Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

化学講義(11)反応速度と化学平衡

前回の講義に対するコメントの一括紹介

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これらをひととおり紹介し回答しました.詳細は→7月1日のエントリー

模擬試験問題配布

化学の前期試験は今月27日(月)に行われます.ここ数回,試験対策についての質問が連続して寄せられていたので「模擬試験問題」と解答例を作成して出席者全員に配布しました.ここから同じ問題は出ませんがどのような「傾向」なのかはわかることでしょう.

模擬問題,メチャ助かります!

そんなに役だつのか・・・・

活性化エネルギー

反応を進めるためには活性化エネルギーが必要です.みかけの活性化エネルギーを下げるものが触媒です.

反応速度に影響を与えるさまざまな因子があります.反応物の性質,反応物の濃度,反応温度,触媒,そして反応物が固体の場合には表面積も重要な要素となります.「錠剤のクスリを砕いて飲むな」と注意書きにあるのは表面積が増大して早く溶解反応が進んでしまうためです.使い捨てカイロが鉄の酸化反応を利用可能なのは鉄粉にして酸素との接触面積を増やしているためです.鉄板を抱いていても熱くなりませんね.

表面積ってものすごいパワーを持っているんですね.おもしろかったです.

カイロの中に鉄が入っているのは知っていたが,表面積を大きくすることによって酸素との反応を激しくして発熱するということを初めて知った.

バーミキュライトでしたっけ?

園芸の趣味を持つ学生でしょうか.

バーミキュライト(ヴァーミキュライト、expanded vermiculite)は、農業や園芸に使われる土壌改良用の土。また、建設資材としても使われている。

中国、南アフリカ、オーストラリア、ジンバブエ、米国などに産出する原鉱石の蛭石(ひるいし、vermiculite)を800℃ほどで焼結処理し、10倍以上に膨張させたもの。

バーミキュライト(Wikipedia)

スカスカなので水分を保持できるしくみですね.スカスカだということはそれだけ表面積が大きいということです.

化学平衡

化学反応にはある程度進行する逆反応も増えてくるものがあります.これを「可逆反応」と言います.これに対し,生成物から反応物への反応が生じない反応を「不可逆反応」と言います.生命現象を分子レベルで見ると,多数の可逆反応がリンクされていることがわかります.臨機応変に環境変化に適応するための戦略です.

可逆反応を理解するためには化学平衡を理解する必要があります.平衡反応に何らかの操作を加えた場合に平衡がどのようにシフトするのかを判断する際に役立つのが「ルシャトリエの原理」です.

平衡好きです.

ダイナミックで非常に面白いところです.

ルシャトリエの原理

NO2とN2O4の平衡反応を上映しました.

D

↑平衡反応の温度依存性

D

↑平衡反応の圧力依存性

高校のときの説明が抽象的で分かりにくかったけど,たくさん例を出して説明して下さったので分かりやすかったです.

イロイロと例を見ながら理解するのが近道です.

アンモニア化学合成

水素と窒素からアンモニアを合成する化学プロセス「ハーバー・ボッシュ法」について紹介しました.20世紀工業化学の代表的成功例です.

参考サイト

窒素の固定化のところの板書が読めなかったです.失礼.時間切れが近かったもんで.

ハーバーなどの科学者の人生も知ることができて覚えやすいと思う.

科学(化学)は人間の営みです.

そのほかのコメント

いままでついていけてたが,そろそろ厳しくなってきた.

負けてはいかん.後期は水溶液と有機化学が待っているぞ.

化学合成は嫌いです.名前と合成物質と触媒が覚えられません.

ふふ.

近頃 先生が冷たく感じてちょっと怖いです.

春以降,心境の変化は特にないのですが,なぜでしょう? 思いあたるフシはないのですが.強いて言えば進めるペースを速めたことくらいでしょうか?←そうしないと終わらない.

授業評価アンケート(大学指定)協力御礼

別エントリーに書く予定です.

次回予告

前期最終回となる次回は第7章「原子と放射能」,第8章「放射能と生物」をやります.

リンク

www.tnojima.net
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