キーワード
共役二重結合,高分子化合物,シス-トランス異性体,シス付加,重合体,脱離反応,導電性ポリマー,トランス付加,ビニル化合物,付加重合,付加反応,ポリマー(重合体),マルコフニコフ則,モノマー(単量体)
今回でてきた有機化合物で,構造と名前を覚えておかなければならないもの
アクリル酸,アクリロニトリル,アセチレン,塩化ビニリデン,塩化ビニル,酢酸ビニル,スチレン,テトラフルオロエチレン,ビニロン,フマル酸,ポリアクリル酸,ポリアクリロニトリル(PAN),ポリアセチレン,ポリ塩化ビニリデン(PVDC),ポリ塩化ビニル(PVC),ポリ酢酸ビニル(PVAc),ポリスチレン(PS),ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリビニルアルコール(PVA),ポリプロピレン(PP),ポリメタクリル酸メチル(PMMA),マレイン酸,メタクリル酸メチル
講義内容要約
- アルケンやアルキンのπ電子は正電荷をもつ粒子と作用して化学反応を引き起こす.
- 工業的にアルコールを製造するときには,アルケンの二重結合に水をトランス付加させる.トランス付加というのは,アルケン分子平面の上から正電荷をもつ粒子が,下から負電荷をもつ粒子がくっつくパターン.Cl2,Br2,HCl,HBrとかも同じように付加する.
- 付加反応が進むとき,二重結合で結ばれた2個のC原子のうち,すでにもっているH原子の数が多い方に次のH原子が付きやすい.これをマルコフニコフ則という.
- パラジウムと炭素から成る固体表面上に水素とアルケンを通すと,二重結合に水素がシス付加する.シス付加というのは,アルケン分子平面の同一方向から付加が生じるパターン.
- ハロゲンをもつアルカンに強塩基を作用させるとハロゲン化水素が抜けてアルケンが得られる.これは脱離反応の一種.脱離反応というのは,分子が抜けて分子量の減少した新たな分子が残る反応のこと.
- ハロゲン化水素を脱離させる反応では,電子密度の最も低いH原子が引き抜かれて,そのHが結合しているC原子の隣のC原子に結合しているハロゲン原子が引き抜かれる.
- 分子量の小さな分子が次々と連なって分子量の大きな分子になる反応が重合反応.重合反応の原料は単量体(モノマー),生成物は重合体(ポリマー),分子量が1万を超えたあたりから高分子化合物と呼ばれる.
- 付加反応が連続して重合が進む反応が付加重合.
- 単結合と二重結合とが交互に続く構造パターンが共役二重結合.共役二重結合は連続した1.5重結合として考える.共役二重結合ではπ電子が自由に動きまわる.
- 共役二重結合が延びた状態になっているポリアセチレンは人類初の電気を通すポリマー.
関連トピック
自然界を彩る共役二重結合
銀杏の葉にはルテイン,ニンジンにはカロテイン,トマトにはリコペンが含まれており,いずれも共役二重結合をもつ化合物です.共役二重結合の長さと,周辺構造の違いによって色が変わります.
電気を通すプラスチック
アセチレンを付加重合させて合成するポリアセチレンは,人類初の導電性ポリマーです.これ以降,さらに高性能な導電性ポリマーが開発されてきました.導電性ポリマーは携帯電話や医療機器のタッチパネルや電気部品に使われています.
確認問題
アルケンの反応に関する基本問題.
コメント
●ちゃんと復習します.●苦手な所です.
●最先端の科学を身近で利用していることに驚きと喜び.
●有機化合物ってすごいんだなぁ.
●板書を写してはいるがなんの話か理解していないので分からなかった.とにかく文化祭終わってほしい.
●覚えることが多くて大変.
●挫折しかけました.
●付加重合の端ってどうなっているんですか?
開始剤と呼ばれるモノが付いています.
●「C-C」4重結合ってありますか?高校の時から思ってて,でも,あったとしても,ただのススみたいで役に立たなさそうだなーと思うんですけど,あったらなんか面白いですよね.
炭素は三重結合までです.四重結合は遷移金属がつくります.
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有機化学のSNS/web連動企画を始めたよ!
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これまでの講義録
- 医療工学科の化学講義(1)ガイダンス+序論(2013-04-10)
- 医療工学科の化学講義(2)原子〜この世界をかたちづくっている材料〜(2013-04-17)
- 医療工学科の化学講義(3)化学とエネルギー(2013-04-24)
- 医療工学科の化学講義(4)元素と周期表(2013-05-10)
- 医療工学科の化学講義(5)原子と原子のつながり その1(2013-05-15)
- 医療工学科の化学講義(6)原子と原子のつながり その2(2013-05-22)
- 医療工学科の化学講義(7)原子軌道と分子の形(2013-05-29)
- 医療工学科の化学講義(8)化学反応式とモル(2013-06-05)
- 医療工学科の化学講義(9)濃度の表しかた(2013-06-12)
- 医療工学科の化学講義(10)物質の性質と状態(2013-06-19)
- 医療工学科の化学講義(11)気体の性質(2013-06-26)
- 医療工学科の化学講義(12)化学反応と熱エネルギー(2013-07-03)
- 医療工学科の化学講義(13)化学反応と化学平衡(2013-07-10)
- 医療工学科の化学講義(14)酸化と還元(2013-07-17)
- (15)前期試験(2013-08-01)
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- 医療工学科の化学講義(16)水と溶液(2013-09-11)
- 医療工学科の化学講義(17)浸透圧と透析(2013-09-18)
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- 医療工学科の化学講義(20)放射線と放射能(2013-10-09)
- 医療工学科の化学講義(21)有機化学の世界+アルカン(2013-10-23)
このブログを書いている人
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