Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

看護学部の化学講義(11)気体の性質

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キーワード

圧力,気体定数,全圧,大気圧,力,分圧,分圧の法則,ヘンリーの法則,ボイル-シャルルの法則,理想気体,理想気体の状態方程式

講義内容の要約

  • 力と圧力は別の物理量.力/面積が圧力.
  • 圧力をあらわす単位イロイロ:Pa, atm, mmHg, bar
  • ボイルの法則,シャルルの法則,ボイル-シャルルの法則
  • 理想気体の状態方程式 PV=nRT
  • 分圧の法則←物質量の比は分圧の比に等しい.
  • 人体との関わり(1):肺,組織,静脈中における酸素分圧と二酸化炭素分圧の変化.
  • ヘンリーの法則←圧力を高くすれば気体がたくさん溶解する.
  • 人体との関わり(2):スキューバダイビングやるときは潜水病に注意.

該当する教科書のページ

第9章「気体の性質」,101ページから110ページ.

はじめて学ぶ化学

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トピック

1 潜水動物が潜水病にならないしくみ

深海では肺を縮小させて肺の中の空気を気管支に逃がしているためです.昨年の夏にアメリカの研究グループが,血中酸素濃度モニターをアシカに取り付けて,潜水と浮上に伴う血中酸素濃度の変化を測定しました.その結果,水深225 m付近で肺を縮ませ,空気を取り込まないようにしていることがわかりました.

Birgitte I. McDonald* and Paul J. Ponganis, 2012, "Lung collapse in the diving sea lion: hold the nitrogen and save the oxygen", Biology Letters, doi:10.1098/rsbl.2012.0743

和文解説記事→ アシカの潜水病を防ぐメカニズムを解明、米研究/AFP BB News(2012-09-21)

2 風船と加圧減圧装置

3 mmH2O

大気圧下,水銀柱は760 mmまで上昇.水だと約10 m,航空機用軽油だと約16 mまで上昇.普段意識していない大気圧には,それだけの大きさがあるのです.

4 真空中に放り出されたら?

『気を失う直前,舌の上の唾液が蒸発泡になるのを感じた』

5 身の回りの圧力イロイロ

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タイヤが1.8 atmから2.5 atm,圧力鍋が2 atmから2.5 atm,炭酸飲料の炭酸ガスが3.5 atmから4.5 atm.ヒール先端の面積1 cm2のハイヒールを履いた体重40 kgの人に足を踏まれると39 atm.

確認問題

計算問題→気体の体積を計算する問題

出席者の声:みんなはこういうことを考えている/感じている/知りたいと思っている

●圧力の関係が分かりやすかったです.呼吸のしくみと同じでしょうか.

呼吸は炭酸緩衝系も関係しているので「同じ」とは言い切れません.

●高い所に行くと耳が変になるのは大気圧が関係するのですか?

関係します.体内の圧力の方が相対的に高くなるのです.

●圧力を測ろうとした人がなぜ水銀を使おうとしたのか不思議でした(水や他の液体でも計れるのに危ない水銀を使おうとしたのか).

適当な高さの柱ができる液体ってなると,他に選択肢がなかったんでしょうね.

●炭酸飲料をふったら炭酸が抜けるというのはなぜですか?

外部の圧力が下がっても,それに見合った量の気体を追い出すには時間がかかります.それを機械的衝撃で加速するのです(おおざっぱな説明).

●いろいろな単位がまた出てきたからむずかしい.高山病は何の法則ですか? やはり単位変換わかんない.

高山病は酸素不足です.山登りをすると空気の圧力が下がるのです.でも酸素の含有率は変わらないので,酸素の量は地上より減るのです.

●ボイル-シャルルの公式なつかしい.公式を使いこなして早く正確に問題を解いて行きたいです.
●ボイル-シャルルの法則を高校でやったけどすっかり忘れてました.計算すらすらできるように復習します.
●ボイル-シャルルの法則を理解すればとても楽にこのような計算ができるようになると思うのでテストまでに頑張ります.
●計算が難しいです.もっとすらすらとけるように頑張ります.
●むずかしかったです.家で勉強します.
●ここの分野苦手です.がんばって復習します!
●むずかしかったです.
●計算大変でした・・・.
●むずかしい・・・.復習して頑張ります!
●計算むずいです.
●高校の時に学習したはずなのに忘れていました.
●この計算は苦手で高校のときはほぼ諦めてました.でも,やり方をなんとなくつかめた気がする.
●計算難しかった.潜水艦に乗ってる知り合いがいるので,あの治療の機械に入ったことあるかきいてみようと思いました笑
●今までで一番むずかしいと感じた計算でした.練習問題たくさん解きたい!
●気体の体積の計算,難しかったです.ケルビンとか一つ一つやってがんばって答えだしたいです.
●1つ1つ単位を考えて求めたいものに近づけていくとわかりやすかった! 有効数字も気をつけないと,と思いました.
●計算がややこしい.
●なかなか単位がいっぱい出てきて大変です! 時間かかっちゃいます.
●計算難しい! しっかりと復習が必要だと思った.身の回りのものの気圧について見方がかわった気がする.コーラの炭酸がぬけるしくみがわかっておもしろかった.
●m3→Lの換算が不安だったのできちんと復習したい.
●とてもむずかしいです.テストまでにはちゃんとマスターします.まっててください.
●むずかしかったけど予習のおかげでけっこう出来た.
●自分が何をやっているのか自覚していないと頭がこんがらがりそうです.
●身近なものの圧力がわかって,ペットボトル(炭酸)が一番多く,圧力なべよりもかかっているとは驚いた.お肉は炭酸よりも少しの圧力でやわらかくなるんだ!と思った.
●圧力は見えないけれど圧力鍋よりもコーラの方が圧力が高かったりして見た目にだまされてはいけないと思った.
●人間が1気圧をもってるのは知りませんでした.海洋の哺乳類のことも,ハイヒールの圧力のこともおもしろかったです.大気圧は目にみえないけれど宇宙や海ではものすごく大きな力を出すのでこわいと思いました.
●ヒールの圧力の話は面白かったです.
●むずかしかったです.ピンヒールの圧力の高さにはおどろきました.こわい.
●ヒールのかかとにはそれなりの圧力がかかっていることが分かりました.また,どれくらいの圧力なのか計算できるのがおもしろいなと思いました.
●最後のヒールにかかる圧力が予想以上でおどろきました.確認問題,わからなかったです.
●ヒールの先の話がおもしろかったです.勉強を日常のくだらない(くだらないと言うと誤りかもしれまいですが)ことに使えるの,とてもいいなと思います.こういうの好きです.


出席者数推移

(1)44→(2)44→(3)43→(4)44→(5)43→(6)43→(7)42→(8)43→(9)43→(10)41→(11)43

次回予告と予習内容

「化学反応と熱エネルギー」を学びます.教科書の111ページから122ページを読み,例題を解いておくこと.

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