から,「何か刺激になるような会話をしてやってくれ.そういうのがリハビリに効くらしい.」と言われ,毎回ネタを考えて見舞いに行っていました.
あるとき,だいぶ前に叔父が「ビートルズの曲の中では『今日の誓い(Things We Said Today)』が好きだ」と言っていたことを思いだしたので,この曲のことを話してみました.歌詞とかコード展開とか.
この日の叔父は調子が悪く,ほとんど言葉を返してくれていなかったのですが,私が「この曲が入っているアルバムは1964年リリースだから,日本ではオリンピックで賑わっていた頃のアルバムだ」と言ったところ,「オリンピックの,聖火を,みた・・・」と言葉を返してくれました.
叔父はその頃,大分県別府市で高校生をやっていたはずで,東京でオリンピック開会式を観戦するのは無理です.「TVで?」とたずねたところ,「別府に,来た・・・・」という答えが返ってきました.ぽつぽつと叔父が返してくる言葉から推測す ると,ヨーロッパから聖火リレーがやってきて,日本に上陸し,大分県を通過して,東京に向かった,ということになります.
あとで調べてみると,確かに1964年の聖火は大分県を通過しているのです.
叔父とこの話をしたのは2004年だったはずなので,叔父にとっては40年前の記憶ということになります.
2020年
7年後の東京オリンピックで聖火リレーを目撃する機会があれば,それは何十年も残る記憶になり,思い出す昔のできごと,になるかもしれません.聖火リレーのコース発表が楽しみです.今回も大分県を通るのでしょうか?*3 残念ながら叔父は4年前に亡くなりました.「また聖火を見られるかもよ!」っていう一言を言いに行くことができないのが残念です.