有機化学の2回目.電子の動きに注目することによって,有機化合物の反応に対する理解を深めて行きました.
前回の講義に関する感想コメント質問その他なんでも紹介
くわしくは前回の講義録を参照↓
配布物
「有機化学基本反応」と「高分子化合物の合成:付加重合の場合」を配布しました.以下のダウンロードページで公開しています.
有機反応パターンその2:脱離反応
先週はC=Cに対する付加反応の仕組みを紹介しました.これが「有機反応パターンその1:付加反応」です.
今回はこれとは反対に,分子から原子が引き抜かれ,C=Cができる反応を考えました.OH-が引き抜くH原子はどれなのか? それぞれのH原子が置かれた化学的環境の違いに注目して考えます.同じ分子のなかの同じ種類の原子であっても,化学的には異なった性質を持つことを,脱離反応が教えてくれます.
●脱離反応よくわかりませんでした.
今回の例だと,H原子が電子を置いて分子から抜けて行く,分子の方にはHが置いて行った電子が残っているので負の電荷が残る,負の電荷を処理するためにOH-が抜けていく,結合の本数は二重結合の生成で処理される,といった感じです.
●脱離反応の「電子がひっぱられる」という意味がよくわかりませんでした.
電気陰性度の高い原子が,その原子の隣の原子とか,さらにその隣の原子から電子を引きつけようとする行為のことです.
有機反応パターンその3:置換反応
分子内の原子が別の原子に置き換わる反応です.メタンがモノクロロメタンになる反応の仕組みを考えました.ここではラジカル反応と呼ばれる反応が起きます.ラジカル反応はこの場合,光照射によって開始されます.
●病院で点滴に茶色の袋がかぶせてあるのを見たことがあったのですが,置換反応についての話をきいて,その袋も遮光するためにかぶせてあったのかなと思いました.
●光が当たることで不安定になってしまうんですね!
この反応はメタンCH4→塩化メチレンCH2Cl2→クロロホルムCHCl3→四塩化炭素CCl4,という順に進んで行きます.
●CH4 + ・・・ こういうのすごい苦手です.
付加重合
身の回りには様々なポリマーが存在します.それらポリマーを合成する際に用いられる手法のひとつが付加重合です.高校の教科書では単に「付加重合」とだけ記されているポリマー合成法は,どのようなしくみになっているのでしょうか.
「付加重合」には「ラジカル重合」,「カチオン重合」,「アニオン重合」,「配位重合」,の4パターンが存在します.それぞれ合成するポリマーの種類や,求める化学的・物理的性質に合わせて選ばれます.
ポリマー合成の詳細はテキストには載っていませんが,電子の動きで有機化学反応を追いかける題材として非常にわかりやすい例なので,ここで4パターンを比較してみました.
●Polymerの4種類の反応のしくみよく分かりました.高校では名前だけだったので仕組みが分かるとおもしろいです.
●大きな発明はよく失敗から発見されますが,どんなにすごい発明でも,身近な物のちょっとした工夫からなりたっているということがすごいと思いました.
●結合,とくに重合反応なんて,一瞬で終わっていました.しくみを見てみると,種類があったことにまず驚きですし,過程を知ることで納得しながら学ぶことができました.結果の形は-Xの所を除けば一緒ですが,それぞれの特徴を生かした方法がとられていることがよくわかりました.
●重合の種類がたくさんあって私はただ連鎖していっているだけだと考えていたので,仕組みの複雑さにびっくりしました.配位重合が難しいなぁと感じました.
●付加重合反応 高校の時やりました! 覚えるのがすごく大変だった気がします・・・.
●付加重合といえば今まで同じものが繰り返しくついているてゆうイメージしかなかったけど,今日をきっかけに様々なイオンが関係したりして複雑だったんだと思いなおしました.面白かったです.
●高校で何気なく暗記していた付加重合にも色々種類があることがわかりました.いっぱい書いたけどその分理解が深まったので良かったです.
●コンタクトレンズがプラだなんて知らなかったです.
●4種類の重合のところ,分かりやすかったです.
●ポリマーのおかげで私たちの生活が便利な訳だということがわかりました.コンタクトレンズまでそうだとは思いませんでした!! ケミストリーすごい! でもケミストリーの発展のためには資源を大切にしなきゃですね.石油使わないでポリマー作れますか?
無理です.石油を大事に使いましょう.
●A-(これに下線がついた記述)←これはどういう意味ですか?
その部分を強調しただけです.
●Xにはいろいろなものがくるということですか?
そうです.HとかCH3とかClとかベンゼン環とか.
●HとXが交互なのは意味がありますか?
電子の偏りおよび立体構造の都合により,交互になるのです.
●ラジカル重合,カチオン重合,アニオン重合,配位重合の反応の過程は覚えたほうがいいですか?
丸暗記しても役にたつことはありませんが,いちど理解していれば世界が広がります.
異性体
同じ種類の元素が同じ数だけ用いられている,異なる分子どうしを異性体と呼びます.マレイン酸とフマル酸はその一例でシス-トランス異性体の関係にあります.また,アミノ酸にはD-体とL-体の異性体があり,天然蛋白質を構成するのはすべてL-アミノ酸です(グリシンをのぞく).L-グルタミン酸には「うまみ」がありますが,D-グルタミン酸は無味です.化学的・物理的に同じ性質をもつ異性体を,生体は判別できることもあるのです.
●異性体のところで,cisとtransはよく見るけれど,どういう状態かわかっていませんでした.今日わかってよかったです.
●「トラにフマれてマレにシス」受験で覚えました!! なつかしいです!!
●フタル酸とフマル酸をよく間違えたなーと思い出しました.
●パーツは同じなのに全然違うものができちゃうなんて面白いですね!!
●不斉炭素は3つのCのことですか?
異なる4種類の原子もしくは原子のグループが結合した炭素のことです.
●鏡像異性体でH2NはNH2になるのにCOOHはCOOHのままなのですか?
H2NはNH2と同じものです.鏡に映しても変わりません.
その他
●私は有機化学大好きなので本当に楽しいです.
●芳香族の方が好きなので,そっちに行くのが楽しみです.今日の有機は楽しかったです.
●やっぱり化学はおくが深い!
●有機は高校で一生懸命覚えて頑張ったので,ちょっと好きでしたが,もうかなり忘れていることに気づきました.でも先生が何を言っているのかはわかるので,意外に楽しいです.
●高校で理屈なくただ覚えてるだけかと思っていたけど,今日の授業で高校の化学の先生もある程度理屈を教えてくれていたんだとわかりました.その知識にさらに大学の知識も加えていきたいです.
●前々から思っていたのですが,水素とか炭素とか結合とかは目には見えないものをいろいろ目に見えるように記号にしているのだと思うのですが,目に見えないので全然ピンとこないんです.実際は水素とかイロイロのものってどんな形なんだろう?
●化学式・構造いっぱいありましたね.しっかり過程から理解できるように復習していきたいと思います.結合する種類多いですね.
●高校のとき一生懸命覚えたことが少しフラッシュバックしました.
●結合がかかわるとむずかしかった.
●分からないところがあったり,深く理解できなかったところはあったけど,前回よりはなんとなく理解できた気がします.
●後期は難しいですねー有機化学わかんないです
●ちょっとボーっとしてたら分かんなくなった!
●わからなくてつまらないです.レゴやりましたよー!!
●ベンゼンがうまく書けないです・・・.有機はやっぱり苦手です・・.
●教室がぽかぽかしていました.
●先生と同じく風邪をひきました.この頃寒くなっちゃったからだと思うんですけど・・・
●カゼひきました.
●最近,日々の生活が堕落しすぎています.
●黒板写すのが大変でしたが,書いているうちに覚えたような気がします.
●図を書くのめっちゃたいへんでした.
●今日は書くことが多くて手が痛くなりました.
●書くこといっぱいで手が疲れました.だけど,すっごくわかりやすくて,理解しながら付いて行くことができました.
●覚えることがたくさんありそうでがんばらなきゃと思いました.がんばります.
●今日は書くことがたくさんあって有機化学って大変だなーと改めて思いました.
●チョコ依存が最近ハンパないです.
●最近,睡魔に負けなくなりました.カフェインを接種してからホットだと1 h後くらいに効きはじめるんですって.だから12:00くらいにコーヒーを買って飲んでおくと,ちょうど午後は起きていられるんですよー!
●この間,ごく少量のにんじんをチンしていたらこげました! 電子レンジでこげるのですね!!こげ臭くて怖かったです(泣)
●ホワイトボード,ついに使うときが来て嬉しいです!
質問
●今日はさむかったですね.最近さむくてつい今年初のカイロを使ってしまいました.このカイロって,どうやって使えば長時間使うことができますか?
●カーナビってすごいですね!! どうして間違った方向に進んでいるってわかるんですか? あと30 mで左折とかも,どうしてわかっちゃうんですか?
●先生は海外に行ったことありますかー?
次回予告
以下の項目を解説しながら,電子の動きで有機化学の世界を見ていきます.
- 電気を通すプラスチック
- 芳香環のしくみ
- 芳香族化合物の配向性はどのように決まるか
- 有機合成ルート選定のロジック
リンク
www.tnojima.netwww.tnojima.net
- 作者: MollyM. Bloomfield,伊藤俊洋,岡本義久,清野肇,伊藤佑子,北山憲三
- 出版社/メーカー: 丸善
- 発売日: 1995/03
- メディア: 単行本
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (143件) を見る
- 作者: MollyM. Bloomfield,伊藤俊洋,岡本義久,清野肇,伊藤佑子,北山憲三
- 出版社/メーカー: 丸善
- 発売日: 1995/03
- メディア: 単行本
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (75件) を見る