北里大学に来る前,2006年5月から2009年3月までの約3年間,東京大学生産技術研究所,略して東大生研,で助教やってました.
このとき上司だった 藤井輝夫教授 が今年度から東大生研の所長に就任されたので,今夜は関係者数名でそのお祝いをしました.
集まったのは藤井研究室で一度は大学院生とか研究員とか教員とかだった人々.いまはそれぞれ東大生研から転出して別の大学とか研究機関とかでそれぞれの仕事をしています.それから,私も含めて全員が現在も東大生研の研究員*1を兼務しています.
場所は目黒区東山の 和韓・石鍋 若狭.
この人々といっしょに進めた研究はこれまでに以下のようなかたちで論文になっています.
- Nojima et al., Chemistry Letters 36, 1346-1347, November 2007
- Yamamoto et al., Analytical Sciences 24, 243-246, February 2008
- Nojima et al., Chemistry Letters 37, 648-649, June 2008
- Nojima et al., Chemical Communications 32, 3771-3773, June 2008
- Arata et al., Lab on a Chip 8, 1436-1440, August 2008
- Kaneda et al., Electrophoresis 31, 3719-3726, October 2010
- Kaneda et al., International Journal of Molecular Sciences 12, 4271-4281, July 2011
- Kaneda et al., Analytical Sciences 28, 39-44, January 2012
- Nojima et al., Frontiers in Bioscience 17, 1931-1939, January 1, 2012
あの日々の意味
27才で大学院博士課程を修了して,これまでイロイロなところで仕事をしてきて,
.@SciCafeShizuoka 野島高彦准教授(46)は住居や職業を転々としながら(理研⇒JST⇒早大⇒九大⇒東大⇒北里大)行く先々でトラブルを起こしていた.昨年は大量の枯葉でヤキイモをやり校舎を煙に包みボヤ勘違い騒ぎを起こすなど無軌道ともいえる生活ぶりが浮かび上がっている.
— 野島高彦 Takahiko NOJIMA (@TakahikoNojima) 2014, 9月 26
それぞれの場所が階段の一段一段のように積み重なっていて意味を持っているのですが,東大生研で過ごした日々は,今とは違ったかたちで高密度な日々で,おそらくこの人生で,自ら立案し,自ら競争的研究資金を獲得し,自ら研究を進めることに最も多くの時間を費やすことが可能だった,最後の日々でした.
化学系が私ひとりで,あとは電気工学とか機械工学とか造船学とか農学とか応用物理学とか情報工学とかの出身で,そういう人々がそれぞれの経験と技術に基づいて細胞であったり分子であったりをターゲットにイロイロな角度から研究を進める,という状況でした.
研究室を構成していたのも日本人だけでなく,フランス人とか韓国人とか,あとどこだか忘れちゃったけど私が行ったことのない国から日本に興味を持ってやって来た人々で,こういうのこそ グローバル化 であって,週に15回の授業をやるために海の日を潰すのは
研究を始めて日が浅い学生が酸廃液タンクをオーバーフローさせちゃったときには私が重曹を撒いて,ええ,そうです,そういうときに化学系の人が便利に使われる感謝されるんですよ.「強酸には強塩基じゃなくて弱酸強塩基塩を使ってアレするのだ!」ということを,日本人の私がフランス人に英語で説明するわけですモップ片手に.正確な発音とか正しい前置詞がどうのこうのとか言ってないで目の前の廃液をどうにかするのがグローバル化.
研究室で研究所の敷地内でBBQをやったことがあって,家族連れで集まろうってことになって,そのころ大学院博士課程に在学していた学生がイヌを連れてきていて,ソレがキッカケとなって娘が「イヌイヌイヌイヌ飼いたいぜんぶ自分たちで面倒みるからイヌ飼ってもいいでしょ!?」ってなって,我が家でもイヌを飼うことになったというような面でも東大生研での日々が現在に影響しています.
じぶんでやらなくてもいいことは やらない
3年をメドに転出することを前提に東大生研で働き始めたので,その3年間の持ち時間をどうするのかっていうことをよく考えました.マイクロ流体工学の装置づくりとか,小型分析装置の回路設計とか,培養細胞の取り扱いとか,私が手にしていない技術を習得するために一定の時間を割り当てることも考えましたが,そういうことはやらないことにしました.
新しい技術を身に付けることはとてもエキサイティングだし人生の可能性を広げる良い機会でもあるのですが,すでに誰かが到達しているレベルまで自分自身が到達するまでには一定の時間が必要だし,それは手段であって目的ではないのだから,私は自分でアイデアを出して,必要な技術については共同研究という形をとることにしました.
「それは持ち時間をもっとも有効に使う計画なのか?」っていうことを意識して生きるようになったのは,おそらくこの時期です.人生は有限だしね.
コレが変化して行くと「適当にアレしといてくれない?」っていう丸投げに
御礼
というわけで,東大生研で研究をする機会を与えられたこの人生はステキなものだと思っているし,公私ともにお世話になった藤井先生に感謝しているし,エキサイティングな3年間をともに過ごした藤井研究室とその周辺の人々に感謝しています.
藤井先生,生研所長就任おめでとうございます.
東大駒場リサーチキャンパス公開
毎年6月上旬には生産技術研究所と先端技術研究所のある東大駒場リサーチキャンパスの一般公開があって,今年(2015年)は6月5日(土)と6日(日)の2日間です.「世の中にはこういう課題があって,こういう方法の取り組み方があって,それに取り組んでいるこういう人々がいる!」っていうのを知るとても良い機会なので,理系大学生に限らずありとあらゆる人々にこのイベントをおすすめします.
このブログを書いている人
*1:東大生研の各種インフラを利用する権利を与えられている無報酬の立場.