Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

看護学科の化学講義(10)気体の性質と反応速度

履修者47名中46名出席,98 %.

前回やったこと・質問・コメント・その他紹介

くわしくは前回の講義録後半参照↓

天気予報で気圧の単位にミリバールが使われていたころ

D

1982年8月14日のニュース.

mmH2O

大気圧のもとでは水銀柱は76 cmまで上昇します.しかし水銀よりも密度の低い液体ならもっと高いところまで上昇することができます.たとえば水の場合は10 m以上の高さまで上昇します.その様子を見ました.

D

世の中には水よりも密度の低い液体があります.以下のサイトにいろいろな液体の比重が並んでいます.

ここでは「航空揮発油」が比重0.65から0,70という値をもっていることがわかります.それでは「航空揮発油柱」をつくったら,1気圧で何メートルの高さまで上昇するのでしょうか.比例式を立てて計算してみました.約16 mになります(蒸気圧の効果を無視).

気体の法則いろいろ

ボイルの法則,シャルルの法則,ボイル-シャルルの法則,理想気体の状態法的式,ヘンリーの法則,ドルトンの分圧の法則,を説明しました.

●大学受験ではRをL atmではなくJを使うようになってますが,8.314 J/K molに統一して使用してほしいと思いますが・・・L atmも計算において使えるようにしといた方がいいですか? (=0.0821 L atmも覚えておいたほうが良いですか?)

化学の試験では物理定数を明記しますので,暗記する必要はありません.ただし,どの数値がどの単位系で用いられるものなのかは間違えないようにしましょう.高校化学で統一する動きは,SI単位系への統一という点では望ましいことです,しかし現実には,講義でも説明してきたとおり,歴史的経緯があってatmとtorrとmmHgとPaとか,calとJといった単位が併用されています.血圧計からmmHg表記が完全に消えるのはまだまだ先のことでしょう.そういうわけで,時と場合に応じて単位系と物理定数を使い回しできるようにしておくことは大切です.

●「そろそろドルトンですか?」の続き→今日の授業でやりましたね!! ってことはこの範囲,もちろんtest範囲ですよね?

はい.前期にやった内容が前期試験範囲,通年でやった内容が後期試験範囲です.

●何コも法則があってよくわかりませんでした・・・.公式を覚えればテストは大丈夫ですか?

公式の暗記力を問う試験はやりません.どのような問題に対してどのように対処できるようになっているべきかは,試験前の講義で解説しますので,そこを押さえましょう.

●ボイルの法則は押しているのに,なぜP(圧力)がイコールになるのですか?

イコールになるのはPではなくてPVですよ.

●ヘンリーの法則で炭酸飲料を例に話されていましたが,炭酸飲料で炭酸が抜けない方法はありますか?

フタを開けないことです(飲めない).

●気体定数とは何ですか.

理想気体の状態方程式PV=nRTにおける比例定数です.

●ドルトンの法則ってどういうときに使うのか分からないので嫌いでした.

圧力比がモル組成比になっている,という単純な法則です.ガスの分析に使えますね.

●いろいろな法則があるけれど,ごちゃごちゃにならないように一つ一つおぼえたいです.

丸暗記するのではなく,どのような場合にどのような法則が成り立つのかを確認して行きましょう.

●molとかKJとかEactとかΔHとかKとか,たくさん単位が出て来て何がなんだか,どれがどういうものを表しているのか,全然わかりません!

試験前にいちど整理しましょう.

●シャルルとボイルはギリギリおぼえてました.でもドルトンという名前はわすれてました.

●ボイルの法則,シャルルの法則,など,高校の化学でやったので理解はできましたが,実際,問題でスムーズに使えるのか不安なので練習したいです.

●たくさん法則が出て来て覚えてちゃんと使えるかとても不安です.

●コーラのガス抜けなど,身近な例を使った説明,おもしろくて分かりやすかったです.

●炭酸飲料って,どうやって二酸化炭素が溶けているんだろーって思ってたので,ヘンリーの法則はすごいと思いました.

●今日の授業を聞いてて昨年の夏にヘンリーの法則とか気体の状態方程式の問題をとにかく必死になってやっていたことを思いだしました.

●炭酸飲料の炭酸が抜けるのは圧力や溶解度が関係していたんですね.私の家ではいつも1.5 Lのコーラを買いだめしていて,開けたばかりの時はめっちゃシュワシュワしていておいしいのですが,最後の方になると炭酸がなくなってなんかシラけた味になるので,誰も飲まないまま冷蔵庫にたまって行きます(笑).それをお父さんがいつも飲んでくれています(;ω;) 今度からは500 mLを買いだめするようにしてお父さんにシラけたコーラを飲ませないようにします☆

反応速度論

反応が進むためには,エネルギー的に乗り越えなければならない「山」があります.それが活性化エネルギーEactです.反応物が生成物に変換される瞬間の状態を活性錯体もしくは遷移状態と呼びます.

反応物のポテンシャルエネルギーと,生成物のポテンシャルエネルギーとの差がΔHです.ΔHはエンタルピーと呼ばれています.ΔHが負のとき発熱反応,正のとき吸熱反応になります.

●あの図は反応速度を表しているんですか? ○◎ ←これ何ですか? 活性錯体? うーん,わからない. テストでますかねぇ

●C2H5OH+3O2→2CO2+3H2O; ΔH=-1368 KJ/mol って,どういうことが起きているのかわかりませんでした.ΔHって何ですか?

●ΔH=-1368 kJ/mol よくわかりません.グラフのどこがプラスでどこがマイナスかわかりません.

来週,化学平衡に進む前に確認の時間を取ります,そこで理解できるようになるでしょう.試験範囲ですよ.

●ΔH(エンタルピー)って何ですか?

その物質(のくみあわせ)がもっていたポテンシャルエネルギーの変化量です.

●C2H5OH+3O2=2CO2+3H2O+1368 KJと,C2H5OH+3O2→2CO2+3H2O; 1368 KJ/molの=と→ってどう違うんですか?

イコールを使った場合は,反応の前後の物質およびエネルギーが釣り合っていることが強調されます.→の場合には,その反応がどっちの方向に進むのかが強調されます.

●エタノールをもやす反応の化学方程式も全然わからなくて焦ってます.

要確認→未定係数法

●反応速度と平衡の分野は高校の時すごく苦手でした.今回,ていねいに教えてくれるので,できるようになりそうです!

次回講義終了時にはできるようになっています.

●化学平衡とか活性化エネルギーとか・・・,むずかしい.でも触媒とか大切なんだなと思った.キウイすごかった.

●反応の長さもそれぞれ違うと思った.さびが ゆっくり燃えているということに驚いた.

触媒

活性化エネルギーの低い別の反応経路に化学反応を導く物質が触媒です.触媒は化学反応によって消費されません.また,後で紹介する平衡の向きにも作用しません.

触媒の例を3点紹介しました.

(1)酸化チタン光触媒,(2)使い捨てカイロ,(3)キウイフルーツに含まれる蛋白質分解酵素.

●最後の,キウイがハムを溶かしてしまうのはすごいと思いました.豆腐とか高いタンパク質な食品でもなるんですか?

豆腐で実験してみよう.

●ゼリー,キウイとハム,すごいですね! キウイのとなりにかまぼこをおくと かまぼこが溶けるときいたんですが,ハムと同じですかね?

おなじです.

●キウイ強いですね.じゃあ,コンビニとかで売っているキウイゼリーのキウイは,チンしたやつってことですか?

そういうものも多いでしょう.加熱処理と書かれているかもしれません.

●ハムとフルーツ+アボガドからのゼリーの実験びっくりしました!!すごく!! 家族を驚かせてあげたいので,絶対家でやります!

アボガドじゃなくてキウイですよ.

●みかけのEactってどういうことですか?

Eactは触媒を使っても使わなくても同じです.それでも反応の山を越えるために必要とされるエネルギーは変わります.そのため,「見かけ上,Eactが下がった」と考えるわけです.

●酸化チタンの光触媒,便利ですね!! 知りませんでした!! キウイの実験すごくおもしろかったです。チンしたキウイゼリーやってみたいです.

先にキウイをチンして,それからゼリーを作るんですよ.先にゼリーを作ろうとしてもムリですよ.

●カイロはサビと同じようなもので,サビはゆっくりと燃えているというのはびっくりでした.

●触媒ってすごいなぁと思いました.蛋白質分解酵素の実験,びっくりしました! 今回も新しく知ることがたくさんあって楽しかったです.

●蛋白質分解酵素の実験,ためになりました.キウイ固まらないこと,初めて知りました.

●蛋白質分解酵素は生物でもずっとやってきていましたが,キウイの実験で目に見える形で理解できてよかったです.日常的なことに結びつけてあり,理解できてなかったことが少し納得できたきがします.今後もムービーたのしみにしています.

●キウイゼリーおいしそう!

●キウイゼリーおいしそうでした.今度是非作ってみようと思います.

●キウイすごかった.

●キウイゼリーをつくってみます!

●キウイフルーツとゼリーの関係おもしろかったです.

●キウイってすごいんですね.今度ぜひ家でやってみようと思います.化学って日常生活とこんなに関わりがあるんですね.とても興味深いです.

●キウイフルーツにある蛋白質分解酵素が強くてビックリした.ハムに穴を開けるほどだとは思わなかった.

●酵素の反応すごかったです.

●身体の温度が36-37℃に保たれていて,その中で様々な化学反応が起こることができるのは,酵素(触媒)のおかげだときいて,触媒のすごさに感心しました.

●触媒の説明わかりやすかったです.

表面積の効果

粉末状態は表面積が増えるため,化学的にアクティブになります.そのため,静電気や摩擦が原因で粉塵爆発を起こすことがあります.身近なところでは,インスタントラーメンをつくるときに,「火を止めてから粉スープを入れる」のは,粉スープによるコンロ上での粉塵爆発を防ぐためでもあります.

●高校のときに先生がアルミの粉で粉塵爆発をやってくれました.粉がとびちって大変でした(汗)

●粉薬って強いんですね,びっくりしました.

●ラーメンを作るときに火をつけたまま粉を入れていた気がします!! 危ない!

●ラーメンの作り方気をつけます!

●ラーメンをつくるとき,粉を入れる順序って大切なんだなと分かりました.

●ラーメンの粉を,火を止めてからいれる理由を教えてもらえて良かった.表面積が大きいので,反応速度が高く,粉じん爆発がおこる可能性があること.

全般

●記述が難しいとの話をしていましたが,やっぱ記述も出すんですよね??

記述式を難しいと考える人が多いというだけで,難しい記述式問題を出すということではありません.対策は別途説明します.

●今日の授業は私には難しすぎて,全然わかりませんでした.私は化学IIを学んでなかったので・・・.どうしたら良いですか? 化学IIを勉強しなくちゃテストとか授業とかついていけませんか?

はじめて習うところは難しく感じるものです.高校化学の勉強を始める必要はありません.

●すみません,寝ちゃいました,次は頑張ります.

●過去問とプリント嬉しいです.ありがとうございます.

●過去問,めっちゃうれしかったです!! ありがとうございます! 少し難しく感じたので家かえった復習します.

●過去問,ありがとうございます! 少しがんばれる気がしました.

●テストの過去問ありがとうございます.これで少しテストがんばれそうです.先生優しすぎます! 高校で化学IIやっていないので,これからの授業が不安です.

●テストの過去問くれるなんて,なんて優しい人だ!と思いました.ありがとうございます.

●化学IIを詳しく理解できてよかった!!

●化学IIの範囲を忘れてそうな気がするので予習してきます.

●化学IIっぽくて苦手なところです.がんばります.

●今日の授業,難しくてよくわかりませんでした.眠くなっちゃいました〜.

●高校のとき何時間もかけて習ったところが,今日の90分間で終わってしまったのでびっくりしました・・・というかテスト不安になりました(;ω;)

その他

●先生を見かけたときに声かければいいのか迷います・・・.先生は今 多くの人を教えてると思いますが,全員の顔って覚えているんですか?

覚えるよう日々努力中です.しかしタイヘンです.

●炭酸にメントス入れると爆発すると聞いたのですが,なぜですか?

通称「メントスコーラ」.メントスの表面にコーティングされた材料が触媒になって,コーラ中の二酸化炭素を気化させる,という説明があります.

●室温が下がるっていうのはどういうことですか?

室内空気のもつ運動エネルギーが低下するということです.

●水は100℃で沸騰し,水蒸気になりますが,水たまりなどが温度が100℃まで上昇しなくても乾くのは,液体と気体の混合している状態は時間が経てば全て気体になるということですか?

液体を構成する分子のもつエネルギーは一定ではなく,分布をもっています.エネルギーの高い方の分子は,液体の表面にあった場合,沸点以下の条件でも気体となって飛び出して行くことができます.そうすると,分布が崩れ,その分布が元に戻った際に,またべつの分子が高いエネルギーをもらって飛び出して行きます.これが繰り返されて,いつかはすべて気体になってしまいます.

●先生って例え話をするとき,とてもうれしそうに話しますね.楽しくなります^v^

●ついにテストがせまってきました.今まで化学は最悪な点しかとったことがないので,ここで頑張ろうと思っています^v^

●ついに今日サッカー(W杯)が復活しますね.どこが優勝すると思いますか? 自分はブラジルと予想しています.ブブゼラの仕組みをおしえてください.

●バイトがいやです(× ×)

次回予告

第9章「反応速度と化学平衡」を終わらせ,第7章「原子と放射能」に進みます.

リンク

www.tnojima.net
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