Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

(13)調査レポート+30秒トーク

「身の周りの技術/製品/サービス/その他」が1週間のレポート課題でした.自分の好きなもの,気に入っているもの,関心をもっているものを一つ選び,それらが「どのようなものなのか」を紹介し,「どのような歴史があるのか」を説明し,「これから10年間でどのようになって行くのか」をレポートにすることが課題でした.

そのレポートの内容を30秒間にまとめ,自分の好きなもの,気に入っているもの,関心をもっているものについて自由にPRするショートトークを行うことが今回の演習内容です.

調査テーマの紹介

実にいろいろなテーマが出ました.テーマの設定も5枚程度のレポートにするにはちょうどよいスケールのものでした.

  • 冷蔵庫
  • WACOM製品から見るペンタブレットの歴史とこれから
  • フリーソフトである「AviUtl」と「Windows Live ムービーメーカー」で出来ること
  • オンラインネットゲームの課題
  • 新幹線の歴史と今後
  • じゃがりこ
  • ストーブについて
  • DVDの今と過去と未来
  • 水族館の歴史と今後10年での変化の予想
  • 日本の原子力発電
  • Suicaについて
  • 潜水技術
  • 声優(仕事)について
  • ブルーレイディスクについて
  • 電気自動車〜歴史と10年後〜
  • 自動販売機について
  • iPhone入門
  • iPhoneについて
  • 電子辞書について
  • 傘の歴史と10年後

30秒トーク

クジ引きで最初の発表者を決め,その発表者がさらにクジを引いて次の発表者を決めて行く,というハラハラドキドキな順番決めです.

30秒間の発表に対して私からコメント.それぞれ工夫がみられる点,おもしろい点,マネしてみたい点,などを見つけ出して紹介しました.

関連トピックの紹介

21名連続で30秒トークをやるとタイヘンなので,3×7人に分けました.途中2箇所で関連トピックを紹介しました.

(1)事実と意見

レポートを書くときにも,何かを主張するときにも,「事実」と「意見」をごちゃ混ぜにして論理展開してしまうことがあります.また,故意に両者を混ぜて自分に都合の良い結論に導き出す困ったヒトもいます(悪徳商法の多く).そこで,「事実と意見」について考えてみました.

まず,次の文章を読んでみましょう.

近頃の学生は整った文章を書く能力がないという声をよく聞くが,私はこれは主に理科系の学生に関していわれていることだと思う.理科系の学生がきちんとした文章を書けないことにふしぎはない.彼らの本領は文学ではないからである.

木下是雄,理科系の作文技術,p111より引用

なんとなくヘンな感じがするものの,よく読まないとどこがヘンなのかが気づきにくい文章です.この文章の問題点は,

近頃の学生は整った文章を書く能力がない

という記述は「事実」ではなくて「判断」なのに,これを事実として

理科系の学生がきちんとした文章を書けないこと

に接続してしまっているところにあります.レポートを執筆するとき,この手のミスを犯さぬよう注意を払いましょう.また,この手のおかしな論理展開にひっかからないよう注意して文章を読みましょう.

議論のルールブック (新潮新書)

議論のルールブック (新潮新書)

(2)議論と討論と口論

「議論」と「討論」と「口論」の区別が付いていない人は珍しくありません.区別がつかないために不要な争いや混乱が生じている場合もあります.これらがどのように違うのかを確認しておきましょう.

「議論」は,異なった結論を持つ者どうしが,互いに納得(妥協)できる結論を探して行く行為です.互いに譲り合って意見を調整し,一つの結論を目指します.

「討論」では,一つの意見への収束は目指しません.異なる意見を持つものがそれぞれの意見を紹介しますが,それらの意見に基づいて決断を下すのは,第三者です.

「口論」は単なるケンカですね.結論を目指すわけでもなく,決断を第三者に下してもらうわけでもない不毛な行為です.

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

次回予告

今年度は大学の方針として,「『14回の授業完全実施』+『試験またはオフィスアワー』」の組み合わせで15回授業完全実施となっています.この大学基礎演習では試験を行いませんので,次回が実質的には最終回となります.

第一回から行ってきた演習の内容を振り返りつつ,各回がどのように有機的につながっていたのか,を考えます.また,調査レポート以外の全提出物を一括返却します.レポートは赤ペンを入れた後に返却します.来年3月末日までに受け取りに来てください.

これまでの授業記録