2009年度後期試験期間2日目となりました.進級を気にしつつも春休みが待ち遠しい時期でしょう.
さて,学生が学力を試験によって評価されるのと同様,教員も日頃の教育について学生から評価を受けるシステムになっています.今回は試験期間ということもあり,前期に行われた授業評価の結果を報告しようと思います.
北里大学一般教育部では,教員の教育活動を以下のの2種類の調査で評価しています.
- 「一般教育部教員評価委員会」による「教員評価アンケート」
- 「一般教育部FD委員会」による「授業評価」
前者は教員の1年間の活動を総合的に評価するための一項目として行われる調査です.出席者数40名以上のコースで行う決まりになっているため,私は水曜1限の医療衛生学部「化学」でアンケートを実施しました.集計結果がわかるのは来年度に入った頃になる見込みです.結果はわかり次第,報告します.
一方,後者は教員と学生の両者が授業を振り返るきっかけとなるよう行われる調査です.ここには,学生自身に対する学習活動の調査も含まれます.この調査は上記「教員評価アンケート」とは異なるコースで実施する決まりになっているため,金曜2限の看護学部「化学」でアンケートを実施しました.この調査結果が9月に返却されたので,それ以降の講義を改善するいくつかのヒントを得ることができました.今回の報告はこれです.
上記グラフは「教員と授業について」という調査項目の集計結果です.調査項目は以下の10点でした.
- 授業の目標が毎回はっきりと示されていた
- 授業はよく準備・計画されていた
- 授業内容は、興味や関心を引くものだった
- 説明・解説がていねいで、わかりやすかった
- ロ調が明瞭で、聞き取りやすかった
- 板書は見やすかった
- テキスト配布資料は学習の助けになった
- スライド、ビデオなどメディア教材は効果的に使われた
- 教員は、学生の質問や疑問に対して適切な応答をした
- 教員は、学生の理解度を確かめながら授業を進めた
いずれの調査項目に対しても,6割以上の履修者が「そう思う」と答えています.また,すべての項目で9割以上の学生が「そう思う+ややそう思う」と答えています.私の「化学」講義はそれなりにうまく行っていたと考えて良さそうです.
一方で,「あまりそう思わない」という回答が返ってきた項目が2点ありました.その一つが,「授業の目標が毎回はっきりと示されていた」でした.
この時期まで私は,講義の終わりに「次回なにをやるのか」を説明していただけで,毎回の講義開始時にはその日の内容を説明していませんでした.ここが分かっていれば,履修者の理解度が高まることでしょう.
さっそくその次の講義から,講義開始時にその日の内容を要約したスライドを投影したり,黒板左端に「メニュー」を書いたりして,「何を学ぼうとしているのか」を明確にするようにしました.
img2
たとえば↑これは「16. 含窒素有機化合物」の講義開始時に投影したスライドです.ここで登場する4種類の構造をいちどに比較しつつ,それぞれが生命現象や医療技術とどのように関係するのかを説明しています.こうすれば,少なくとも「何のために有機化学*1なんかをやらなければいけないのか-」という疑問を抱くことはないでしょう(たぶん).
この日の講義では黒板の左端にメニューを書いておきました.
↑ここではひとつ項目の説明が終わるたびにチェックマークを入れて行く方法ををとっています.「どれくらい残っているのか」,「どれくらい進んだのか」がわかるようになります*2.
この方法は教員対象の授業公開の際にも良いコメントを頂いています*3.
講義の一番最初に,その日の項目を左端に列挙していたのは,大変親切でした。
------E先生(化学)からのコメント
その日の学習内容を提示し,提示した内容の順を追って,分かりやすく説明されていたように感じました。
------U先生(化学)からのコメント
黒板の使い方も非常によかったと思います。目次的なものが左の黒板にずっと書いてあるという工夫や、板書に教科書の咳当ページを書く工夫は、なるほどと思いました。
------M先生(生物学)からのコメント
このようなアンケートを行う際,学生の多くは教員に低い評価を付けたがらない傾向があります.人数が少ないクラスほどその傾向が高くなります.それでも,「あまりそう思わない」という回答からは「あまり」という部分を取って考えることにより,改善点を見つけることができます.
春には「教員評価アンケート」の結果も返ってきます.その結果も参考にしながら,今後も授業改善を進めて行きます.
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