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Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・野島 高彦)

各種オンラインサービスと電子機器の有効利用法についての指導法

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2014年3月11日に「一般教育教員FD研修会」っていう,学内の研究会みたいなのがあって,「大学基礎演習B『大学生としての学び方』」を担当してる教員のうち3名が,それぞれ指導している具体的な内容について報告しました.

私は,私の担当するコース(前期木曜2限)において指導している,各種オンラインサービスと,各種電子機器を大学での学びに応用する考え方について解説するよう依頼されたので,どのような考え方でどのようなことを1年生に教えているのかを,10分間で解説しました.

ここで使用したスライドの中から何枚かを選んで,内容をまとめておきます.

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北里大学の建学の精神の一つに「事を処してパイオニアたれ」っていうのがあって,私のコースではこの考えに従って,「学びの効果を高めるために積極的にアレコレとトライしてみよう☆」っていう考え方を奨めています.

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その一つが「使えるものは何でも使う!」っていう考え方で,たとえば「Webサービス」なんてのは,上手な使い方をすれば,学びのクオリティを飛躍的に高められるものです.

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例として「レポート課題を書き始めるまでの『持ち時間』の内訳」を考えてみます.

資料探しに時間を取られてしまっているうちに〆切が迫ってきて,やっつけ仕事でレポートを書き殴って提出してセーフ,なんてのは珍しいパターンではありません.

コレ,時間と頭の使い方としては,もったいないことをしているんです.

なんでかって言うと,頭は創造的な作業に使うべきだからです.この場合だと資料に基づいて「自分で考える」ステップが最も重要です.このステップは機械化できない,人間にしかできないステップだからです.

そういうわけで,資料探しなんかは機械にやらせて時間を短縮して,そこで生まれた時間を「考える」時間に割り当てるべきなんです.それを実現する技術がWeb検索です.だから,大学生は1日も早くWeb検索のやり方を覚えて,学びに応用するべきなのです.

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Webからは大量の情報が見つかるわけですが,情報の信頼性について注意する必要があります.例えば何かの新製品について調べるとき,その製品を作ってるメーカーの公式サイトには,その製品についてネガティブな情報が書かれているとは考えられないですよねぇ? 自分(たち)に都合の悪い情報は,わざわざ公開しないものです.

必ずってわけでもないんですが,データとか説明とかについては,政府,自治体,公的研究機関,大学,あたりの公開している情報はとりあえず信頼できる,っていうあたりで考えておけばOK*1.複数箇所を比べるべし!

Wikipediaも良くできたシステムなので,「まずはWikipediaから」ってのはOKです.ただし,Wikipediaに記載された情報を引用するときには,その情報源を見つけに行くこと.Wikipediaは中継地点,という考え方をするものです.何かの根拠を問われて「Wikipediaに書いてあったんだけど〜」なんて言ってるヒトは救いようもないボケ相手にされません.

自分自身の意見や結論の妥当性を検証する際には,自分の「反対意見」や「反対の結論」を積極的に探して,その内容に基づいて自分の考えを検証すべきです.人間,自分と同じ考えの意見を探していては,世の中を都合良く見てオシマイなのです.反対意見とぶつけてみたときに初めて気付く盲点っていうのがあるのです.そいつを見つけるためには,大量の情報を引きずり出せるWeb検索が必要なのです.

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「使えるものは何でも使う!」っていう考え方の2点目は,「各種電子機器」です.

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2014年の技術を徹底的に使って,大学での学びに応用します.デジタルカメラとか,デジタルビデオカメラとか,ボイスレコーダーといった電子機器が,手頃な値段で手に入る時代になりました.「記録と言えばノートとエンピツ」なんていいうのは,便利な道具が手に入らなかった時代の習慣に過ぎません.使える道具はどんどん使おうぜ☆

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講義室では古くから「黒板+口頭説明」による講義が行われてきていて,コレは高校までの授業でも標準的なパターンなので,学生の身体は自動的に「ノートとエンピツ」による「記録」を残す体勢に入ります.「おやくそく」っていうやつですね.

ところが2014年の講義室ではスライドショーが行われたり,ムービーが投影されたり,演示実験があったりという具合に,「ノートとエンピツ」では対応できない場面が展開されてるわけです.困った.

そこで電子機器の出番ですよ.高速展開されて行くスライドショーならカメラで撮影しちゃえばいいし,黒板だっていちいち手書きのノートを取らなくても撮影すればOK. 動きを伴う演示実験とか動画とかなら,ムービー撮影しちゃえばいいわけです.

講義だってボイスレコーダーを使って後で文字起こしをすれば勉強になるし.録音っていうワザは一昔前の大学でも,外国語の授業を記録するために行われていました.テープレコーダーっていう道具があって以下略.

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ここで注意しておかなければならない点があります.

北里大学の場合,医療系のコースでは,専門科目における撮影 and/or 録音が禁止されています.これは患者の協力を得て記録された資料が教材として用いられる場合があって,患者のプライバシーについて配慮するためです.その他の科目では担当教員の裁量に任されてます.

講義室で撮影するときには,教員とか履修者とかの姿を写して良いものかどうか考えてください.「写されたくない」と考えている人もいることをお忘れなく.

著作権についても配慮が必要です.とりあえず個人利用に限定しておけばOK.著作権について理解が進んできたら,限定利用とか無制限公開についても検討する,という流れをオススメします.

私の化学講義では写真撮影,動画撮影,録音,Twitter中継,その他すべてOKです*2

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撮影 and/or 録音が手軽になるのと同時に,通信手段も手軽になってきました.私が2013年度に担当した「大学基礎演習B『大学生としての学び方』」履修者28人に対して,4月にアンケートを行ったところ,E-mailを25人,LINEを23人,Twitterを15人が使用していると回答しました.昨年度までは数名いた「自分のホームページ」開設者はついにゼロとなり,数年前は大学学部学科学年コミュで賑わっていたmixiも下火となっています.

この世代にとってはタイトルを考えたり書き出しを考えたりしなければならない電子メールも面倒なシステムと捉えられています.「手紙を書く」だの「電話をかける/出る」だのというのは昔の習慣です.こういう世代間の違いを理解した上で,学部生に電子機器やオンラインシステムの使い方を指導するのが,2014年の大学教員のシゴトの一つです.

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「安全に」使うことも重要です.恐れるのではなく,怖がるのでもなく,避けるのでもなく,禁止するのでもなく,建学の精神「事を処してパイオニアたれ」をお忘れなく.

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SNSをめぐるトラブルがイロイロと話題になりますが,ココで最も重視しなければならないのは,「学生の人生を守る」ことです.所属機関の名誉とか,指導の責任とか,その他アレコレは,その次に考えることです.

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SNSでトラブルを起こさないために理解しておかなければならないのは,「悪いことをしない」と「仮に悪いことを誰かがしていると知ってしまっても,それをわざわざ他人に公開しない」の2点だけです.どちらもSNSが世の中に登場する前から「あたりまえのこと」でした.SNSだけに固有なキマリとか常識なんて,ないのです.


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というわけで,大学での学びを充実させるために,「使えるものは何でも使う」の精神で行こうぜ☆

おまけ

参考書籍

今回紹介した内容を演習で扱うために参考にした書籍

LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか? (マイナビ新書)

LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか? (マイナビ新書)

キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)

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ソーシャルメディアマーケター美咲 2年目

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参考機器

私が使っている小道具

OLYMPUS ICレコーダー Voice-Trek V-13

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Eye-Fi Pro X2 16GB Class10

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このブログを書いている人


野島高彦(@Takahiko NOJIMA)はこういう人 - 大学1年生の化学(北里大学・野島高彦)

はじめて学ぶ化学

はじめて学ぶ化学

*1:絶対に正確だっていうわけじゃないけど,個人ブログとか私企業なんかより中立だからね.

*2:法律とプライバシーに関する問題が生じなければ自己責任でOK.