Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

医療工学科の化学講義(22)酸素を含む有機化合物その1

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酵母を使ったアルコール飲料製造は,おそらく人類最初のバイオテクノロジー.

キーワード

アルコール,アルデヒド,一価アルコール,エーテル,エノール形,カルボニル化合物,カルボニル基,カルボン酸,共鳴,ケト-エノール平衡,ケト形,ケトン,ザイツェフ則,三価アルコール,主生成物,第一級アルコール,第三級アルコール,第二級アルコール,多価アルコール,二価アルコール,発酵,副生成物,フェノール類

事前配布資料

前回の講義終了時に予習用の資料を配付しました.コレがテキストになってます.

講義内容要約

  • 酸素を含む有機化合物の構造パターン6種類のうち5種類の紹介:アルコールR-OH,エーテルR-O-R',アルデヒドR-CHO,ケトンR-(C=O)-R',カルボン酸R-COOH
  • アルコールの価数と級数
  • フェノール類は別に考える
  • アルコールの製造方法:メタノールはCOとH2から,酒用エタノールは発酵,工業用エタノールおよびその他のアルコールはアルケンに水付加
  • アルコールの反応:分子内脱水,酸化
  • ザイツェフ則
  • ビニルアルコールとアセトアルデヒドのケト-エノール平衡
  • カルボニル基の共鳴

関連トピック

麻酔が無かった時代の外科手術:ジエチルエーテル

世界初の全身麻酔手術の成功例とされているのは,1804年10月13日に日本人外科医 華岡青洲(はなおか せいしゅう)によっておこなわれた乳がん切除手術です.この日を記念して,我が国では10月13日が麻酔の日となっています.このとき麻酔には秘伝の薬が使われました.そのレシピは不明です.
アメリカでは1842年にクロウフォード・ロング医師がジエチルエーテルを麻酔薬に用いて腫瘍除去手術に成功しています.また,1846年に歯科医師ウィリアム・モートンが外科医とともに公開外科手術をおこなっています.そのため,モートンは「麻酔の父」とよばれています.

世界史を変えた有機化合物:アセトン

第一次世界大戦中,アセトンは貴重な軍需物資でした.爆薬を製造するためにはアセトンが大量に必要だったからです.しかし,当時の技術ではアセトンを大量に製造することができませんでした.この要請に応えたのがイギリスのユダヤ人化学者ヴァイツマンでした.彼はバクテリアを用いる発酵技術によってアセトンを安価に大量生産可能としました.その見返りに彼が大英帝国から受け取った報酬は,母国建設のための土地でした.この土地が現在のイスラエルとなり,彼はその初代大統領を務めました.アセトンは世界史を変えた有機化合物の一つです.

確認問題+自宅学習資料

質問

  • ギ酸は今は蟻酸と書かない方がいいんですか?

書いてもOK.

  • 来週の化学実験で用意しておくものはありますか?

掲示板確認

  • 第一次世界大戦でTNTは使われなかったのですか?

TNTも使われてる.ニトログリセリンも使われてる.それぞれどの程度の割合だったのかは知らん.

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「ベンゼン環を含む有機化合物」に回でソレやります.

  • 今までに先生が受け持った授業で最も出席者が少なかった時の人数は?

履修登録者の出席割合で5割を切ったことあり.

  • CEとNの合コンがむりなら,CEとNとの合同勉強は開いてくれるのですか?

そういうのは自分でどうにか

コメント

  • 実は僕HCOOHを出せます.
  • イスラエルの初代大統領が研究者だったことはおどろきでした.ケトン大好き!!!かわいい!!!
  • 土地をもらって国を作るってすごい.
  • アセトンが戦争に使われていて何か悲しかった.
  • 面白い
  • たくさんの化合物があり,複雑に感じるが,面白いとも思う.
  • ケト-エノール互変異性や共鳴についてよく理解できたのでよかった.
  • 覚えることがたくさんあるのでしっかり構造や名前を復習しておきたいです.
  • 分類だけでもおぼえるものが多くて大変です.
  • 覚えることが多くて・・・.大変です.
  • 暗記します!
  • ふくしゅうします
  • 復習がんばります.
  • たくさんあるので覚えていきます.
  • 覚えることが多くて大変.
  • 有機化合物は化合物1つ1つを覚えることが必要だと思うけど,ある程度仕組みで理解できる部分もあるのかなと思った.
  • 有機化合物はすばらしい.
  • むずかしいですね...
  • むずい
  • 高校の復習でした.
  • ナツカシイネ
  • わかんないーーー
  • ちゃんと復習しないとと思った.
  • 最近寒くなってきましたね.
  • 雨でせんたくものが・・・せっかく晴れたので明日からがんばります.
  • 雨続きの中,あの水曜に晴れ.嬉しい.
  • 久々に晴れて嬉しい.
  • 今日の朝ごはんはウィダーinゼリー
  • カゼで鼻水が止まりません〜.
  • 冬すこ.
  • 今日はまじめにうけれた
  • 最近おきれなくなってきました
  • 今日は全部おきれた! 来週もこの感じで頑張る.
  • 今日は寝坊しませんでした.
  • 眠いです
  • 頑張って覚えます.
  • ベンゼン環のハンコがamazonで売ってたのでほしいです.書くのめんどくさいです.

コレだな↓

出席者数推移

次回予告

「(23)酸素を含む有機化合物その2」を学びます.2回に分けて学ぶ2回目.配布物で予習してくること.

www.tnojima.net

参考書籍

炭素文明論 「元素の王者」が歴史を動かす (新潮選書)

炭素文明論 「元素の王者」が歴史を動かす (新潮選書)

↑『第8章 人類最大の友となった物質 エタノール』
新化学読本―化ける、変わるを学ぶ

新化学読本―化ける、変わるを学ぶ

↑『第3章 生命の水-アルコール』,『第4章 イスラエルを建国した化合物-アセトン』,『第5章 手術の道をひらいた麻酔薬-エーテル』
マクマリー有機化学(中)

マクマリー有機化学(中)

  • 作者: John McMurry,伊東二,児玉三明,荻野敏夫,深澤義正,通元夫
  • 出版社/メーカー: 東京化学同人
  • 発売日: 2013/02/12
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
↑『17 アルコールとフェノール』,『カルボニル化合物の予習』,『20 カルボン酸とニトリル』
有機電子論解説―有機化学の基礎

有機電子論解説―有機化学の基礎

↑『9章 脱離反応』,『10章 カルボニル基の反応』,『13章 脂肪族の転位反応』

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もう一つのブログ

www.takahikonojima.net