出席30名.また少し減りました.「もう化学要習なしでも化学を理解できる」というレベルまで成長した学生が受講をやめたのか,それとも「モル濃度とかイヤだし」という学生がパスしたのか.
前回のコメントへの回答
前回の出席カードの自由記入欄に書かれていたコメントへの回答.2009年5月19日のエントリー参照.
講義内容要約
今回は「質量パーセント濃度」と「モル濃度」が登場しました.前者はモルを知らなくても物質が分子やイオンからできていることを知らなくても理解できるもの,後者はモルを知らないとさっぱりというものです.
- 質量パーセント濃度
- 溶液100 g中の溶質の質量(g).単位は%.
- モル濃度
- 溶液1 Lに溶解している溶質の物質量(mol).単位は[mol/L].
ほかに登場したキーワード→溶解,溶媒,溶質,電離,電解質,非電解質,水和水.
「質量」,「速度」,「温度」などと比べて「濃度」はイメージしにくい概念です.5 %の食塩水と10 %の食塩水を目でみて区別することは無理でしょう.しかし実験でも仕事でもサンプルや試薬が水溶液の状態でストックされていることが珍しくありません.濃度に関して正しく理解しないことにはハナシにならないのです.
よくつまずくパターンとして以下のようなものがあります.
質量パーセント濃度40 %の硫酸のモル濃度を求めよ.ただし,この硫酸の密度は1.3 g/cm3,硫酸H2SO4の分子量は98とする.
-----教科書 p35
ここでつまずく原因の一つは「その硫酸が何Lなのかわからない」というものでしょう.実際にはこの問題を解くにあたって体積の情報は必要ないのですが,硫酸の入った入れ物の具体的な大きさをイメージできないと問題にとりかかれないという場合もあるでしょう.
モル濃度を求めるときには,「まず1 Lの場合を考える」ことが基本です.モル濃度は1 L中の溶質の量(mol)だからです.だからこの問題も,硫酸が1 Lあると仮定して取り組むと簡単です.
講義を終えて
「100 gの水に25 gの食塩を加える」のと「水に25 gの食塩を加えて100 gにする」のは違うとか,「1 Lの水に1 molの食塩を加える」のと「水に1 molの食塩を加えて1 Lにする」のは違うといった注意を繰り返しました.なかなか実験操作の実際を知らないと区別が難しいかもしれませんが,順番を逆にすると濃度がズレるからダメだと注意を促しました.
出席カードの自由記入欄から
全然関係ないですが,実験室の純水はどうやって作ってるのですか?
まず水道水を活性炭フィルターに通して細かいゴミを取り除きます.続いてイオン交換樹脂に通して金属イオンや塩化物イオンを取り除いています.
問題を見てすぐに答えられるようにしたい.
いろいろと変換みたいにしていく問題になると分からなくなってしまうし,解くのに時間もかかってしまう.
濃度の問題は慣れです.溶液があってそこに何かしら溶けているとき,それが何gなのか,何molなのか,あるいは,何gの何かを溶かして何mol/Lにしたいとき,溶媒は何L必要か,といった問題が大半です.あとは質量がわからないときは密度から計算するなど,もう一段階計算が加わる場合があります.与えられた情報をうまく組み合わせれば確実に計算できるしくみになっていることを覚えておきましょう.
テスト対策で化学式はどの程度憶えればいいのでしょうか? くじけそうです.
化学要習ではむやみやたらと化学式を記憶させることを目的とはしていません.これまでも演習問題では物質の和文名称と化学式とを併記してきました.ただし,何度も登場する物質名や化学式は化学要習履修後も必要になってくるものばかりですので,憶えておく必要があります.というあたりから推測してください.化学の講義では担当教員ごとに考えが違ってくるので,それぞれの担当者に問い合わせるのがよいでしょう.
次回予告
第7章「化学式と化学反応式 I」に進みます.第8章「化学式と化学反応式 II」とあわせて,2回に分けて化学反応を記述する方法を学びます.