前回の授業終了後に寄せられたコメントの紹介
前回の授業終了時に寄せられたコメントをすべて紹介し,回答しました.詳細は前回の授業記録に記載してあります.
30秒間でものごとを説明する
レポートを書くときに陥りがちな思考が「どのように指定枚数を文字で埋めるか」とか「どのようにページ数を稼ぐか」といったものです.しかし,レポート課題をやっつけるときに常に意識していなければならないのは,そういう類の「作業量」ではなくて,レポートの「全体像」です.「ようするに何なのか」を常にハッキリさせておくことが,執筆途中で行き詰まったり,思考が迷子になったりしないために重要なのです.
わずか5枚のレポートですが,「ようするに何なのか」を手短に説明するのは簡単ではありません.今回は30秒間という限られた時間で,自分の書いたレポートをPRしてみることにチャレンジしました.文字数で約200文字.レポートを書くのと同等か,それ以上に苦労したという声もありました.
今回もクジ引きで発表の順番を決めました.9名発表したら一休み,9名発表したら一休み,9名発表,という進行です.
全員の発表に対してそれぞれ,工夫が見られる点,特徴的な点,お手本にできる点,などを私がコメントして行きました.発表している本人が気づいていない点でも,良い方法が用いられていたりするものです.
事実と意見
レポートを書くときにも,何かを主張するときにも,「事実」と「意見」をごちゃ混ぜにして論理展開してしまうことがあります.また,故意に両者を混ぜて自分に都合の良い結論に導き出す困ったヒトもいます(悪徳商法の多く).そこで,「事実と意見」について考えてみました.
まず,次の文章を読んでみましょう.
近頃の学生は整った文章を書く能力がないという声をよく聞くが,私はこれは主に理科系の学生に関していわれていることだと思う.理科系の学生がきちんとした文章を書けないことにふしぎはない.彼らの本領は文学ではないからである.
木下是雄,理科系の作文技術,p111より引用
なんとなくヘンな感じがするものの,よく読まないとどこがヘンなのかが気づきにくい文章です.この文章の問題点は,
近頃の学生は整った文章を書く能力がない
という記述は「事実」ではなくて「判断」なのに,これを事実として
理科系の学生がきちんとした文章を書けないこと
に接続してしまっているところにあります.レポートを執筆するとき,この手のミスを犯さぬよう注意を払いましょう.また,この手のおかしな論理展開にひっかからないよう注意して文章を読みましょう.
議論と討論と口論
「議論」と「討論」と「口論」の区別が付いていない人は珍しくありません.区別がつかないために不要な争いや混乱が生じている場合もあります.これらがどのように違うのかを確認しておきましょう.
「議論」は,異なった結論を持つ者どうしが,互いに納得(妥協)できる結論を探して行く行為です.互いに譲り合って意見を調整し,一つの結論を目指します.
「討論」では,一つの意見への収束は目指しません.異なる意見を持つものがそれぞれの意見を紹介しますが,それらの意見に基づいて決断を下すのは,第三者です.
「口論」は単なるケンカですね.結論を目指すわけでもなく,決断を第三者に下してもらうわけでもない不毛な行為です.
コメント紹介
●200字というのが思った以上にかなり少なかった.情報をバサっと切らないと収まらなかった.要約って難しい.●30秒は短そうで意外といろんなことが話せる長さでした.内容をレポートから選んで,どの部分は省略するのか決めるのに悩みました.他の人の30秒発表を聞いて,いろんな構成があることに気づいた.●プレゼンとっても緊張しました.緊張しすぎて手がふるえました.他の人の発表を聞いていて,それぞれまとめ方がちがって,とても参考になりました.今後も何かを発表する機会があると思うので学んだことを生かしたいです.●みんなのまとめ方が上手なので30秒の発表だけでも調べたことについてよく分かりました.初めて知ることも多く,聞いていて楽しかったです.同じ事を調べた人もいましたが,どちらも発表した部分が少し違ったので,おもしろいと思いました.●調べたものを短くまとめるのは思っていたよりも難しかったです.それに同じテーマでもまとめ方が上手いなと思いました.●30秒って言う短い文を聞くだけなのに,そのことに興味が湧いたり,なるほどって思ったりしたので,まとめ方って大切だと思いました.相手が耳を傾けたくなるような文と話し方とかも今後必要になってくるんだろうなと思いました.みんなのを聞いて勉強になりました.●友達の発表を聞いて,こんなまとめ方いいな!とか,発表内容で,そうなんだ!という初めて知ることもあって,たった30秒しか話していないのに,まとめ方によっては相手によく伝わるんだな,すごいな,と思いました.●機能のどの部分を紹介するかどこを切るかすごく悩みました.30秒という短い時間でいかに相手がききたくなるような話ができるかを考えることはレポートを書くよりも難しかったです.●30秒に内容をまとめて発表するのは難しかった.みんなそれぞれまとめ方が違って聞いていておもしろかった.●30秒間で話すとなると,いいたいことがずれてしまった.●人によってエレベータートークにも様々なやり方があり,それぞれ分かりやすくて参考になった.●みんなのスピーチをきいて,自分のには歴史が入ってないと思った.もっと成り立ちをかけばよかったです.●レポートはすぐ書けるかと思っていたけど,意外と時間がかかった.もっと深く掘り下げたかった.発表を聞いて,同じテーマで調べた人でも,今後の予想が違っていたりしておもしろかった.●30秒間話すだけでも展開の仕方がそれぞれ違っておもしろかったです.●30秒でまとめるのも人それぞれ違って.,特に最初に結論を言っていると聞きやすかったです.知っている製品などでも,発表を聞くと知らない部分があって面白かったです.●議論,討論の違いは,意見を合わせるか,主張から周りに選んでもらうかということで,よく分かっていなかったけど,しっかり違いが分かりました.●調べたことをどう発表するかが一人一人違って,勉強になった.内容に関しても初めて知ることが多くておもしろかった.
27人×30秒の波及効果です.
●次で教養が終わるのちょっとさびしいです.
私も寂しい.
●30秒間という短い時間で野島先生が1人1人の発表について良かったことを見つけていくのがすごいと思った.●発表に対して先生がすぐにコメントできるのがすごいと思いました.
これは慣れですね.そして真剣勝負です.
次回予告
全15回のまとめをやります.今回提出してもらったレポートを添削して返却します.また,これまでの提出物一式を返却します.
2011年度教養演習
このブログを書いている人
関連リンク
参考書
今回の教養演習Bを行うにあたり,以下の書籍を参考にしました.