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Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・野島 高彦)

物理量を身体で理解しよう

科学でも工学でもイロイロな「量」を扱います.「長さ」とか「重さ」とか「熱さ」とか「速さ」とか.そういった量が「どれくらいのものなのか」を理解するとき,アタマだけではなくて身体で実感することが,科学でも工学でも大切なんですが,これは日頃から意識していないと難しいことです.

おまえはペットボトルの中で泳ぐのか

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「液体の温度を上げるために必要な熱エネルギー」は,私が化学の定期試験でたびたび使ってきたネタの一つです.ある年,「メタンガスを燃やしたときに得られる熱を使って温水プールの水温を上げる」場面を想定した計算問題を出したことがあります.

こうした問題では最初にプールの中の水の質量を求めておく必要があります.たとえば25.0 mのプールで幅が10.0 m,平均水深が1.50 mだったとすると,

(25.0 m)(10.0 m)(1.50 m)= 375 m3

という体積が得られるので,この質量が375×103 kgっていうことがわかります.

ところが,ココで桁の計算を間違って,プールの水の質量を375 kgとか375 gなどとしている答案が何枚も出て来るのです.

375 kgならしょうがないとして(しょうがなくないけど),375 gのプールって,おいおい,自販機で買ってるペットボトル入りのウーロン茶よりも軽いじゃないか.あれ,500 gだぞ.おまえはそんな小さなプールで泳ぐのか?

計算していて「375 g」という量が出てきたとき,それが具体的にどれくらいの重さなのかを感じていれば,計算を誤ったことがわかるのですが,機械的に計算だけ進めているとこういうヘンなことになっちゃうのです.

計算で求めた量を身体で感じることは大切です.

おまえの家では100 ℃で水が沸騰しないのか

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同じような問題で,ヤカンの中の水に熱を加えたとき,水温は何℃になるか? という問題を出したことがあります.「水は100 ℃で沸騰する」っていうことは小学生でも知っていることなので,計算結果は100 ℃以下になることが予想されます.

それなのに6500 ℃とか,マイナス27 ℃とか,どこをどう計算したらそうなるのか理解不能な答案がチラホラ.計算してみてヘンだって気付かないのかと.おまえの家ではヤカンをコンロにかけると6500 ℃なんていう温度になっちゃうのかと.なんで温めてるのに氷点下になるのかと.

「いま自分は何を計算しているのか?」っていうことを考えないと,明らかに誤っている答えが出てきても気付かないのです.

複数の物理量が組み合わさってると複雑に感じる思い込み

「密度」とか「比熱」とかが出て来るとイヤな顔をするヒトがいます.「重さと体積」とか「エネルギーと温度」みたいに,複数の物理量の比になっていると実感できないからイヤなのです.「そうだろう?」ってきくと,「そうですそうです」っていう答えが返ってきます.

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コレには例外があって,「速度」がどんな物理量なのかわかんないというヒトはいません.「速度」は「距離と時間」の関係なわけですが,これまでに何度も「スピードメーター」を見たことがあるので,抵抗なく理解できるのでしょう.複数の物理量の比が理解しにくいとは限らなくて,それよりは経験したことがあるかないかの方が重要なのです.

ただし,密度とか比熱ってのを実感させる良い方法が見つからず,ただいまネタ探し中.

リアルな説明をしよう

そういうわけで,何か物理量を説明するときには,イメージできる身近な例を引っ張り出してくることにしています.1 gは1円玉1個,とか,冷蔵庫内の温度が約5 ℃とか,自転車のタイヤの内圧が2 atmから3 atmあたりとか,大腸菌のサイズがだいたい1 マイクロメートルとか.

それから,日頃からモノに触れたりモノを見たりしたときには,ソレの大きさとか重さとか温度とかを推測する習慣を身に付けろと言ってるんですが,意識して生きてるヒトは少数派でしょうね.

物理量をリアルにとらえる感覚を大学1年生に与える良い方法,募集中.


関連リンク


計算問題では現実的に可能な答えかどうかをチェックしよう - 大学1年生の化学(北里大学・野島高彦)

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