3月9日(土)15時から,中央大学理工学部(東京都文京区)で,千喜良 誠(ちきら まこと)先生の最終講義が行われました.千喜良先生には,卒業研究配属から修士論文提出までの3年間,研究をご指導いただきました*1.
最終講義は理工学部で最も大きな講堂教室で行われました.出席者数は300人を超えていました.卒業後,一度も会うことのなかった先輩,同期,後輩とも再会できました.同窓会みたいなものです.
最終講義「DNAとの遭遇」
人生において偶発的に生じた出会いという意味で,先生は今回,「遭遇」というキーワードを軸に最終講義を行われました.もともと金属錯体の構造化学をご専門とされていた先生にとって,研究対象としてのDNAとの出会いは「遭遇」だったわけです.この「遭遇」があって,1983年に中央大学に赴任されてから最終年度まで「DNAと金属錯体との相互作用」をメインテーマとされたわけです.
研究室見学
最終講義の後,卒業生がゾロゾロと先生の研究室を見学.懐かしい機器をみつけては昔話をする卒業生で実験室は大混雑.
パーティーでスピーチを頼まれました
実行委員会から前もってスピーチを頼まれていたので,当日話したことを思い出して書き出しておきます.3点あります.
(1) 何が本質かを考えなければならない
先生に初めてお会いしたのは3年生のとき,2年生の必修科目の再履修コースのときでした*2.出席を取る科目だったし*3,再履修だったので私は毎回遅刻せずに出席していたのですが,あるとき悪天候で交通が乱れ遅刻してしまいました.それで演習が終わってから遅延証明書を片手に出席票をもらいに行ったのですが,先生は「一回くらい出席がなくったって関係ない! そんなのは本質ではない!」とおっしゃって去って行かれました.
あとでお聞きしたところ,試験結果だけで合否判定されていたとのことで*4,ようするに毎回毎回出席していても,試験ができなければしょうがないわけです.出席状況を成績判定の参考にせず,試験イッパツでキメるっていうのは現在に至るまで私の好きなスタイルです*5.
(2) 甘い態度ではいけない
先生の研究室でお世話になっていた4年生のとき,私は2年生の必修科目を2つ再々履修していました*6.その片方がワケのわかんない科目*7で,私はあるとき「もう3年目なんだし単位くれたったいいじゃないかよー! もーもーもー!」と叫んだところを先生に見つかり,「そういうのはダメだ! そんな調子だから君はダメなんじゃないのか!?」とお叱りを受けることになりました.
そうなのです.「それくらい見逃してくれよー」という甘い姿勢はダメなのです.ダメ.
(3) オープンにすることの強さと勇気
以上2点と違って,三つ目は私のライフスタイルに深く深く影響していることです.それは「オープンにすることの強さと勇気」です.
3年生の終わりが近づいた頃,卒業研究でお世話になる研究室を決めようとしていたときのことです.私は先生のところにアポなしで訪ねたのですが,先生はその時にお考えになっていた,先生にとって興味深い物事をイロイロ説明してくださり,最後に「そうだ,実験室に卒研の4年生がいるから,そっちにイロイロとハナシを聞いてみるといい」とおっしゃって,私を実験室に連れて行って下さいました.
実験室にはちょうど私の1年上の先輩がいて,私にアレコレと説明してくれました.その内容が,先生のおっしゃった内容と全く食い違っていなかったので,先生には表裏がないのだと理解しました.
「ものごとをオープンにすること」は,現在の私にとって最も重要な姿勢であり,そして,あたりまえのこととなっています.人間は,隠し事が一つ増えるたびに弱点が一つ増えます.すべてをオープンにしてしまえば,何も怖くないわけです.そういう考え方をするようになった原点は,卒業研究の時期なのかもしれません.
お礼
千喜良先生,30年以上の中央大学勤務おつかれさまでした.そして卒業研究から現在に至るまで様々な面でご指導いただき,ありがとうございました.これからもお元気でお過ごしください.
続・お礼
今回のイベントの実行部隊となった2012年度生物錯体化学研究室所属学生のみなさま,おつかれさまでした.また,生物錯体化学研究室で助教をつとめられたA博士とK博士,おつかれさまでした!