Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

看護学科の化学講義(18)酸と塩基(2):教科書上巻おわり

水の溶解度積,pH,生体中の緩衝系,について解説しました.教科書上巻が終了しました.

前回の講義に対する感想コメントその他なんでも一括紹介

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詳細は前回の講義録参照→第17回(2009-10-09)

化学トピック:今年のノーベル化学賞「リボソーム」

リボソームの仕組み,リボソーム研究の歴史,リボソームと抗生物質と化学療法,について説明しました.

リボソームの解析たのしい! こんな風にやっと分かったんですね。高校で当たり前のように教わったリボソームが こうやってみつかったのかという。

それでもまだわかっていない点がたくさん残っているのです.

自然現象はわからないことだらけです.だからのめりこんでしまって一生を研究して過ごす人も出てくるわけです.

研究に人生を捧げられるなんてすごいですねー。すわり続けていることがまずできないので研究職に自分は向いていないと思われます。

いろいろなことに興味を持つことは良いことです.研究とはいわず,そのうちに何か一生の間夢中になるものが出てくるかもしれません.

pH

ようやくpHがでてきました.pH=log10[H+]で定義される便利な指標です*1

唾液は中性なのかーそーなのかー あの吐き気がするときに出てくるすっぱい唾液は中性じゃないですよね。あれ、胃液ですか。胃液ですね。胃液なのかー

唾液は中性(付近),胃液は酸性です.

pH苦手だったけど少しわかるようになりました!

おお,それは良かった! 苦手意識を持つほど難しいものではないのです.

高校のときからpHが嫌いでしたが、大学では分かるようになりたいです。

pHは高校化学嫌われ役top 5に必ず入っている項目のように思えます.たぶんlogが出てきて実感がわかないからだと思います.

pHをlogで表すのがよくわかりませんでした。

logを理解していないので今回の話がチンプンカンプンでした。復習がんばります!

やはり原因はpHの考え方ではなくて,logのところにあるようです.ただいまpHとlogを説明したプリントを制作中.次回かその次あたりに配布予定です*2

生き物にとってpHはとても大事だということを知りました。

そうなのです.そのために体内に体液のpHを一定の範囲内に収めるための仕組みがあるのです.それが生体の緩衝系です.

緩衝作用

身体のpHを保つ仕組みってすごいなあと思いました。

身体の機能でちょっとしたズレは調節していることに驚きました。

人間の身体の中でおきてる平衡系すごい!! 初めてこんな仕組みがあることを知った。

じつにうまくできています.呼吸とか排尿とかも関係するのですね.そして思い出してほしいのはルシャトリエの原理.ここでもこの考え方が当てはまるのです.

別科目で炭酸系のbufferのことをやりましたが、今日のせつめーの方がびっくりするほどわかりやすかったです。

複数のヒトから説明を受けると,情報が補完しあってわかりやすい,ということもあります.

緩衝系がよくわからなかった。反応式の右側からはじまるんですか?

平衡の式を書いてみた状態で,そのすべてが同時に綱引きをしていると考えてみましょう.綱引きではどちらがどちらを引いていると一方的には決められませんね.バランスを取り合っている状態だからです.平衡系も同じで,両方向矢印の両側が互いに反対側とバランスを取り合っている状態なのです.で,どこかに変化が生じたとき,その変化が別の変化を引き起こして,それがまた別のところに影響を与えて・・・,というような,「風が吹けば桶屋が儲かる」ロジックをつなげて行くのです.

好きなもん食って飲んでも身体ではケミってるから幸せ!!って上巻終わり!ってなんだか良いですね。

ちょっと待った! 食品やその代謝物のpHが中性からずれていても,生体系にはその影響を防ぐしくみがある,という話はしましたが,暴飲暴食OKとは言っておりません.

ナメクジに塩をかけた後で、水をかけるともとの大きさに戻るというのはおもしろいと思いました。やってみたいです。

塩をかけて小さく縮ませたナメクジを,水の入った空きビンか何かの中に入れておけばよいでしょうね.

その他

なんか私の知人が最近かみの毛が薄くなって困っているそうです。ケミストリーの力でなんとかしてあげてください。

いろいろな薬剤が開発されているようですが,決め手になるものはなかなか開発されていないようです.相性もあるのでしょう.なんとかするよりは,別に困るようなことではない,という考え方をする方が幸せではないでしょうか.

次回予告→有機化学

教科書下巻に進みます.有機化学の基本をやります.

有機きらいです。来週から授業でません(うそです)。

モル,濃度,pH,有機化学,というあたりが嫌われやすいようです.

が,むやみやたらと暗記を強要するような講義はしません.高校の教科書に1行で載っている代表的な反応が,「なぜそうなるのか」を説明して行こうと思っています.

もう来週から下巻なんですね!! 早いです・・

そうなんです.あと8回ですよ.

有機化学がんばります。

きっとおもしろい世界があることに気づくことでしょう.

リンク

www.tnojima.net
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*1:厳密には[H+]ではないのですが今回は細かいことは言いません.

*2:制作難航中.