Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

医療工学科の化学講義(21)有機化合物の世界

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キーワード

アルカン,異性体,エナンチオマー,環状アルカン,官能基,軽油,原油,構造異性体,残油,ジアステレオマー,示性式,重油,石油,石油化学基礎製品,石油ガス,脱離反応,置換反応,直鎖アルカン,転位反応,灯油,ナフサ,付加反応,不斉炭素原子,メソ化合物,立体異性体

今回でてきた有機化合物で,構造と名前を覚えておかなければならないもの

エタノール,エタン,エチレン,オクタン,酢酸エチル,m-キシレン,o-キシレン,p-キシレン,クロロメタン,ジエチルエーテル,シクロヘキサン,ジクロロメタン(塩化メチレン),テトラクロロメタン(四塩化炭素),トリクロロメタン(クロロホルム),トルエン,1,3-ブタジエン,ブタン,1-プロパノール,プロパン,プロピレン,ヘキサン,ヘプタン,ベンゼン,ペンタン,ポリエチレン,メタン

事前配布資料

前回の講義終了時に予習用の資料を配付しました.

講義内容要約

  • Cを含む化合物が有機化合物.でもCO2とかNaCNとかは含めない.
  • 種類は多い:一億種類以上ある.
  • 構成元素の種類は少ない:C,H,O,Nがメインで,他にS,P,ハロゲン,その他がたまに出て来る.
  • 基本骨格はCとHで,ここにイロイロな官能基が付いて構造バリエーションを広げる.
  • 有機化学の反応パターンは4種類だけ:付加,脱離,置換,転位.
  • 分子の描き方いろいろ:折れ線を使って描くと便利
  • 構造異性体と立体異性体,エナンチオマーとジアステレオマーとメソ体.
  • 人間の身体は立体異性体を見わける:グルタミン酸,リモネン,サリドマイドなど.
  • アルカンいろいろ.炭素数が増えるに従って常温常圧で気体→液体→固体と変わって行く.
  • アルカンの置換反応のしくみ.
  • 石油化学工業のしくみ:油田から出発して身のまわりのさまざまなモノになるまでの道のり.

質問とコメント

薬を飲むと眠くなるのはなぜですか.

おおざっぱな説明: 身体の中では同じ化合物が複数箇所で異なる用途に使い回されているところがあって,アレルギー関係と神経伝達関係の両方で共通使用されている化合物もあります.風邪薬の中に含まれている成分の一つが,この化合物のジャマをすることによってアレルギー症状を和らげるのですが,同時に神経伝達にも影響を与えるので判断力に影響が出てきて眠く感じるのです.

「最近,寒くなったね」と友達に言うと「長野の方が寒いだろ.」と言われます.経緯的にはほぼ同じなのになぜそれほどの偏見があるのでしょう?

天気予報をみると長野のほうが最低気温が低くないですか?

高校生のときとは違った名前のものが増えた気がします.早めに暗記を始めて対策します.

高校の化学にはイロイロと変な用語があるので戸惑うかもしれません.たとえば→ 「光学異性体」をやめよう/小倉協三(2013),生化学,Vol. 85,p59

石油がなくなったら現代生活が崩壊することがよく分かった.日本は軍・自衛隊アレルギーが強いが,この人らのおかげで暮らしていけるのだと思った.

石油の供給ルートを守るために日本国はさまざまな取り組みを続けています.具体的にどのようなものごとが驚異となっているのか,どのように対処しているのか,詳しい情報が公開されています.

出席者数推移

(1)91→(2)90→(3)86→(4)85→(5)83→(6)83→(7)84→(8)78→(9)77→(10)74→
(11)80→(12)71→(13)83→(14)78→
(16)73→(17)63→(18)58→(19)59→(20)61→(21)62

次回予告と予習内容

「(22)アルケンとアルキン」を学びます.医療現場で用いられる様々な化合物の工業合成法とそのしくみ,身の周りの樹脂や繊維の原料の多くを占める「ビニル系ポリマー」や,電気を通す有機化合物について学びます.配布物で予習してくること.予習してこないと恐らく付いて来られません.高校の教科書には載っていない内容が多く出てきます.

後期試験では有機化合物も出題対象になりますが,どこまで覚えておけば良いかの基準として最大100個に限定します.その一覧を配布しました.

有機化学のSNS/web連動企画

参考図書

有機電子論解説―有機化学の基礎

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↑22章『遊離基の反応』
マクマリー有機化学(上)

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  • 作者: John McMurry,伊東二,児玉三明,荻野敏夫,深澤義正,通元夫
  • 出版社/メーカー: 東京化学同人
  • 発売日: 2013/01/22
  • メディア: 単行本
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↑3章『有機化合物: アルカンとその立体化学』,5章『四面体中心における立体化学』
炭素文明論 「元素の王者」が歴史を動かす (新潮選書)

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↑第11章『史上最強のエネルギー ー 石油』
図解でわかる 有機化学のしくみ

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↑第5章『「鏡の国」の立体化学』