Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

医療工学科の化学講義(12)化学反応の速さと化学平衡

コインが錆びて輝きを失って行くようにゆっくりした化学反応もあれば,爆薬の爆発のように一瞬で終わる化学反応もあります.化学反応の速さにはどのような要素が関係しているのでしょうか?

その化学反応も,材料を混ぜておけば勝手に始まるものばかりではありません.熱を加えるなり火花を散らすなりしないと始まらない反応もあります.これはなぜでしょうか?

また,反応は常に一方通行とは限りません.逆向きの反応も同時に進行する場合もあります.

今回のテーマは化学反応の速さと,逆向きにも進行する化学反応のとらえかたです.

7月最初の水曜日,履修登録94名中86名が出席.出席率91 %.

前期試験模擬問題の配付

今年の前期試験にはこんな感じの問題を出します.

キーワード

可逆反応,活性化エネルギー,活性錯体,活性化状態,逆反応,酵素,触媒,質量作用の法則,正反応,反応速度,反応速度式,反応速度定数,不可逆反応,平衡状態,平衡定数,ルシャトリエの原理

講義内容

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  • 反応を起こすためには活性化エネルギーが必要.
  • 反応の速さには,反応物の濃度,反応温度,反応物が固体ならその表面積,触媒の存在,が影響する.
  • 反応の速さは反応速度式で記述される.
  • 触媒は反応の進むルートをナビゲートする.同じ反応物でも触媒が異なればルートが代わり,異なる生成物が得られる場合もある.
  • 逆向きにも進む化学反応を可逆反応と呼ぶ.
  • 両方向の反応速度が等しくなった状態を平衡状態と呼び,みかけ上,反応が止まったようにみられる.
  • 平衡状態における反応物と生成物の濃度の間には質量作用の法則が成り立つ.
  • 平衡定数の大きさから反応の進みやすさを見積もることができる.
  • 平衡状態にある化学反応系は,外部からの攪乱に抵抗して新しい平衡状態を築く.これをルシャトリエの原理と呼ぶ.

該当する教科書のページ

第11章,123ページから136ページ

はじめて学ぶ化学

はじめて学ぶ化学

 

関連トピック

粉塵爆発:粉は表面積が大きいため爆発しやすいので注意が必要

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窒素酸化物の平衡系にみられるルシャトリエの原理:温度変化

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窒素酸化物の平衡系にみられるルシャトリエの原理:圧力変化

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確認テスト

今回はかんたん.

コメント紹介

●1時間目は眠くならないので助かります.●複雑であると思った.●来週はいよいよ微分方程式の時間みたいですね・・・●嵐を覚悟しておきます.●来週が怖いです笑●化学反応の生成物とかはどこまで覚えればいいのですか?●初めて一人で解ききることができた(笑)●今日は分かった! うれしかった! 計算の勉強しなきゃ!●せっかく電卓を持ってきたのに使わないことにがっくりした.●今日はけっこう理解できたので嬉しかったです.●計算がなかった日こそ計算問題を自主的にやって頭を化学脳にしておきたい.●化学平衡なつかしいです.●最近暑くなってきました.●平衡ヒャッホー●よゆう

次回予告と予習内容

反応速度の微分方程式を解いた後,「(13)酸化と還元」を学びます.教科書7章(79ページから90ページ)を予習しておくこと.

リンク

www.tnojima.net
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