Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

(11)考えをまとめる文章の組み立て方(1)

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配布物

2回目の席替え

全15回の授業を5回ごとに区切って履修者21名の組み合わせをシャッフルしています.

どちらかを選ばなければならない場面

数学や化学の試験では,与えられた問いに対して誰が取り組んでも,正しい考え方をしていれば同じ答えにたどり着きます.しかし世の中にはそういう問いばかりが存在しているわけではなく,「正解を自分で決めなければならない問い」というものも存在します.ここをどうするのかが今回のテーマです.

(1)オリンピックを東京で開催する/開催しない

もしもあなたに「東京でオリンピックを開催するかしないか」を決定する権限が与えられたとしたら,あなたはどうしますか?

ここには「開催する」と「開催しない」の2通りしか答えはありません.そして数学や化学の試験問題を解くのと違って,答えは自分で決めなければなりません.

どうするか.

ここをグループワークで話しあい,その根拠を挙げてもらいました.

各グループから結論と根拠を出してもらい,それを全員で聞いて自分(たち)の考えと照らし合わせてみました.

開催「する」と結論を下したのが1グループだったのに対して,開催「しない」と結論を下したのは4グループでした.

正反対の結論を下した両者でしたが,その根拠を聞いてみると,共通する点もありました.その一方で「しない」と結論を下したグループどうしでも理由が正反対だったりしました.

「目指しているものは同じ.でも手段が違う」という場面は,じつは珍しくありません.手段の違いから意見が対立した場合には,「相手の目指しているものは何なのか?」を考えてみることによって,双方が納得できる答えにたどり付けることがあります.

今回の演習ではこのことを少し感じてもらえたようです.

他人の意見をサーチしてみる

インターネットで第三者の意見を探してみましょう.今回は新聞社の社説を読んでみることにします.6月に朝日新聞,読売新聞,日本経済新聞がそれぞれ社説で東京へのオリンピック招致について述べています.

朝日新聞
「東京五輪 都民は望んでいるか」(2011-06-18)
読売新聞
「東京五輪招致 復興の証しに聖火を灯したい」(2011-06-19)
日本経済新聞
「東京五輪を実現するためには 」(2011-06-21)

それぞれの社説を要約して紹介しました.

あわせて,文章の組み立て方によって読み手の考えを誘導するパターンを解説しました.

(2)サマータイムを実施する/実施しない

もしもあなたに「サマータイムを実施するかしないか」を決定する権限が与えられたとしたら,あなたはどうしますか?

今回も,「実施する」と「実施しない」の2通りしか答えはありません.この問題についてもグループごとに意見をまとめてもらいました.

ただし,今回は「まず結論を出す.続いて時間をかけて調査し,もう一度結論をみなおす」というプロセスを体験してもらうことにしました.今回グループごとに結論を出したわけですが,その結論の妥当性や,反対意見をwebなり書籍なりから調べてみて,来週のグループワークで改めて結論を出してもらう試みです.結論が変わるグループもあるかもしれないし,結論を変えないグループもあるでしょう.どうなるか楽しみです.

次回予告

「サマータイムを実施する/実施しない」のグループワーク.続いて「悪文」を添削して行くグループワーク.さらに「実験レポートではないレポート」の課題に取り組み始めてもらいます.

これまでの授業記録