2010年度水曜1限化学は本日で前期終了です.後期からは新棟に場所を移します.履修者84名中80名出席,出席率95 %.
前回やったこと・質問・コメント・その他紹介
くわしくは前回の講義録後半参照↓
原子壊変の反応速度論
前回の終わりに要点を説明した箇所だったのですが,質問が多かったため,細かく積分計算を説明しました.原子核の崩壊が多段階に渡る場合にはもう少し複雑な式を立てて解く必要がありますが,まずはこの型をマスターすることが基本です.
また,
kt1/2=ln2
となること,
C=C0(1/2)n
となることを導きだしました.
●C=C0e-ktを出すときの微分方程式の解き方がわかってよかった.
●原子の崩壊速度論の途中計算が数学があまり得意ではない私にとって難しかったので,理解できるように見直そうと思った.
●早起きしたらちゃんといいことがありました.(・▽・)* 前期最後の授業,遅刻しないで来られて良かったです.
●俺も手持ちの金が少なくなるほど使う量が少なくなります.
前期試験についてのおしらせ
前期試験に備えて準備しておくべきこと,やらなくて良いこと,を要約しました.
質量欠損
質量はエネルギーの一形態です.核内で陽子と中性子をつなぎとめている結合エネルギーが核分裂の際に放出されること,その際に核の質量が減少すること,ここで減少する質量はエネルギーとして熱などに変換され,それらエネルギーの総和は核分裂の前後で保存され,質量を含むかたちでエネルギー保存則が成り立つこと,を説明しました.
具体的な例として,1 gの質量欠損で何回風呂を沸かすことができるかを計算してみました.
●原爆の質量が1 g減っただけで何TJものエネルギーがあることがすごいと思ったけれど,身の周りでは質量が減ることがほとんどないから結局すごいのかよくわからなかったけど,たぶんすごいのかと思う.
●たった1 gの質量欠損があれだけ大きなエネルギーを持つことにとても驚きました.それと同時に,あれだけ大きな影響を及ぼす核が世界中にあることを考えると,本当に恐ろしいなと感じました.
●1 gの質量欠損があんなに大きなエネルギーをもっているなんてびっくりでした.
●9100年間毎日ふろを沸かせるエネルギーが原爆にあるなんて・・・
●放射線って場所に残るんですか?
●核エネルギーは物理の範囲だと思ってました.面白かったです.
●なぜ質量はこれだけずばぬけたエネルギーをもっているのだろう.
●核の話でプルトニウムに中性子を当てて,でてきた中性子をまた再利用するのって,「プルサーマル計画」ってやつですよね?
ちがいます.同じ反応系のなかで中性子が次の核にアタックをかけているのです.だから連鎖反応なのです.
核エネルギー利用の原理
原子核が壊変する際に飛び出す中性子をさらに別の原子核にぶつけていく操作の連鎖反応で核分裂を起こします.これを高速にやると原子爆弾,ゆっくりやれば原子力発電です.
核エネルギーの開発を考えるとき,核兵器の開発を無視することはできません.人類史上初の核爆発実験となった1945年7月15日のトリニティ実験のムービーを上映しました.
この日の実験の様子をまとめたわかいやすい動画が昨年はYouTubeで公開されていたのですが,その後 削除されました.関連動画としては以下のようなものがあります.
核分裂のエネルギーを最も効率よく利用した応用例は原子力発電ではなく,原子爆弾です.冷戦時代,アメリカ合衆国とソビエト連邦とでは核兵器の開発競争を続けていました.1961年,人類史上最大級の核爆発実験が行われました.その様子も上映しました.
●核についての歴史もふまえているのでおもしろかった.
●原爆の恐ろしさは日本では消えることはないだろうと思いました.
●原子ばくだんはコワイ.
●原子爆弾のもつエネルギーが想像できないくらい大きいものだとは思わなかった.その技術が生活向上のために生かす方向へ進んでくれるといいけど・・・そのためにもRT生としてしっかり放射線について学んで医療という方向で使うことのできる診療放射線技師になるぞ!!と改めて思った.
●6000発近くの核がここをねらうことができるのに驚いた.
●核兵器を持っている国が結構多かったので驚いた.
●なんで日本は核を落としてきたアメリカと仲良くしようとしているんだろう
●核は相当ヤバいということを再認識しました.全ての国が核を手放すべきだと思います.
●技術の発達はすばらしいけど,恐ろしいと感じました.
●最近のアメリカでは,日本に落とした原爆はほんとに必要だったのかといわれてるそうです.やっぱり核はきけんなものです.
●核兵器って怖いと思いました.
●原爆はやっぱり怖い.
●原爆はなくしてほしいです.
●核兵器はおそろしさが改めてわかりました.
●核爆弾が早くなくなるように核廃止を宣言したオバマ大統領,頑張って欲しいです.口先だけにならないように.
●「核なき世界」と言ったって自分の国が持ってるのに何言ってるんだと思ってしまう(/・ω・)
●人類史上発の核爆発実験すごかったです.
●最後の爆発がすごかった.キノコ雲は写真でしか見たことがなかった.
●爆発すごかったです.
●核爆発はすごかった.
●ツァーリボンバ,マンガで出てきました.あの爆発もマンガみたいでした.早く来てよかった.
●核兵器はとても恐ろしいなぁと思いました.たとえ多くの人が死んだとしても,勝てば官軍みたいにアメリカでは思われているとしたら悲しいことです.
1991年に冷戦が終わって19年が過ぎましたが,人類はいまだに核兵器を保有し続けています.いま現在,自分のいる場所が何発の核兵器によって攻撃可能かを見積もるサイトがあります.
これによれば相模原市は 6277発の核弾頭の射程距離内に位置しています*1.
放射線と生体
続いて,医療と放射線との関係を解説しました.電離放射線による生体への影響,ヒドロキシラジカル,防御機構,について説明しました.続いて放射線量を量る際の単位としてSI単位系から [Bq],[Gy],[Sv] を,非SI系から[Ci], [rad],[rem]を紹介しました.
- (1)放射線がどれだけ出るか(BqとCi)
- (2)放射線によるエネルギーをどれだけうけとるか(Gyとrad)
- (3)放射線によりどれほどの影響を受けるか(Svとrem)
の3つの視点で考えます.医療現場ではまだSI単位系への完全移行が済んでいないようです.
●技師の人がつけているバッジはただのバッジだと思っていたけど,放射線をはかっていたんですね.
●放射線について実際に扱うようになってからも役に立つ講義だった.
●放射線は将来よく関わるものなので,とても興味深かった.
●BqやGyやSvなどは他に違う単位があるので,ややこしくなりそう・・・でも放射線を取り扱うのでそんなこと言ってらんなーい!! 値違かったらヤバいよ絶対(-□-;)
●大きく分けて3つの放射線量があるのは初めて知った.
●いろんな単位があるんだなーとしみじみ感じました.おもしろかったです.
●今まで知らなかったSI単位も出てきて,思っていた以上にSI単位には種類があるということを知りました.
●放射線をどの程度あびるとマズいのかというところの話に興味がわいた.
●放射線を受ける量の大きさのところが興味をもった.また,ビタミンで損傷を防げていることを初めて知った.
●放射線の正しい知識をつけないといけないなと思いました.
●X線の実際の危険度や,核実験のことなど,今まで知らなかったことがわかりました.
●X線の放射線が日常受けているものより低いとは思ってなかった.
●原子力発電のときの放射線より,バックグラウンド放射線のほうが高いということに,びっくりしました.
●数値では安全とは言っても,原子力発電所の近くには住みたくないと思った.
●原発周辺環境はX線撮影以下だったけれど,ずっと近くにいたら危ないと思う.
●エネルギーの強さと生体の影響が無関係なのに驚いた.知らない単位が今日はいっぱい出てきた.
●レントゲンは身体に悪影響だと思ったがそうでもなかった.
●放射線は自分が思ってるほど怖いものでなかった.
●人工放射線の人体への影響が思っていたよりも低くてびっくりしました.
●放射線について・・・難しかったです.
●放射線は危ないと思ってたが,距離の自乗でのリスクだとは思ってもみなかった.
●分子をイオン化って具体的にどうなるんですか?
●放射線の当てる角度を今後考えると怖くなりました.
●放射線って意外に身近なものなんだな〜と思った.でも地味に影響を与えているなんて興味深かった.放射能は良い面も悪い面もあるので,使い方しだいだと思った.
●自然環境からの放射線と人工放射線の強度の違いに驚きました.
●世界平均の被曝量を考えるとX線撮影での量は少ない.正しい知識を身につけていきたい.
●どれくらい人体に影響があるのかがよくわかった.
●治療のときに使う放射線が安全な量であるとしって安心した.
●胸部X線撮影は0.05 mSv程度ならまったく恐れる必要はないと思った.
●バックグラウンド放射線について初めて聞いたのですが,私たちの身の周りには放射線がたくさんあり,それに比べたらレントゲンであびる放射線量はかなり少ないことを知りました.だけどこのことはあまり知られていません.知られることで放射線技師への偏見がなくなるのに・・・と思います.
●原発周辺の放射線量が胸部X線の量よりも少ないということに驚きました.放射線を使うにあたって厳重な注意が必要だと分かりました.
●放射線をあやまった使い方をすると本当に恐ろしいと思った.
●RTなので放射線について詳しく知れて良かったです.
●私も鉛エプロン着たことあります!!
●放射線はたとえ少量でも大きなエネルギーを与えるが,鉛エプロンなどで放射線を防護することができるということがわかった.
●ビタミンを取ることは健康だけでなく放射線による損傷もふせぐなんて驚きです.
●1回のCT写真をとると何Svなんですか?
6.9 mSv.
●・・・・恐怖! X線撮影(笑)
恐怖じゃないんだってば! 将来 医療の仕事をするんでしょう!?
●世界のみなさん,単位を統一しましょう.国の歴史とか,業界の歴史とか,知ったこっちゃありません.
数十年前に我が国では文化でもあった尺貫法を捨てて国際単位に切り替えました.相当の犠牲を払ったわけですが,その頃の先人の努力を忘れてしまったのか,マイルやインチを平気で使う業界があります.愚かな話です.
●p213に「放射線による食品の腐敗防止,すなわち低温殺菌」とありますが,これって牛乳にも使われているのでしょうか? (牛乳パックに「低温殺菌」と書いてあった気がするのですが,これはまた違う低温殺菌なのでしょうか・・・?)
ちがいます.60 ℃から70 ℃の間で加熱して殺菌する方法です.日本国内では放射線を用いた乳製品の殺菌が認められていません.「放射線=放射能=あぶない=食品に使うなんてトンデモナイ」という思考をする人々が多いことも理由のひとつです.
●原発周辺環境が0.05 mSv以下ということですが,毎秒ですか? 1年間だとどれくらいになるのですか?
●自然環境から出てる放射線が日本では1 mSvですけど,これは1日単位なんですか?
●被爆が世界平均2.4 mSvっていうのは1年間にってことですか?
年間の値です.
●よく歯科に行ってレントゲンをとるときにぶ厚くて重いエプロン?みたいなのをかぶせられますが,あれって身体が動かないようにするためじゃないんですか? それとも放射線をあびないためにあるものなんですか? 小さい頃に歯のレントゲンをとる時に「身体が動かないためにかぶせるんだよー」と技師さんに言われた記憶があったので・・・.
放射線からの防護ですね.放射線と言うと不必要に恐れる患者もいるので,身体が動かないため,と説明したのかもしれません.完全にウソってわけでもないし.
感想
●今日で前期は最後ですか・・・さみしいです・・・.後期も楽しみにしています!
●前期おつかれさまでした.試験頑張ります.後期もよろしくお願いします.
●前期の授業たのしかったです.後期もよろしくお願いします.
●前期化学ありがとうございました!! 後期からはいよいよ新校舎ですね.
●前期の授業,ありがとうございました! 楽しくて,おもしろかったです.
●前期の授業おつかれさまでした.そしてありがとうございました.化学のおもしろさがよく伝わりました.
●前期の間,ありがとうございました.
●前期ありがとうございました.試験がんばります.
●前期最後の授業,わかりやすかったです.
●楽しかったのでよかった
●9月まで長いなー
●放射線物理学でやったのと同じようなところでした.放物では「放射能」はRIが毎秒壊れる個数」と習いました.
●今日やったのは,放射線物理学でも少しならったところだったと思います!
●今日のところも放射線物理学とリンクしていたので,理解が増して良かったです.
●自分の専門に関するところだったので,興味深い内容だった.
●今日の内容は昨日の放射線物理学とかぶってたので復習になりました.(*^_^*)
●授業がけっこう放射線物理学でも応用できるものがおおいので,1教科勉強して2教科学べる!というオイシイ話に気づきました.深くて難しい内容だと思いますが,これを励みにしてがんばりたいです.
●授業中に野島先生が,その辺は考えないでといった部分がありましたが,考えないでと言われると,考えたくなってしまう・・・これは人間の本能なのだろうか・・・・
そうやって考えさせてみる・・・・
テスト近づく
大学に入ってはじめての定期試験に恐怖心を抱いている学生も多いようです.
●テストやばいです.頑張ります.
●わかりやすかったです.テスト頑張ります.単位落としたくない・・・・
●SI単位を直すのが苦手です.テストがとても心配です.
●テスト頑張ります!
●テスト頑張ります!
●テスト頑張ります!!
●テスト頑張ります・・・
●テスト頑張りたいと思います.
●テストやばいです,先生ー(;_;)!!!
健闘を祈る.
次回予告
前期試験結果を講評した後,第10章「水,溶液,コロイド」に進みます.
リンク
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- 作者: MollyM. Bloomfield,伊藤俊洋,岡本義久,清野肇,伊藤佑子,北山憲三
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*1:この計算方法が完全に正しいかどうかは別として