医療工学科の化学講義(12)気体の法則+化学反応

前回の講義に対する質問コメント感想その他いろいろの紹介

前回の講義録参照

• (11)状態変化(2011-06-29)

前期試験模擬問題の配付

• 2011年度前期試験模擬問題

試験は関数電卓持ち込み可．合格点に達しなかった者に対する救済処置は一切無し．前期も後期も再試験ナシ．前期と後期をあわせて2回のテストで120点とれれば合格．合計120点とれなければ再履修．

前回の「状態変化の確認問題」の解説

配付資料参照

• 前回(2011-06-29)の「状態変化の確認問題」の解答

気体の状態方程式

「ボイルの法則PV一定」と「シャルルの法則V/T 一定」をあわせて「ボイル-シャルルの法則 PV/T 一定」が得られます．これを物質量nの場合に拡張して一般化すると，気体の状態方程式が得られます．

PV=nRT

ここでRは気体定数と呼ばれる定数です．SI単位を用いて表すとR=8.31 J mol^-1 K^-1ですが，こういう物理定数を暗記していても役に立ちません．「とりあえず暗記」というやりかたを続けていると，これから先に数百種類の物理定数を暗記しなければならなくなります．定義に基づき，必要に応じて導き出せる状態にしておくことが重要です．

その一例としてRを導いてみました．

PV=nRTを変形するとR=PV/nTとなるので，ここからスタート．1 molの気体は1013 hPa，273 Kにおいて22.4 Lの体積を占めるので，以下のようになります．

R=(1013×10²)(22.4×10^-3 m³)/(1 mol)(273 K)=8.31 Pa m3 mol^-1 K^-1

ここで，1 Pa m³=1 N m^-2 m³=1 N m=1 Jなので，Rの単位を次のように整理できます．

R=8.31 J mol^-1 K^-1

気体定数が与えられてない場合には，このようにして求めることができます．

非SI単位で表された物理定数をSI単位に変換する

定義に基づいて物理定数を求めるやりかたに加えて，単位換算を用いて異なる単位系に物理定数を持ち込むやりかたを身につけておく必要があります．その例として気体定数を採り上げました．

気圧にatmを，体積にLを用いて気体定数を表すと

R=0.0821 L atm K^-1 mol^-1

となります．この定数をSI単位系に持ち込みましょう．

R=(0.0821)(1 L)(1 atm)/(1 K)(1 mol)

=(0.0821)(10^-3 m³)(1013×10² Pa)/(1 K)(1 mol)

=8.32 Pa m³ mol^-1 K^-1

=8.32 J mol^-1 K^-1

とすればOK.

これでこれから先，むやみやたらと暗記しなくて済みます．

●気体定数を求めるのがとてもかんたんでびっくりした．ああいうふうに覚えるとわすれなさそう

分圧の法則

混合気体を構成する気体分子それぞれの示す圧力の比は，それらの物質量の比に等しい，という法則です．

ヘンリーの法則

溶媒と化学反応せず，溶解度が低い気体分子を溶媒に溶解させるとき，気体の圧力と溶解度とが比例する，という法則です．

炭酸飲料水の製造工場では大気圧以上の圧力の二酸化炭素ガスをカンなりビンなりに与えて溶解させ，栓をして出荷します．栓を開けると気圧が大気圧まで下がるので，溶解度が低くなり，炭酸ガスは抜けてしまいます．

●コーラは2 atmでCO₂を封入してるらしいです．

そいつは知らなかった．3気圧から4気圧ときいたことがあるのだが．炭酸を弱めるようになったのかな．

反応速度論

反応が進むためには，エネルギー的に乗り越えなければならない「山」があります．それが活性化エネルギーE_actです．反応物が生成物に変換される瞬間の状態を活性錯体もしくは遷移状態と呼びます．反応物のポテンシャルエネルギーと，生成物のポテンシャルエネルギーとの差がΔHです．ΔHが負のとき発熱反応，正のとき吸熱反応になります．

つづきは来週．

絶望の単位換算つきエネルギー計算問題

最後の10分で次の問題を解いてもらいました．

エタノールC₂H₅OHの燃焼熱を用いて水を加熱することにした．360 mLの水の温度を25 ℃から95 ℃まで温度上昇させるためには，何mLのエタノールを燃焼させる必要があるか．水の密度は1.00 g cm^-3，水のモル質量は18.0 g mol^-1，水のモル比熱は75.3 J mol^-1 K^-1，エタノールの密度は0.789 g cm^-3，エタノールのモル質量は46.0 g mol^-1，エタノールの燃焼熱は-ΔH = 1368 kJ mol^-1とする(1 molが完全燃焼すると1 368 kJの熱が生じる)．

毎週こういうイヤな問題をやって慣れるべし!

答えはこっち→絶望の単位換算付きエネルギー計算・解答

●単位換算は嫌いです泣●私は単位換算がすっごくめちゃくちゃ苦手です．今からでも間に合いますか・・・．プリントやれば大丈夫ですか・・・あーーーーー●今回はなんとか解けたと思います．●前回よりもスムーズにできた気がする●まだ大丈夫．そろそろやばいかも・・・●エタノールが全然燃えなかった●燃焼熱ってどこで使うかわかりません．ざせつ．●分けられた問題を解いてきちんと理解したい．●今日中にやり直します．●あ"〜むりだぁ〜orz●試合終了しました(泣)●絶望にならないようにします．●10分じゃむり●まだまだ甘いわ!!●頭がはたらきませんでした●難しいです●難しい●絶望した●混乱・・・がんばる・・・．●テスト勉強がんまります●テスト勉強しなきゃー●テスト120点とるぞー!●テストがんばりまーす．●ギブアップ．テスト勉強がんばります

その他

●ムリです．平衡嫌いです．最近キツイです●化学平衡が好きです!!今の高校生は学校の授業でsp軌道などを習うそうです．勉強，絶対頑張る!!

生命・医療を学ぶなら平衡系を理解しなさい．次の世代が追い上げてくるよ．

●私のラスボスは○○学です．

はい，○○学ですね．化学が進級にあたってのラスボスだとか言ってる人は問題点の設定が間違っています．

●久しぶりに先生のスライドショー見れました!笑 来週はこのコメントみれるかな?

来年は2年生の教室にいるかな?

●先生はジーパンが好きなんですか?

はい．実用性第一．

●自分はいつもg/molといった風に書いているのですが，先生のようにg mol-1といった風に書いた方がいいのでしょうか．

どっちでもOK.ただし分母に2個以上の単位が来るときは注意．1 J/(K mol)はOK.1 J/K molはだめ．1 J/K/molもダメ．スラッシュは1回だけという国際規格あり．

●野菜をゆでたりする時に塩を入れますが，それは沸点の問題なのでしょうか?

沸点ではなくて浸透圧の問題です．浸透圧は後期にやります．

次回予告

平衡反応を理解してから放射化学へ．

リンク

www.tnojima.net
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生命科学のための基礎化学―無機物理化学編