Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

看護学科の化学講義(10)物質の三つの状態

履修者13名中12名出席.

前回の講義に対する主なコメントの一括紹介

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ここに挙げられている質問や感想にひととおりコメントしました.くわしくは2009年6月19日のエントリー参照.

大気圧を理解するためのムービー紹介

私たちが1気圧の条件に暮らしていることはなかなか意識することのない事実です.以下のムービーからこれを理解することができます.

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家庭用クーラー & 冷蔵庫の変遷

「温度を下げる」働きをする家電の仕組みを理解できるようになることを本日の講義の目標にしました.そこでクーラーや冷蔵庫がどのような変遷を遂げてきたのかを紹介してみました.参考にしたサイトは以下のとおりです.

物質の三つの状態(p 149)

第6章に入りました.固体・液体・気体の変化についてはp 10で一度説明されています.また,第2回(2009-04-24)でも説明しましたので今回は省略.

加熱曲線(p 153)

物体に熱を与えて行った際の温度変化の状態をグラフにしたものが加熱曲線です.氷を水蒸気にするまでの様子を表す加熱曲線を描きながら,状態の変化,温度計のメモリの動き方,熱の出入り,に関して説明しました.

融解や蒸発が起きるとき温度計の目盛りは動きません.そのため熱はたいした仕事をしていないように見えますが大間違いです.固体を液体に変える,液体を気体に変える,という仕事をしているのです.この仕事は物体の温度を1℃上昇させる仕事よりもタイヘンなものです.たとえば1 gの水の温度を1℃上げるために必要な熱エネルギーは1 calですが,氷を溶かすためには80 calが必要です.蒸発させるとなると539 calが必要になります.温度変化よりも状態変化の方がエネルギーを必要とするのです.

確かに肉を解凍するのすごく時間がかかります.

熱を出したときに氷で冷やすことは化学的に説明できてすごいと思った.

汗が蒸発すると身体が冷えるのはどこからか熱を吸収してるからですか?放出してるからですか?

身体からみると熱の放出,身体のまわりの空気からみると熱の吸収になります.蒸し暑い季節になりました.暑い日にムシムシするのは「飽和蒸気圧の違い」から説明できます.これは次回説明します.

気体の性質 (p156)

圧力の単位,ボイルの法則,シャルルの法則,理想気体,理想気体の状態方程式,アボガドロの法則,について解説しました.

冷蔵庫やクーラーのしくみ

「ものを冷やす」しくみについて気体の圧縮-膨張や気-液サイクルに伴う熱の出入りから説明しました.

クーラーの仕組みがよくわかりました.あれは気体の変化によって冷やされていたなんてびっくりしました.

冷蔵庫やクーラーによってどうやって涼しくなるかがわかりました.そういえば,エアコンってつけていると部屋が乾燥してきますが,それはどういったしくみなのでしょうか?

温度が下がると蒸気として存在できる水分子の量が下がります.その結果,乾燥して来ます.エアコンのドライ機能を使う場合は空気を加熱して水分を蒸発させる場合もあります.

クーラーを回すと水が出てくる仕組みがわかりました.今までクーラーに水を使う意味がわからなくて,何故に水が出てくるのかわからなかったけど,水を使うのではなくて,空気中の水蒸気を凝縮したので水が出てくるんですね.

冷蔵庫やクーラーの状態変化の仕組みがまだよく理解できていなかったので,家で復習したいと思います.ボイルさんやシャルルさんの法則がんばって覚えます!

今日のところは全体的にわかりづらかったです.冷蔵庫とクーラーのしくみはややこしいので,これからも聞かれたら,電気で冷やしているって答えてしまいそうです.

今はアタマのなかぐちゃぐちゃです.整理してきます.

蒸発熱や凝縮熱というエネルギーは目に見えるものでもないのでとらえにくいところがあっても不思議ではありません.時間をかけて少しずつわかってくるところです.

ビル街などがすっごくあついのは,クーラーとかの熱が外に出ているせいもあるんですね.

そうなんです.でももともとあった熱を部屋から外に追い出しているので,街全体を激しく加熱しているわけではありません.ここ,誤解されがちな点です.

その他のコメントなど

電子レンジで野菜を加熱するのと,普通にゆでるのでは何か調理後の野菜に違いはありますか.電子レンジは楽なのでフル活用したいのですが,どちらの方がおいしいとかあるんでしょうか?

電子レンジの話はまだまだ続く模様です.普通に茹でる場合には野菜の外側からジワジワと熱が攻めてくることになります.電子レンジの場合には全体を一気に加熱することになります.どちらがおいしいのかは,なんともいえません.

講義を終えて

分子や原子について考えるときには小さな粒を想像して,それらがくっついたりはじけたりする場面を頭の中に描いて理解することができます.それと比べて「熱」とか「エネルギー」という場合にはイメージするのが難しく感じられることでしょう.私も自分自身を振り返ってみると,なんだかわからないうちに慣れてしまった,という感じがします.今回も自転車用ポンプとか風船といった身近なものを例に引っ張り出してきたのですが,気体の性質の全体像を説明するにはまだまだ検討の余地が残されていると感じています.

次回予告

第6章「物質の三つの状態」を終わらせ,第9章「反応速度と化学平衡」にジャンプする計画です.第7章と第8章はまとめてその後に1回で扱う予定です.

リンク

www.tnojima.net
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