Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

計算問題の解き方

12月に配布した「期末試験模擬問題」のうち,解答を省略した以下の問題に関して,計算方法の問い合わせがありました.問い合わせはTwitter経由で来たため,タイムライン上で1段ずつ解法を説明しました.他にTwitterのDM経由でも,この問題の解き方について質問を受けたので,同じく一段階ずつ説明しました.

問題文は次のとおりです.

[1] プロパンの完全燃焼に関する以下の問いに答えよ.

(iv) この燃焼に伴って生じる熱エネルギーを用いて 1013 hPa において沸騰させることのできる 15.0 °Cの水の体積を求めよ.水の比熱を 4.18 J K-1 g-1, 水の蒸発熱を 40.8 KJ mol-1,1013 hPa における水の沸点は 100 °C,液体 の水の密度は 1.00 g mL-1,1 mol のプロパンが完全燃焼する際に発生する 反応熱を 2 220 kJ として計算せよ.

考え方は以下のとおりです.有効数字3桁で答えることを問題全体で指定してあります.

まず,1 gの水を15 ℃から100 ℃まで加熱するために必要な熱エネルギーを求める.

温度変化量は85 Kなので以下のようになる.

(1 g)(4.18 J g-1 K-1)(85 K)=355.3 J=0.3553 KJ ----- (1)

この水を100 ℃において蒸発させるために必要な熱エネルギーを求める.

そのためには与えられた蒸発熱の単位換算をしておかなければならない.

H2Oは1 mol=18.0 gなので次のようになる.

40.8 KJ mol-1 = (40.8 KJ)/(18.0 g)=(40.8/18.0) KJ g-1=2.267 KJ g-1

この定数を用いて,1 gの水を100 ℃において蒸発させるために必要な熱エネルギーを求める.

(2.267 KJ g-1)(1 g)=2.267 KJ ----- (2)

(1)と(2)を足す.

0.3553 KJ+2.267 KJ=2.622 KJ ----- (3)

つまり,2.622 KJの熱エネルギーがあれば,1 g=1 mLの水を15 ℃から加熱して行って蒸発させることができる.

次に500 gのプロパン(C3H8=44.0)を燃焼させたときに生じる熱エネルギーを求める.

500 gのプロパンが何モルなのかがわからないと計算できないので計算する.

(500 g)/(44.0 g mol-1)=11.36 mol

1 molのプロパンが完全燃焼すると2 220 KJの熱が生じるので,11.36 molのプロパンが完全燃焼するときに生じる熱エネルギーは以下の通りである.

(11.36)(2 220 KJ)=25 227 KJ ----- (4)

(3)と(4)の比を求める.

25 227 KJ/2.622 KJ=9 621

9 621倍なので,9621 g=9621 mL=9.62 Lの水を蒸発させることができる.

四則計算ができれば答えが求められる問題なのですが,蒸発熱の単位換算を見逃すと答えにたどり着きません.

数値だけ計算して最後に単位を付ける,という悪しき習慣をいまだに続けている人は正しい答えにたどり着かないことでしょう.

この解法は火曜日に掲示を依頼します.

おまけ

Twitterは計算問題の指導をするのに便利なシステムだと感じました.どこで引っかかっているのかがはっきりするし,指導の過程をオープンにできるので,同じ問題に取り組んでいるフォロワーにも情報が届くからです.Twitter上で計算問題の演習を進める,なんていうこともできそうです.

追記(2011-01-11)

上記内容を掲示依頼しました.

リンク

www.tnojima.net