1 なんでlogなどという面倒な考え方をするのでしょうか?
なんでlogなどという面倒な考え方をするのでしょうか?
それは,そういう数値の取り扱いをしないと非常に不便な場合があるからです.
小学校以来見慣れている,「横軸に1, 2, 3,・・・, 縦軸にも1, 2, 3,・・・, という感じに目盛りを振ってあるグラフ用紙」を使って,何か観察データをプロットすることを考えてみましょう.
よくあるのは,たとえば,次のようなグラフです.
もしも世の中のすべての現象がこのタイプのグラフに記入できるのであれば困ったことにはならないわけですが,実際には「横軸に1, 2, 3,・・・」と振られている目盛りに対して,「1, 2, 3, ・・・」という具合にではなく,「10, 100, 1000, ・・・」という数値が対応する関係もあります.
これを上述のグラフに記載すると,次ようになり,困った事態になっちゃいます.
そこで,縦軸に目盛りを振る際に別のやりかたを考えなければならなくなるわけです.
たとえば,次のように書いてみるとわかりやすくなるんじゃないでしょうか?
これはこれでいいんですが,縦軸が10, 100, 1000, 10 000,・・・, という具合にインフレを起こしてしまってるし,こういうのをいちいち書くのは面倒だし,ゼロの数を間違えやすくなるし,アレですね.
そこでこれを次のように指数で書き換えてみることにします.
こうすると見やすくなりましたね.
しかし,いちいち10の肩に小さな数字を書くのは面倒だし,文字が小さいのは読みにくくてイヤです.
そこで,縦軸をyからlog10yに書き換えます.
これでまたさらに見やすくなりました.これでOK.
さて,ここで,どういう書き換えをやったのか振り返ってみます.
たとえば10 000(いちまん)に対しては,
y = 10 000 → y = 104 → log10y = 4
というようなことをやったのでした.
これを一般化して考えると,
y = 10a → log10y = a
となるわけです.
なお,ここでlog10yは単にlog yと書かれる場合があります.
医療系,生物系,化学系,あたりでは,何も書いてなかった場合には小さく「10」と書いてあるものとみなしてOK.
2 なんでpHなどという面倒な考え方をするのでしょうか?
水溶液中の水素イオン濃度,すなわち[H+]は,細胞や生体分子の働きに大きく影響します.それで,[H+]に注意しながら検査や実験を進める必要があります.
ここで,様々な反応(例えば細胞の活性とか酵素反応の効率とか薬品の効き具合)が,[H+]の100倍,1000倍,10 000倍といった変化に対して2倍,3倍,4倍と変化することがあります.
これをグラフにすると,たとえば次のようになります.
ここでは,[H+] = 0.000 000 1 mol L-1 = 10-7 mol L-1のあたりを横軸に取ってあります.これは,中性の水でこうなっているからです.
この場合も,横軸にゼロが並んでわかりにくいので,指数表示に切り替えます.
さらに,10のなんとか乗という表示は見づらいので,10の肩に乗っかっている数だけで表すことにします.これは,横軸をlog10[H+]で表したことになります.
さらにさらに,毎回マイナスの数を扱うは面倒なので,符号を反転させて表示すると記入が楽ちんですね.
さらにさらにさらに,-log10[H+]などと毎回毎回書くのは面倒なので,-log10[H+] = pH と書くことにしたわけです*1.
なお,「y = 10aはlog10y = a」なので,
[H+] = 10-pH ⇔ pH = -log10[H+]
という関係がなりたっています.
以上は,logとかpHといった記述方法があると,いかに便利かという視点からの,結構テキトーな説明です.
● 高校数学 logの復習
y = ax ⇔ x = logay
logaA + logaB = loga(AB)
logaA - loga B = loga(A/B)
logaa = 1
loga1 = 0
log aAb = b logaA
● 注意
ここに書かれている内容を理解できない場合は,かならず,学習サポートセンター(ASC) の化学担当チューターから指導を受けること.指数・対数は,医療に関する専門科目においても使用されます.pHもね.
● このブログを書いている人
● もう一つのブログ
【PR】このブログを書いてる人の著書
在学中 or 勤務先の図書館に蔵書購入リクエストしていただけると超うれしいです☆
誰も教えてくれなかった実験ノートの書き方 (研究を成功させるための秘訣)
- 作者: 野島高彦
- 出版社/メーカー: 化学同人
- 発売日: 2017/07/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (1件) を見る
- 作者: 野島高彦
- 出版社/メーカー: 化学同人
- 発売日: 2012/04/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (4件) を見る
*1:厳密には活量を使うんだけど,講義内容からハズれるのでここでは省略.