出席18名.徐々に出席者数が減っています.卒業単位外科目であることと,自分で勉強するスタイルの方が向いていると判断する学生がいることなどから,例年,この科目は回を重ねるたびに人数が減って行くのです.
今回は「熱」が出て来るところです.
今回は解説を30分程度で終わらせ,残りをフルに問題演習と回答に充てました.
化学反応式の量的計算
前回の復習になります.化学反応式からは反応に関わる分子の分子数,質量,気体の場合の体積,といった情報を得ることができます.ここでは係数の比に着目することがポイントです.
反応熱
化学反応や状態変化には熱の出入りが伴います.熱の発生を伴う場合は発熱反応,吸収を伴う場合は吸熱反応となります.
熱を定量的に論じるためには熱量という物理量を用います.単位は[J]です.たとえば水の温度を上昇させるために必要な熱量を求めるためには以下の計算を行います.
熱量[J]=4.18[J/g・℃]×水の質量[g]×水の温度変化[℃]
熱化学方程式
化学反応式に反応熱を書き加えたものです.たとえば水素H2の燃焼反応は以下のように表されます.
H2(気) + (1/2)O2(気) = H2O(液) + 286 kJ
反応熱の種類
上記の「+286 KJ」は燃焼熱です.1 molの物質が完全燃焼する際に発生する熱量です.他に,1 molの物質が融解する時に吸収される「融解熱」,1 molの蒸発するときに吸収される「蒸発熱」,1 molの物質を多量の水に溶解させる際に吸収される「溶解熱」,酸と塩基から1 molの水が生じる中和反応で吸収される「中和熱」,成分元素の単体から1 molの物質が生成される際に発生または吸収される「生成熱」があります.
ヘスの法則
物質の変化に伴う熱の出入りの総量は変化の過程に無関係,という法則です.新宿から東京までJRに乗って行く場合,池袋を通っても渋谷を通っても,あるいは中央線でショートカットしても料金が同じなのと似ています.
この法則を用いると,実測困難な反応熱を求めることができます.
反応熱 = (生成物の生成熱の総和) - (反応物の生成熱の総和)
この関係と,すでにわかっている各種物質の生成熱を用いて,実測困難な物質の生成熱を求めることができます.反応に伴って混合物が生じてしまう場合に便利です.
しつもん
質問◎5.の(4)はどうして燃焼熱ではないのですか?
この問題は以下のようなものです.
(1/2)N2(気) + (1/2)O2(気) = NO(気) - 90.3 kJ
ますここで反応物N2およびO2の係数が(1/2)になっていることに注目しましょう.もしもN2の燃焼熱だったら「1 molのN2」に着目して式を立てているはずです.ここでは「1 molのNO(気)」が生成するように式の係数が合わせてあります.つまりこれは生成熱です.
次回予告
第9章「酸と塩基I」に進みます.