Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

医療工学科の化学講義(25)ベンゼン環を含む有機化合物

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キーワード

m-配向性,o-,p-配向性,アセチル基,アミド基,アミノ基,共鳴,共鳴構造,水酸基,置換基効果,転位,ニトロ基,ニトロ化,配向性

今回でてきた有機化合物で,構造と名前を覚えておかなければならないもの(すでに登場したものも含む)

p-キシレン,p-クレゾール,アセチルサリチル酸,アセトアニリド,アニリン,安息香酸,クメン,クメンヒドロペルオキシド,クロロベンゼン,サリチル酸,サリチル酸メチル,スチレン,テレフタル酸,トルエン,ニトロベンゼン,フェノール,ベンゼン,ポリエチレンテレフタラート(PET),ポリスチレン(PS)

講義内容要約

  • ベンゼン環をもつ化合物は医療現場のあちらこちらにある.たとえば鎮痛剤のアスピリン,イブプロフェン,ロキソニン,シャーレのポリスチレン,送液管のPET.
  • ベンゼン分子内で6個のC原子をリング状につなぐC-C結合は等価で,これら6個のC原子が6個のπ電子を共有している.
  • π電子がプラス電荷をもつ粒子をつかまえて,代わりにH+を放出するパターンの置換反応で,ベンゼン環にイロイロな置換基を導入できる.
  • 一発で導入できる置換基もあれば,いったん別の形で導入しておいて後から変化させる必要のある置換基もある.
  • ベンゼン環に2個の置換基を導入するとき,2個めの置換基の入る場所は,1個目の置換基の種類によって決まる.これを置換基効果という.
  • 2個目の置換基をo-およびp-位に入れる1個目の置換基の性質をo-,p-配向性,m-位に入れる性質をm-配向性という.ベンゼン環に直結した原子に多重結合があるとm-配向性になることが多い.
  • ベンゼン環の欲しい位置に欲しい置換基を入れるためには,置換基の配向性を考えることが重要.
  • 人間は天然から得られるシンプルな構造の分子を原料に,論理的な合成ルートを設計することによって,複雑で有用な分子を手に入れてきた.
  • 合成化学の技術を用いて人類はさまざまな問題をやっつけてきたし,これからもやっつけて行くから,医療技術の進歩,そして人類の未来に希望を持ってOK.

事前配布資料

前々回の講義終了時に予習用の資料を配付しました.コレがテキストになってます.

コメント

●置換基効果のしくみで前から疑問だったことが解決できてよかった.
●配向性の話は聞いたことがありませんでした.
●置換基効果ということをはじめて知った.クメンって何ですか?
●思った以上におもしろかったです.
●やきいもパーティーに出席しまーす!!
●これはまだいける
●有機化学って偉大ですなぁ.
●今日復習する.今すぐする.絶対する.
●51コのベンゼン環かかせるのは鬼畜です.

出席者数推移

(1)89→(2)88→(3)88→(4)86→(5)79→(6)82→(7)78→(8)77→(9)74→(10)72→
(11)61→(12)75→(13)72→(14)67→(16)59→(17)59→(18)50→(19)53→(20)57→
(21)60→(22)42→(23)44→(24)51→(25)47→

次回予告と予習内容

窒素を含む有機化合物について学びます.配布物を読み問題を解いて予習して来ること.

これまでの講義録

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講義1回目から20回目までの内容を収めた教科書

はじめて学ぶ化学

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参考書籍

有機電子論解説―有機化学の基礎

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マクマリー有機化学〈上〉

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図解でわかる 有機化学のしくみ

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