前回の授業終了後に寄せられたコメントの紹介
前回の授業終了時に寄せられたコメントをすべて紹介し,回答しました.詳細は前回の授業記録に記載してあります.
配布物
グループワーク:「サマータイムを実施する/実施しない」最終決断
先週のグループワークでは,先週の時点で知っていること,わかっていること,考えていること,などに基づいてグループごとに「あなたがサマータイムを実施するか実施しないか決める権限を与えられた場合に,どちらを選ぶか」をいったん決定しました.そして,一週間かけて情報を集め,再度グループワークを行い,この決定を変更するか変更しないかを決めることにしたのでした.
一週間の調査期間を経て,再度グループで意思決定を見直してもらったところ,すべてのグループで「サマータイムは実施しない」との結論が出ました.これは正直なところ驚きの結論でした.
同じ結論でも,グループごとにその理由は同じではありませんでした.先週は「同じ情報からスタートしても,結論は正反対になる」ことをグループワークで学びましたが,今回は「異なる情報からスタートしても,結論が同じになる」ことを学びました.
「ライト、ついてますか?」
文章で物事を説明するときも,言葉で物事を説明するときも,自分の都合で一方的な説明をしてしまうことがあります.
あれも説明しておこう,これも説明しておこう,ぜんぶ説明しておこう,という考え方に陥り,情報の嵐を相手に投げつけてオシマイ,ということをやっているヒトも珍しくはありません.
これ,相手の立場に立って考えてみると,とても困ったことです.情報というものは伝える側の都合ではなくて,伝えられる側の都合で考えるべきだからです.ときどき「後で何かケチをつけられるとイヤだから何もかも説明しておこう」などという考えで,次から次へと細かい説明をマシンガンのように相手に浴びせるヒトがいます.こういう困ったオトナになってはいけません.
文章作成講座の一環として,簡潔で効果的な文章表現をひとつ紹介しました.
想定する場面→山にトンネルを貫通させ,トンネルを出てすぐの場所に車を停められる展望所をつくった.ドライバーの多くはトンネルを出てすぐの見晴らしの良い景色を見て,展望所に車を停め,すばらしい景色を眺めるようになった.しばらく景色を眺めてから帰ろうとして,エンジンがかからない状態に陥るドライバーが多発した.トンネルで使ったヘッドライトを消し忘れ,そのまま展望所で時間をつぶしているうちにバッテリーが上がってしまったのだ.
どのように問題解決するか
- 「ライトを消せ」という標識をトンネル出口に出す→夜中にライトを消すドライバーが出て事故を起こす
- 展望所に充電器を設置する→費用と手間がかかる
となると,
- 結論→ドライバーが漏れなくライトの点灯を正しく処理するような掲示を出す
となります.
どんな掲示を出せば良いでしょうか?
「あとで何か言われるとイヤだから,すべての場合を想定して確実な注意書きを掲示しよう」という考えに陥るヒトはこういう掲示を出すことでしょう.
もし今が昼間でライトがついているならライトを消せ
もし今暗くてライトが消えているならライトをつけよ
もし今が昼間でライトが消えているならライトを消したままとせよ
もし今暗くてライトがついているならライトをついたままとせよ
こんな細かい掲示を出したところで,ドライバーが読み取ってくれるわけがありません.読んでいたら事故を起こすことでしょう.
なんでもかんでも言葉にして相手に投げつける,という考え方は,伝える側の自己中心的な考え方です.相手の都合を考えていません.
では,どのような掲示を出せばよいでしょうか?
ライト,ついてますか?
これでOKです.
答えは相手が知っているのです.すでにわかっている結論に相手を導く工夫をすることが大事なのです.
- 参考書籍
- 作者: ドナルド・C・ゴース,G.M.ワインバーグ,木村泉
- 出版社/メーカー: 共立出版
- 発売日: 1987/10/25
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グループワーク:「相模大野駅から来る人にL1号館玄関で14時に待ち合わせ」の道順を説明する
ものごとを言葉で説明するのは簡単そうで難しい仕事です.たとえば初めて北里大学に来る人に,14時にL1号館の玄関で待ち合わせることになったとしましょう.必要な情報を言葉だけで説明するための文章を書いてみましょう.
たとえば少ない文字数で必要情報を表すとなると,次のようになるかもしれません.
小田急線相模大野駅北口1番バス乗り場から神奈中バスに乗って約25分の「北里大学」で降りて下さい.正門からの道を10分ほど奥に進み,ベンチのある中庭が右手に見えたら,その手前を右折です.直進して左手に見える白い7階建てビルがL1号館です.その玄関で14時に待っています.
相模大野駅からスタートする道順を簡潔に表しています.しかし,これを受け取る側にしてみれば,ここに記されているすべての情報をアタマに詰め込んでおけなければ,待ち合わせ時刻に待ち合わせ場所に行くことはできません.
そこで,こんな説明の仕方が考えられます.
キャンパスの奥にあるL1号館という建物の玄関で14時に待っています.大学の最寄り駅は小田急線の相模大野です.駅からバスで25分,そこからL1号館まで歩いて10分ほどかかります.相模大野で改札を出たら,北口のバス乗り場に行き,1番乗り場に来るバスに乗って下さい.降りるバス停は「北里大学」です.正門から入って広い道をまっすぐ進むと,右前方にベンチのある中庭が見えます.その手前を右に曲がってまっすぐ進むと,左手に白い7階建てのビルが現れます.そこがL1号館です.
まず,「L1号館で14時に待ちあわせ」という情報を伝えます.最低限,ここを覚えておいてもらえれば,すれ違う人に建物の場所を聞くなどして,目的地に到着できるでしょう.続いて,最寄り駅の説明,最寄り駅からの所要時間説明,こまかい道順説明,と続きます.文字数は増えてしまいますが,情報を受け取る側にとっては整理された内容になったので,先ほどの例と比べると待ち合わせ場所に待ち合わせ時刻にたどり着ける可能性が高くなります.
このように,情報を受け取る側の立場に立って情報を渡す,ということが重要です.
先に要約,続いてくわしい説明,というやりかたは新聞でも報告書でも広く使われている手法です.
課題説明
ここまでで学んできたものごとの集約として,「調査レポート」を提出してもらいます.