操作手順を文章にする際,「そんなことはわざわざ書かなくてもいいよね,だって,それ,常識だからさ」という箇所は省略するものです.文章を簡潔にすれば簡潔にするほど,カットされて行く情報が生じます.いわゆる「おやくそく」というやつです.
1年生のうちに履修する実験実習科目では,懇切丁寧に操作手順が書かれた実習書を用いる場合が多いのですが,学年が上がるにつれて様々な「おやくそく」がカットされて行きます.卒業して検査や分析,研究の仕事をするようになると,その分野特有の「おやくそく」を学びつつ,必要な情報を自分で補って行くことになります.文章の文字数を減らすために,どのように「おやくそく」がカットされて行くのでしょうか?
授業内容
- グループ替え
- [解説]手順書を読んで 書かれている内容を理解する
- [グループワーク]手順書を書いてみる
- [解説]文章から手順書を記す
授業解説プリント
グループ替え
7班×4人のグループをクジ引きでシャッフル.
[解説]手順書を読んで 書かれている内容を理解する
身近な文章中に「おやくそく」をみつける〜インスタントラーメンの袋に書かれている調理法
某社のインスタントラーメンにはパッケージに次のような調理法が記されています.
- 鍋にお湯500 mLをよく沸騰させ,めんを入れて4分間ゆでて下さい.
- めんがほぐれたら,火を止めて調味ベースと粉末スープを加えて混ぜあわせて下さい.
- 器にうつして出来上がりです.お好みでチャーシュー,ゆで玉子,メンマ,もやし,ねぎなどを加えてお召し上がり下さい.
大学入学まで日本国内で過ごした大学生なら,これを読んでラーメンをつくることができます.それは,様々な「おやくそく」を理解しているからです.しかし,料理をしたこともなければ,ラーメンを食べたこともない,という人にとっては,この説明は省略されすぎていて,ラーメンを作ることは難しいでしょう.
必要なモノが全て記載されているわけではない
「おやくそく」になっていて,わざわざ必要物品として記入されていないものがあります.
記載されている順に作れば良いというわけではない
作り始める前に最後まで読んでおかないと困った事態になる箇所があります.
必要な材料と物品を書き出してみる
説明書に書かれているものも書かれていないものも合わせて書き出してみると,「おやくそく」がどれほど隠れていたのかが見えてきます.
全く書かれてない準備作業
全く記載がなく,自分で判断しなければならない事柄もあります.
書かれている説明文を工程表にしてみる
説明書には3つの文章で簡潔に記されていますが,実際に行う操作は3つだけではありません.
[グループワーク]手順書を書いてみる
お菓子メーカーがオンライン公開している「ホットケーキのつくりかた」をもとにして,実際に自分がホットケーキを作るとした場合に,どのような「おやくそく」に気づかなければならないのか,どのような手順で作業を進めて行けば良いのかを書き出してみました.
[解説]文章から手順書を記す
各班から出された,「手順書には書かれていないが必要な物品」を黒板に書いてみました.それをもとに,「おやくそく」になっている物事が世の中にはたくさんあることを確認しました.
あなたの「おやくそく」がみんなの「おやくそく」とは限らない
「おやくそく」は文章を書く側にとっての「おやくそく」であって,読む側にとっては「おやくそく」ではないかもしれません.このことを忘れていたために,共同作業が失敗することも珍しくありません.情報を受け取る側としてだけでなく,与える側になった時にも,「おやくそく」が成り立つかどうか,相手の立場で考えることを忘れてはなりません.
次回予告
3回に分けて「実験実習科目対策講座」を学びます.その第1回目は,実験レポートには何を書けばよいのか,どのように実験記録をつければよいのか,を考えます.そして,実験書から必要事項を抜き出して実験手順書を作成するグループワークを行います.