Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

看護学科の化学講義(4)原子の構造

履修登録13名,出席12名.

地デジ完全移行まで800日

本日から800日後に地上波アナログ放送が終了となり,地上波デジタル放送に完全移行することになっています.先週の講義で電磁波の各波長領域がどのような使われ方をされているか説明したところなので,本日はその補足としてVHF,UHF,そして地デジがどのあたりの周波数を使っているのかを説明しました.

コメントおよび感想の紹介とそれらへの回答

2009-5-09のエントリーに記した内容を回答しました.

接頭語の付く単位の計算方法

n(ナノ)やμ(マイクロ)といった接頭語が付く数値の取り扱いや,小数を含む数値の取り扱いについての説明リクエストをもらっていました.そこで今回は「接頭語が付き,小数を含む数値の攻略法」について2例を用いて解説しました.基本は義務教育機関中に習った「比例の計算」です.「外項の積=内項の積」を使い回すことによって,基礎化学に出てくる計算の9割はクリアできます(あとはpH計算のlog).

単位変換では比で考えれば分かりやすいのだと思った.

小数の計算について細かく教えて下さったのでよく理解することができました.

小数の説明,とても分かりやすかったです.

少なくとも3名の学生にとって役に立ったようです.今回の説明は[cal]を[J]に変換するとか,そのうちに出てくる[mmHg]を[atm]に変換するといった場面でも役に立つはずです.

原子の構造(p60)

ここは高校化学の内容を多く含みます.そこで時間を節約するために前回の講義の際に自習プリントを配布しました.今回それを回収し,そこに含まれる内容を少し速いスピードで説明して行きました.

キーワード
電子,原子核,陽子,中性子,同位体,元素記号,原子番号,質量数,原子量,原子質量単位,電子配置,エネルギー準位,エネルギー殻,電子殻,基底状態,励起状態,イオン,陽イオン(カチオン),陰イオン(アニオン),周期表,周期性,希ガス,ハロゲン,アルカリ金属,アルカリ土類金属,族,周期,典型元素,遷移元素,内部遷移元素,ランタノイド,アクチノイド,金属,非金属,メタロイド.
関連リンク
一家に一枚元素周期表

ちょっと時間が足りませんでした.続きは来週に持ち越しです.

励起状態(p73)

物質の励起状態が関わる実例として以下の3点を紹介しました.

  • サイリューム(あるいはルミライト)
  • ホタルの光
  • ルミノール反応(血痕分析)
参考サイト
http://www.lumica.co.jp/support/support_gijutu1.html

基底状態と励起状態の関係について難しそうだと思ったけれど,例を使って教えて下さったため,わかりました.

基底状態と励起状態は,もう一度教科書を読んだり,ノートを読まなければわからないです.

正反対のコメント.いずれにせよ次回,簡単に復習することにしましょう.

基底状態で,となりの殻も閉殻状態の場合でも,励起状態になるんですか?

となりの殻が閉殻になっているという状況の電子は励起できません.励起できるのはとなりの殻(移り先の殻)が空いている場合だけです.通常は最外殻の電子が励起されます.

励起状態から基底状態になるときにエネルギーはいつも光として捨てられるのでしょうか?

励起状態から基底状態に戻るとき,必ず光を発するのですか?

光は一つの方法に過ぎません.今回は身の周りの話題として光を採り上げましたが,熱に変える場合もあります.

ホタルルフェなんちゃらという物質があるのに驚きました.ホタルの体内にしか存在しないのですか?

ホタルルシフェリンはホタルの体内にしか存在しません.しかし他の発光生物の中にはこれと似た物質を持つものもあります.

基底状態と励起状態のエネルギーの差が色々なことに使われているのだなあと思いました.

今回は化学発光についてだけ例を示しましたが,他に「蛍光」という重要な現象もあります.これについては別の機会に解説する予定です.蛍光灯はその代表的な応用例です.

アルカリ金属の反応性

本当は演示実験として水槽を教室に持ち込んでナトリウムのカケラを投げ込みたいのですが,ちょっと無理なのでムービーで紹介.まずは水槽にアルカリ金属のカケラを投げ込んだときの反応を紹介したムービー.Li→Na→K→Rbと進むに連れて激しく反応するようになり,Csでは水槽が割れます.

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続いてこれをもっと派手に実験したムービーも紹介しました↓

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アルカリ金属と水を反応させるのすごかったです.ナトリウムまでしか見たことなかったんで.セシウムとかすごいですね,ぱーん.フランシウムでもぱーんってなるんですね.

ちょっと待った,フランシウム(Fr)は違います.Frは地球上に1グラムもないような微少物質なので実験した人はいません.それに放射性元素なので危険です.

世界には危険な実験をあえてする人達がいておもしろいと思いました.

実際にやって見せるというのはとても意義のあることと思います.何度も予備実験をしたことと思います.

さいごに見た映像で,かなり少量でもととても危険な物質があることがよくわかりました.

アルカリ金属が水と反応しやすいのは知っていたが,セシウムになるとあれほどすごい反応をする事は知らなかった.その反応もそうだが,実際にそれをやる人がいる,という事にも驚いた.

Naの実験は高校でやって,Naでもびっくりしたけど,Csのムービーは想像以上に爆破力が強くて驚きました.

水と反応して大爆発を起こすアルカリ金属ですが,そのしくみはアルカリ金属原子がカチオンになる変化に基づいています.たとえ目に見えないスケールであってもそこには確かに自然界が広がっていて,そこでの出来事が私たちのスケールにも大きな影響を与えるのです.

その他のコメント

金属を電子レンジであたためてはいけないことを初めて知ったので気をつけたいです.

私は電子レンジにステンレスの泡立て器を入れてしまったことがあって,火花が散ってヤバかったので本当に気をつけたい.

以上は先週の講義の際に紹介した「爆発卵」についての続きの話に対してのコメントです.電子レンジは便利な道具ですが,使い方を間違えないように気を付けましょう.

電気や電波は物質ではないのでしょうか? もし物質ならばどのような元素で構成されているのですか?

電気は「電子の流れ」,電波は「電磁波」です.物質とは違います.元素から構成されているわけではありません.

エネルギーレベルって何ですか?

別の機会に説明する予定です.

126Cの1.992×10-23 gや,1 u=1.660×10-24 gというのはテストで使ったりしますか,計算に使ったりしますか?

私の担当する化学の講義では「分子や原子のレベルから自然界に対する理解のしかた」を問う予定です.そのため,こうした数値を暗記することを求める問題は出題しません.また,複雑な計算力を試すような問題も出題しません.もしかしたら上記のような数値を用いる問題を出すかもしれませんが,その際には数値を問題内に記します.

ムービーをみればみるほど化学が好きになってます!

今後もまた何か探してきましょう.しかし教育的意義のあるムービーがそんなにあるとも限らず,ネタ切れになる恐れもあります.

次回予告

周期表の説明続きを終わらせ,教科書第4章「原子の結合」に進みます.

リンク

www.tnojima.net
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