Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

日本化学会第92春季年会を終えて #csj92

25日(日)から慶応大学日吉キャンパスで開催されていた,日本化学会第92春季年会が本日で終了しました.


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私は最終日となった本日の午前中に20分間の口頭発表を行いました.大学時代の恩師をはじめ,いろいろな方に来ていただき,ここ数年どんなことをやっているのかを知ってもらうことができました.

演題番号4D3-11「蛍光蛋白質の生体外発現を演算レポーターに用いるDNAロジックゲート」

「ああいうの,おもしろいですね!」と言ってくれたQ大のTくん,ありがとう.今はもっと面白いことを考えていますよ.お楽しみに.

自分で研究発表を行うだけではなく,自分以外の人々がどのような課題にとりくみ,どのような成果を挙げているのかを知ることも,学会参加の意義です.というわけで今回は初日の朝一番から講演を聴きに行き,興味ある課題,関連する課題,について調査したのでした.

専門に関係する発表を聴きに行く

生体高分子の合成と分析に関連する講演とポスターをチェックしていました.研究ネタとの偶発的な出会いを求めてあちらこちらへ.こういうのがそのうちにつながって,新しいアイデアになるかもしれないし,ならないかもしれません*1

化学教育についての発表を聴きに行く.

一般教育の化学が本業なので,今回からは化学教育についての研究発表をチェックしてみました.実験を工夫したり,教え方を工夫したりして,その結果として授業を受けた生徒からのアンケートを紹介する,という形式の講演が多く,自然科学研究との考え方の違いを感じました*2

それもchemical reaction

昨日(27日)は中高生による科学(化学)クラブの発表会が行われていました.49件のポスター発表それぞれについて1分間のショートプレゼンが行われた後,ポスター発表会場に移動してのポスターセッション.化学好きが集まっただけあり,熱心に研究紹介と質疑応答が続いていました.好きこそものの上手なれ.

この会場は企業ブース出展会場でもあったため(体育館),中高生が科学機器や科学書籍のブースを訪れるという場面がみられました.たまたま同じ会場だったからなのかもしれませんが,こういう交流の機会ができたことは良いことです.ちょっと前までは中高生が企業の製品展示を見る機会はほとんどなかったわけですから.そういうところから始まる興味へのchemical reaction.

SNSで知り合いになった人々と実際に会う

「まずTwitterやFacebookで知り合いになる→それから実際に会う」という順番の出会いが珍しくなくなりました*3.期間初日の25日(日)にはTwitter + Facebookで日頃から交流のある,富山大学のS先生にお会いしました.S先生も1年生対象の化学を担当されています.実はずーっと前に,互いに同じようなサンプルを使って同じような実験研究をしていたことがわかりました.

昨晩(3月27日・火)の夜には横浜でそういう関係の人々6名で食事をしました.情報と医療と化学,とか,科学コミュニケーション,とか,自然科学書の出版,とか,初年次教育,とか,話題はイロイロだったのですが,互いにゆるくリンクされていて,そこに複数の人々がそれぞれのウェイトで関係している,という構図です.医薬情報のお仕事をされているKさん,新潟県立大のH先生,分子研のN先生,京都の出版社のKさん,東大広報のS先生,これからもよろしくお願いします.

来年は関西地区で開催

第93春季年会は関西地区で開催予定です.いま進行中の課題を紹介する機会にしたいところです.

関連リンク

*1:ならないことの方が圧倒的に多い.

*2:コレについては質問も出ました.たとえば生徒に満足度を5段階評価させる,という調査の場合,何をもって数値化するのかが不明なので,その調査結果にどのような意味があるのか,という点です.コレについては中高の授業に限らず近頃は大学でも以下略.

*3:これは学生と私との間にも生じている現象です.たとえば第1回目の講義開始時にはすでにTwitterで相互フォロー関係になっていて「化学を選択することにしましたー!」というリプが来たりする関係が4月上旬にはできているわけです.