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Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・野島 高彦)

看護学部の化学講義(20)放射線と放射能

看護2013

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キーワード

α線,β線,γ線,逆二乗則,結合エネルギー,原子力発電,原子爆弾,自然放射線,診療放射線,半減期,崩壊系列,崩壊速度,放射性同位体,放射線,放射能,ラジオアイソトープ

講義内容

  • 放射線を出す能力が放射能.
  • 放射能をもつ元素が放射性同位体やラジオアイソトープ.
  • 主な放射線はα線(ヘリウム-4の原子核),β線(核から放たれる電子),γ線(電磁波).
  • ラジオアイソトープは放射線を出しながら崩壊して行く.
  • 中性子をウランやプルトニウムなどの原子核に衝突させ壊すと,原子核内で粒子を結びつけるために使われていたエネルギーが放出される.このエネルギーをコントロールしながら取り出して発電機を動かすのが原子力発電,コントロールせずに反応を暴走させるのが原子爆弾.
  • 放射線をはかる尺度として,原子核の崩壊速度(Bq),物体が受けるエネルギー(Gy),人体への影響度(Sv)がある.
  • 地球上で暮らす人間は,地面,空気,食物,宇宙線などから世界平均2.4 mSv(日本は1 mSv)の放射線(自然放射線)を受けている.
  • 主な診療放射線の強度(1回あたり):全腹部CTスキャンが6.8 mSv,胸部レントゲン検査が0.2 mSv.

該当する教科書のページ

第15章,177ページから188ページ.

はじめて学ぶ化学

はじめて学ぶ化学

関連トピック

(1) 診療放射線についてくわしくは北里大学病院放射線部のサイトをチェックせよ!

具体的な数値や,技術の解説,データが揃っています.

(2) 軍拡と核兵器開発

最初に実用化された原子力エネルギーは原子力発電ではなく,原子爆弾でした.1945年7月にアメリカは世界最初の原子爆弾の実験をニューメキシコ州で成功させています.その模様はカラーフィルムに記録されています.

このときの実験に関わった物理学者が,母親に宛てた手紙では,実験の成功を報告するとともに,次のターゲットが日本であることを述べています.

僕らは皆飛んだり跳ねたり大声でわめいたりし、駆けまわって互いの肩をたたきあったり握手したりして祝いあったのです。
ただ一つ、その目標を除いては 何もかも完璧でした。次の目標はニューメキシコではなく日本です。
僕の下で働いた連中は一同広間に集まり、息をのんで僕の話を聞きました。
僕らがやり遂げたことを、一人残らず心底誇らしく思ったのです。
ひょっとすると間もなく世界大戦を終結させられるかもしれません。
-ファインマンの人生/北海道大学高等教育機能開発総合センター

この考え方は,被曝国に暮らす2013年の私たち大多数の考え方とは逆のものです.人間は立場と時代が異なれば,異なる結論を下します.2013年の日本では「核兵器は一般市民に対する無差別殺戮兵器」との考えが主流でしょう.1945年のアメリカでは「核兵器は世界大戦を終わらせるための最終兵器」との考えが不自然ではありませんでした.
この実験の翌月には広島と長崎に原子爆弾が落とされています.1952年,広島市に作られた原爆死没者慰霊碑には,「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と記されています.

しかし,その2年後,ビキニ環礁で行われた水爆実験に日本の漁船が巻き込まれ,乗組員が被曝する事故が起きています.

威力の大きな核爆弾を開発する競争は1960年代まで続いていました.次の動画は1961年にソビエト連邦が行った,人類史上最大規模の核爆発実験です.「爆弾の皇帝:ツァーリ・ボンバ」.

ここまで核開発をエスカレートさせた人類でしたが,核兵器の威力比べを続けることを選びませんでした.各国は核軍縮に努め,2009年にはオバマ大統領の「核なき世界についての理念や取り組み」に対してノーベル平和賞が与えられています.

しかし,人類はまだ核兵器を完全に廃棄していません.

(3)原子力利用の課題

電力供給は我が国の生命線です.24時間365日,電力が安定して確実に供給されなければ,私たちの社会は成り立ちません.医療機関には,人工透析装置,人工心肺装置,人工呼吸装置によって生命を維持している患者がいます.電力供給がシャットダウンすると,何十万人もの人々が即死します.
安定して電力を供給するために,日本はエネルギー源を一種類に頼らず,水力,火力,原子力などに分散する戦略をとってきました.

2010年,日本は発電量の3割を原子力でまかなっていました.しかし,2011年3月11日の震災で福島第一原子力発電所が事故を起こして以来,原子力発電所は次々と稼働停止して行きました.再稼働した発電所もありましたが,2013年10月現在,我が国の原子力発電所はすべて停止しています.節電と,工業生産力の低下,老朽化した火力発電所の再稼働で電力をまかなっているのが現状です.
原子力発電所を再稼働するのか,再稼働しないのか,しないならどのようにその分の電力をまかなうのか,事故を起こした発電所をどのように処理するのか,見通しが立っていないのが2013年10月の日本です.
原子力発電に対しては反対する人々と賛成する人々とがいます.国内には原子力発電所の誘致に積極的な自治体もあります.

原子力発電をどうするのか?
この問題に関して科学も技術も答えを教えてはくれません.なぜならば,どのように社会を運営し,未来の社会を建設して行くのかという問題に答えを出すのは,人間だからです.その答えに必要な技術と,自然界への理解を進めるのが,科学と技術の役割です.

計算問題

コメント

●放射線量の説明おもしろかったです.将来 先生みたいに患者さんに説明できるように頑張ります.
●放射線の説明をする時に数値があると相手に理解してもらえると思った.

説明できないと「何か都合が悪いから説明しないんだろゴルア!」とか言うヒトがいますからねぇ.

●今まで放射能についてよくわからなかったので知れてよかったです.将来のこととか政治のこととか考えて,深い授業でした.
●いろんな分野のものがつながって世界は成り立っているのだと思った.感慨深いです.
●満場一致って難しいなと思いました.
●放射線のことよく分かりました.
●原発の問題に興味をもちました.
●原発の仕組みと必要性がわかってよかったです.
●原発の問題は難しいですね.いろいろとニュースでやっていたベクレル,シーベルトといった単位がどういうものか知れて為になりました.あと,宇宙線を宇宙船と描き間違えて写してました.さっき気づきました.

●未来は自分で考えるものというのが心に響きました.

未来に対して悲観的にならなくても良いという根拠の一つは,未来の社会を建設することに関わる余地が残されている,という事実です.

●不謹慎かもしれないけれど核爆弾の王様,すっごい綺麗だったなぁ

半世紀前に実際にこの星の上で行われた爆発実験だという点を知らなければ色鮮やかでまぶしく美しい映像に見えるかもしれません.

●とくにありません.
●先生ータスケテ
●来週もがんばります.

●兄が先生の書いた参考書を使ってました.先生のことは知らず,気づいたら使っていました☆

それはうれしい!
おかげさまで国内の医療系学部の化学教科書としていくつかの大学で採択していただいております.

●有機化学がんばります.
●有機苦手なのでがんばります!
●有機化学嫌いです.
キライでもやるの!

●娘さんが彼氏つれてきたらどーしますか?

そういうことは無いものとして日々過ごしています.

出席者数推移

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次回予告と予習内容

「(20)有機化合物の世界+アルカン」を学びます.配布物で予習してくること.

後期試験に出題する有機化合物一覧も配付しました.

有機化合物一覧はTwitterにボットをつくりました.

このブログを書いている人

*1:画像出典:フリーメディカルイラスト図鑑 http://medical.i-illust.com/image_1888.htm