外科手術の麻酔薬として使われていたジエチルエーテルは,酸素を含む有機化合物の1つです*1.
キーワード
アルコール,アルデヒド,1価アルコール,エーテル,エノール形,カルボニル化合物,カルボニル基,カルボン酸,共鳴,ケト-エノール互変異性,ケト形,ケトン,ザイツェフ則,3価アルコール,主生成物,第一級アルコール,第三級アルコール,第二級アルコール,2価アルコール,発酵,フェノール類,副生成物,分子内脱水,ヘミアセタール
講義内容要約
- 酸素を含む有機化合物の構造パターン6種類のうち5種類の紹介:アルコール,エーテル,アルデヒド,ケトン,カルボン酸
- アルコールの価数と級数
- フェノール類:アルコール類の中に含まれる別グループ
- アルコールの製造方法:メタノールはCOとH2から,酒用エタノールは発酵,工業用エタノールおよびその他のアルコールはアルケンに水付加
- アルコールの分子内脱水とザイツェフ則
- 主生成物と副生成物
- アルコールの酸化:第一級と第二級で異なる
- 共鳴の概念:カルボニル基の場合
- ケト-エノール互変異性:ビニルアルコールとアセトアルデヒドの場合
- ヘミアセタールの生成
酸素を含む有機化合物に関連したトピック
麻酔が無かった時代の外科手術:ジエチルエーテル
世界初の全身麻酔手術の成功例とされているのは,1804年10月13日に日本人外科医 華岡青洲(はなおか せいしゅう)によっておこなわれた乳がん切除手術です.この日を記念して,我が国では10月13日が麻酔の日となっています.このとき麻酔には秘伝の薬が使われました.そのレシピは不明です.
アメリカでは1842年にクロウフォード・ロング医師がジエチルエーテルを麻酔薬に用いて腫瘍除去手術に成功しています.また,1846年に歯科医師ウィリアム・モートンが外科医とともに公開外科手術をおこなっています.そのため,モートンは「麻酔の父」とよばれています.
世界史を変えた有機化合物:アセトン
第一次世界大戦中,アセトンは貴重な軍需物資でした.爆薬を製造するためにはアセトンが大量に必要だったからです.しかし,当時の技術ではアセトンを大量に製造することができませんでした.この要請に応えたのがイギリスのユダヤ人化学者ヴァイツマンでした.彼はバクテリアを用いる発酵技術によってアセトンを安価に大量生産可能としました.その見返りに彼が大英帝国から受け取った報酬は,母国建設のための土地でした.この土地が現在のイスラエルとなり,彼はその初代大統領を務めました.アセトンは世界史を変えた有機化合物の一つです.
確認問題+自宅学習資料
質問
- マルコフニコフ則は二重結合の炭素を骨格に持つアルケンのみでなく,他の不飽和結合(三重)にも適用できますか?
できます.
- また,ザイツェフ則はアルコール等に酸を加えた時の分子内脱水の法則という認識で大丈夫ですか?
アルコールからの脱水に限らず,ハロゲン化アルキルからの脱HClとか脱HBrとかでも同じように考えてOKです.
- ヴァイツマンはドイツ系の人ですか?
ユダヤ系の人.Wikipedia→ ハイム・ヴァイツマン
- 戦争って化学者 vs 化学者みたいなもんですかね.
そういう面もある.化学に限らず科学と,さらに数学,工学の総力戦.
- ツイッター,フォローしてもいいですか?
どうぞ.
コメント
- 高校の生物のハエの遺伝の長期実験でエーテル使いました.量が重要なので慣れるまで大変でした.
- 遊んでいた薬を医療に使おうと思う発想がすごいなと思いました.
- 先生髪切りました?
- 髪切りましたね
- 有機わすれててびっくり.
- 高校時代に覚えたのを忘れている所もあったので,しっかり復習しておきたい.
- 有機頑張ります.
- 名前順,最後の方って嫌な事ばっかりです.最近 寒くなってきましたね.
- しっかり復習します.
- やばいです.
出席者数推移
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— 野島 高彦【化学】 (@TakahikoNojima) 2018年10月17日
次回予告
www.tnojima.net
「(23)酸素を含む有機化合物その2」を学びます.2回に分けて学ぶ2回目.高校化学で学ぶ範囲を超えた内容も扱います.配布物で予習してくること.
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