大学1年生の多くが直面する問題「どうやってノートをとるのか?」を扱う全2回の2回目.特に「スライドショー形式の授業」をどうするかについて考えました.
配布物
グループワーク「この1週間に受けた講義のノート」
前回の演習で学んだ「ノートのとりかた」を実際に1週間で試してみて,その中からグループごとに1点を選んで紹介してもらいました.
スライドショー形式の講義でノートをとるにはどうしたらよいか?
昨今の大学生が最も困っているのが,スライドを使った講義です.黒板を写すやり方と比べて進行が速く,内容も増え,それに伴って消化不良を起こしがちです.
また,配布資料がないと「何をやったのか」もわからないまま90分間が過ぎてしまうこともあります.配布資料があっても,スライドをそのまま縮小印刷しただけで役に立たないことが珍しくありません*1.
今回はこの現状をクリアする方法を考えました.
(1)「キーワード記録」+「情報後追い作戦」で攻める
講義中はキーワードを記録しておき,復習する際にそのキーワードについて自分で調べることにしましょう.
(2)講義で扱われたすべてを記録しなくても大丈夫
講義で何が扱われたかさえ記録しておけば,その内容を後で落ち着いて調べ直すことができます.授業時間内に全ての情報を正確に残さなくても大丈夫です.
(3)講義時間中にやること
スクリーンに投影されるキーワード,教員が話すキーワード,とにかくキーワードをかたっぱしからメモして行きます.
(4)講義の後でやること
データを情報に変えます.ここが重要.キーワードは登場順に並んでいるので,キーワードを元にその講義で説明された内容をストーリーにしてみます.また,意味が思い出せないキーワードがあったら,書物なりウェブなりで意味を調べてノートに記録し,説明できる状態にしておきます.このときに説明イラストやまとめの表を記入するのもおすすめです.
(5)何を記録「しない」のか
何を「しない」のかを決めておくと講義の内容に集中できます.
- データ量の多い表
- スクリーンに投影される表をまるごと暗記しなければならない,ということはありません.そういう表ならば別に配布されることでしょう.表のタイトルだけメモしておいて,あとで書籍をめくるなりウェブを検索するなりしましょう.重要な表ならみつかります.
- 精密イラスト
- ノートに写すのは物理的に無理です.何の図が投影されたかだけ記録しておき,あとで調べましょう.投影される図だってどこかからの引用だったりします.重要な図なら必ずどこかでみつかります.カメラで撮影するという手もあります.
- 動画
- 重要な内容のムービーなら必ずウェブで公開されています.それを検索しましょう.Google検索で「動画」オプションを入れてキーワードを入力すればOKです.いろいろみつかることが多いので,見比べてみましょう.
何のために講義に出席するのか
あとから調べるのであれば,何のために授業に出席するのでしょうか.一つの目的は,後から何を調べるべきかを知るためです.
一つのものごとを体系的に理解するために必要な骨格を与えてくれるのが,大学の講義です.与えられるのは骨格だけなので.授業時間内だけで体系化が終わることはありません.骨格にはあなたが自分自身で肉付けをしなければなりません.そのために,あなたが具体的に何をしたらよいのか,あなたがどのような情報を確認しなければならないのか,をはっきりさせてくれるのが大学の講義だと考えるのです.
模擬授業その2:スライド形式の講義でノートをとる
今回は「時間を計る」をネタに模擬授業を10分間やってみました.各自ここからキーワードをメモしてみました.そしてグループ内でキーワードのメモ漏れを補完してみました.
グループワークの後,どのようなキーワードが出てきたのかを解説しました.それとグループワークの結果とを比べてみました.
次回までの課題
「模擬授業その2」でとったキーワード一覧をもとにノートを完成させてきます.
次回予告
くじ引きでグループを組みなおします.続いて,「文章に記されている内容の読み解き方」を学びます.実験書や取り扱い説明書に記載されている文章から,必要な事項を抜き出す技術.
これまでの授業記録
- (1)授業計画と履修者紹介(2012-04-12)
- (2)インターネットは頼れるパートナー(2012-04-19)
- (3)高校から大学へ(2012-04-26)
- (4)授業ノートは役立つ記録(1)(2011-05-12)
参考図書
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今後,プレゼンテーションを求められる場面が必ずやって来ます.多くの場合,パワーポイントなどのスライド形式を採り入れたやり方をすることになります.しかし,大学教員がスライドを使って行う講義の多くは,プレゼンテーションのお手本としてはアレです.だから,プレゼンテーションについてのガイドブックを自分で読み,良い方法と悪い方法を知っておくことが将来のために役に立ちます.この本はおすすめの一冊です.
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その続編.
紹介ツイート
これは参考になる!北里大学の野島先生に感謝!RT @takahikonojima: スライドショー形式の講義でノートをとるにはどうしたらよいか?→ d.hatena.ne.jp/hrmoon/2012051… #tnthu2
— ku_info(個人運営)さん (@ku_info) 2012年5月27日
*1:プレゼンテーションの方法を解説した書物には,「投影スライドを縮小印刷して配布する方式は無意味だし絶対に避けたい方法である」というようなことが記されています.しかし,そういうことに無関心な教員も世の中には多いので,学生は苦労しています.