前回の講義に対する質問コメント感想その他いろいろの紹介
前回の講義録参照
本日の配布物
状態変化とエネルギーの出入り
固体,液体,気体と状態が変わる際に,熱エネルギーの出入りが伴います.例えば氷の入った容器を暖めて行き,温度の変化を温度計で見て行くと,温度が氷点下から単調に 0 ℃まで上昇し,ここでいったん0 ℃の状態が続きます.このとき,容器内は氷と水とが共存した状態となっています.時間が経つにつれて氷の量が減り,水の量が増えて行きます.温度計の目盛りは0 ℃を指したままですが,容器内では,与えられた熱エネルギーが,氷→水の状態変化に用いられているのです.これは,氷から水に状態を変化させるためにエネルギーが必要だということを示しています.
同じことが水→水蒸気の状態変化においても見られます.液体の水を水蒸気として蒸発させるためには,熱エネルギーが必要です.温度計の目盛りは100 ℃を指したまま動かなくなりますが,その際に加えられた熱エネルギーは,水→水蒸気の状態変化に利用されています.
単位換算のやりかた講座その1(基本編)
単位換算ができないと4年での卒業は絶望的です.今回は「比熱→モル比熱」の変換を例にとりあげました.
液体の水の比熱は4.2 kJ K-1 kg-1です.こいつをJ K-1 mol-1であらわしてみましょう.
4.2 kJ K-1 kg-1 = (4.2)(1 kJ)/{(1 K)(1 kg)} = (4.2)(1000 J)/{(1 K)(1000 g)} = (4.2)(1000 J)/{(1 K)(1000/18) mol)} = (4.2×18)(1000 J)/{(1 K)(1000 mol)} = 76 J K-1 mol-1
状態変化の応用例:エアコンのクーラーモードとか冷蔵庫とか
状態変化に伴う熱エネルギーの出入りを利用すると,熱を移動させることができます.このことを応用した身近な例が,エアコンのクーラーモードです,エアコンには室内機と室外機とがあります,両者をつなぐパイプの中には,冷媒と呼ばれる物質が入っています.室内において冷媒は気体の状態からスタートします.これが屋外に移動した際,室外機において圧縮されます.圧縮に伴って冷媒は気体から液体に状態変化し,その際に発熱します,発熱した熱は冷却ファンによって周囲に放出されます.熱を奪われた冷媒は外気温より少し高いくらいの温度まで冷却され,室内に戻されます.室内では冷媒に加えられる圧力を下げることによって,冷媒を蒸発させます.この蒸発に周囲の熱エネルギーが用いられます.この際,周囲は熱エネルギーを失うため,室内の温度は下がります.
同じ仕組みが冷蔵庫や冷凍庫でも利用されています.また,上記サイクルを逆に利用すれば,冬期に暖房として利用することができます.
●クーラーのしくみがわかってなるほどと思った.●クーラーのしくみがよくわかりました.●クーラーのしくみは知らなかったので知れてよかった.
●エアコンの暖房は図の?の段階で室内に風を送るんですか?もしそうなら冷房の方が電気代がかかる理由はそれですか?
電気代はどれだけ電気を使ったかによるわけですが,室内と室外とを入れ替えて同じ条件で温度変化させるわけではないので,なんとも言えません.
地獄の単位換算その1
わかったつもりになっちゃっている単位換算.実は理解していない.ためしに次の問題をやってみるとそのことを思い知らされる!
350.0 mLのエタノールC2H5OHを1013 hPaにおいて25 ℃から加熱して行き,全量を蒸発させるために必要な熱エネルギーを計算せよ. H,C,Oのモル質量はそれぞれ1.0 g mol-1,12.0 g mol-1,16.0 g mol-1とする.エタノールの沸点は78 °C,この温度におけるエタノールの蒸発熱は393 kJ kg-1,液体のエタノールの密度は0.789 g cm-3,モル比熱は111 J mol-1 K-1とせよ.
苛立ちながら関数電卓を叩いては「うぎゃぁ!分母がキログラムになっている!」とか「センチメートルじゃないか!」とか「密度だと!?」というような叫び声多数.ΔTを求めるのにわざわざ273.15 Kを足してみたり.工学系学生必修,単位換算の洗礼,第一回はこうして終わりました.
来週の講義でこういう計算のやりかたを説明します.これを理解しないと自動的に再履修.
●単位をかいて式を書くやりかたがここで役になってる.●来週の解説,しっかり聞きます.●ピーピー●あとでやりなおします●早く答え知りたいです・・・●頭から湯気出る!!●できるようにしっかりやりたいです.●難しいです.●すいませんざせつしました.来週までにしっかり勉強しときます!!●ZASETSUだよーこうただよー●がんばります・・・.●ムズい●あってる自信ないです●自分の中で混乱してしまって,途中で分からなくなってしまった.●テストもあるので確実に解けるようになりたい.●やばい!わからん!!●できそうでできてない気がする.●混乱●先生鬼●意味わかんない!前期単位落としたらどうなるんですか?●あってる自信が全くないです.●わからなくなりました.●次の授業のためザセツ●分からん!!!!あと1時間くらいじっくり考えさせて・・・●挫折●ざせつ●ザセツ●ざせつ
質問
●アクエリアスなどを凍らせて溶かすと最初の液体が甘いのは,融点の違いによるものですか?
融点じゃなくて溶解度です.凍るときに水だけ先に凍って,砂糖とかは凍らずに固体として残ったり,高濃度で凍ったりします.溶けるときには逆になるので甘いものから出てくるのです.
●水の比熱が,氷+水蒸気の比熱の2倍なのはぐうぜんですか?
偶然です.
●気化=蒸発なんですか?
そうです.
●比熱ってJ/g Kでgでやるんじゃないんですか?
どっちでもOK. エネルギー/質量の次元になっていればOK.
●モル比熱から比熱に直すにはどうするんですか?
逆のことをやればOK.「1 mol」を引っ張り出してきてモル質量を掛けて数字を追い出せばOK.それを1000倍すればkgに変換完了.
次回予告
単位換算講座その2をやってから気体の法則に進みます.
リンク
www.tnojima.netwww.tnojima.net
- 作者: MollyM. Bloomfield,伊藤俊洋,岡本義久,清野肇,伊藤佑子,北山憲三
- 出版社/メーカー: 丸善
- 発売日: 1995/03
- メディア: 単行本
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (143件) を見る