今回と次回は教科書の内容を離れて,「いま」の化学で何ができて,「これから」の化学で何ができるようになるのかを考えて行きます.医療技術を支える化学技術とその原理を紹介しました.後期履修者46名中,45名出席.出席率98 %.
配布物
- 後期試験模擬問題と解答例
- バイオテクノロジーを支援する化学
以下のダウンロードページにて公開しています.
●ノートとらなくてもプリントを見れば授業の内容が書いてあるのでわかりやすかったです.いつもはノートをとるので精一杯なので笑.
しかしそうすると眠くなる人も出てくる.
●最後だけ寝ちゃいました.ごめんなさい.テスト対策の問題ありがとうございます!!テストがんばります!
●模擬問題ありがとうございます.ちゃんと勉強してテストに臨みます.
●すみません.今日たくさん寝ちゃいました.この土日で模擬問題をやってみようと思います.
●今日,むずかしくて寝ちゃいました.すみません.今から化合物がんばって覚えますね.
●すいませんすいませんすいませんねむすぎて・・・ごめんなさい
●今日は本当にフリーズしてしまいました.申し訳ないです.次回楽しみにしています.Merry Christmas & Happy New Year!!
●次回はしっかりききます!!
前回の講義に関する感想コメント質問その他なんでも
詳細は前回の講義録参照↓
NASAが発表した「ヒ素バクテリア」
今月の2日,NASAが「ヒ素存在下でヒ素を体内に取り込んで生きるバクテリア」の発見を報告しました.NASA公式発表内容に基づいて,この発見の意義について解説しました.
このバクテリアはリンのかわりにヒ素を体内に取り入れて生活している可能性が高く,取り入れられたヒ素がDNA分子に取り込まれている可能性が示されました.これが本当なら,ヒ素を構成要素とするDNAが存在可能であることを示します.
これまでDNAを構成する元素はC,H,O,N,Pだけと考えられてきました.他の元素を含むDNAは一例も見つかっていません.今回の発見によって,ヒ素がDNA分子内に取り込まれているとすると,DNAを構成するために必要な条件が広がることとなり,さらに生命の誕生に求められる元素の条件も,これまでに考えられてきたものより緩く考えて良いことになります.生命の誕生についてのイメージがふくらむ発表です.
しかし,この発表に対しては,発表の直後から疑問が浮かび上がっています.実験条件が不適切だった可能性や,バクテリアがヒ素を「食べて」いるのではなくて,単に体内に「ためこんで」いるだけではないか,など.まだまだ検証の余地が残されています.
関連リンク
- A Bacterium That Can Grow by Using Arsenic Instead of Phosphorus
- <速報>リンの代わりにヒ素をDNA中に取り込む微生物が見つかったCommentsAdd Star
- Microbe gets toxic response
- 「砒素で生きる細菌」に疑問の声
(1)ペプチドの化学合成
アミノ酸がアミド結合で複数個つながった分子がペプチドです.「短い」鎖長のものをオリゴペプチド,「長い」鎖長のものをポリペプチドと呼んでいますが,両者の間に明確な境目はありません.
ポリペプチドのうち,機能と特異的立体構造をもったものがたんぱく質です.
ペプチドを記す際にはアミノ基を左側に,カルボキシル基を右側に置きます.それぞれN末端,C末端と呼びます.
液相法と固相法を説明しました.液相法は20アミノ酸残基程度のペプチド合成に利用できます.それよりも長い鎖長のペプチドには固相法合成が用いられています.固相法合成は自動合成機を用いて行われる方法です.
副反応が起こらないよう,脱水縮合に関係しない官能基を保護基で守っておくことがペプチド合成のポイントです.細胞内でペプチドはN末端から合成されますが,化学合成はC末端から進められます.
(2)DNAの化学合成
DNAはデオキシリボヌクレオシド三リン酸が重合した高分子です.
ペプチド固相合成法と類似した手法でDNAも合成されています.固相合成法では50残基程度までの一本鎖DNAが得られます.これは後述するPCRやDNAシーケンシングに用いられます.
DNAの方向性をあらわすために5'-末端,3'-末端が定義されています.細胞内でDNAは5'-末端から合成されますが,化学合成では3'-末端から合成が進められます.
参考図書
- 作者: JT生命誌研究館,工藤光子,中村桂子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/12/21
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(3)DNA増幅(PCR)
特定配列のDNAを特異的に増幅する手法がPCRです.
参考ムービー
PCRは犯罪捜査,感染症診断,遺伝子工学実験など広い範囲に応用されている技術です.鋳型となるDNA,4種類のデオキシリボヌクレオシド三リン酸,化学合成された一本鎖DNA(プライマー),耐熱性DNA合成酵素,そしてプログラマブルな温度コントローラーが必要です.
●PCR法すごいなと思いました.培養の仕組みはなんとなく理解できるけど,DNAを機械で読み取って複製できるなんて私の想像の域を超えます笑 テストがんばります.
●遺伝子複製を昔は人がやっていたことに驚きました.
●PCR法,教養演習Cの授業で計算しました.でも今日の先生の授業でさらに理解しやすくなりました! スライドわかりやすかったです.
●PCR法は他の授業でも何回か出てきているので,すごく楽しかったです.テスト頑張りたいです.
●半保存的複製とかDNAの話がなつかしかったです.耐熱温度が90 ℃以上のDNAなんて知りませんでした.
DNAは90 ℃に耐えられる高分子です.二本鎖が解離しますが,分子鎖は切れません.PCRの発展に貢献したのは耐熱性のDNA合成酵素です.
●DNAを増やすことを先生は本当に行っているのですか?
やってます.PCRはすでに特殊なテクニックではなくなっています.
(4)DNA配列解読
サンガー法を解説しました.蛍光標識されたジデオキシリボヌクレオシド三リン酸を反応液に混ぜておくことがポイントです.DNAの解読効率は年々高くなっています.2003年にはヒトのゲノムDNAを読み取る作業が完了しています.その他の生物に対してもゲノム読み取り作業が次々と完了しています.
参考ムービー
●遺伝子診断ってすごいです.
●技術の進歩ってすごいなと思いました.DNAの配列とかって説明されてもよく理解できないくらい難しいのに,これをみつけた人の頭はどんなになっているのだろうかと思いました.
●人間とチンパンジーのDNAが99 %一緒なんてほぼ一緒じゃん!って思いました.ビックリ!!
●2003年にヒトのゲノムの解読が終わっていたとは知らなくてビックリした.
●ノーベル賞ってすごいですね.先生もノーベル賞がんばってください.
●ノーベル化学賞3つとれたらすごいですよね!!なんとしても生きていてほしいです.
●トリプルノーベル賞とれたらすごいですね.もう90才過ぎているようですが・・・元気でいて欲しいです.
●ノーベル賞2つとっている人,生きているうちにRNAの方もとれたらいいですね! 来年楽しみです!! テスト対策のプリントありがとうございます.
●2014年になったら趣味とかでもできちゃいそうな費用と疑問ですね(笑)
●ゲノム解析によって畜産・植物の改良など様々なことに利用されるんですね!!すごいと思いました.
●DNA解析で出生前診断とか病気の予防とか医療に役立っていると知ってすごいなと思った.
●DNAの話はすごい偉大な先生ですね.先生の憧れる人はあの方ですか?
●DNAレベルで地球上の生物を見て行くと,こんなに医療・農業・畜産業・科学分野で進歩がみられるんだなぁ・・・と思いました.
●ヒトのDNAの読み取りと,その人その人にあった薬や最善の治療が選択できるところまでいくのだなぁと思いました.
●人間以外にもゲノムを読み終えたなんて,初めて知りました!
●A,T,G,Cのやつ,教養演習でやってレポートも書いたので,結構覚えていました!
●ヒトの遺伝子数,2万くらいとのことですが,かえるとほぼ一緒ってことですか?
文字の数がほぼ一緒ということです.数が多ければ高等というわけではありません.多くの植物は人間よりも大きなゲノムサイズをもっています.
遺伝子工学による有用物質の生産
PCRを用いて目的遺伝子を増幅・単離し,ベクターに挿入してからホストに導入,大量発現させてから精製,という流れを説明しました.
●遺伝子組み換えしたDNAを大腸菌に入れる実験をやったことがあります! その時のことを詳しく知れて良かったです.
●遺伝子のことがでてきて,生物好きな私は嬉しかったです.テストがんばります.
その他のコメント紹介
●改めて化学(科学)ってすごいなと思いました.今日の授業は驚かされることばかりで興奮しました.先生が時々すごく早口で楽しそうに話していたのが,化学が本当に好きなんだなと感じられて,なんか良いなぁと思いました!
●先生がすっごくいきいきしてましたね!
●プリントを見ただけじゃ難しそうでしたが,説明をきいてたら面白かったです.
●科学も化学もすごく進歩しているのですね.
●今日は動画がいっぱいで楽しかったです.
●過去の偉業も大切だけれど未来の進歩が楽しみです!
●技術革新・・・医療にも進んでいるのですね.次回の講義が楽しみだなと思いました.ラスト1回とか寂しいです先生・・・.
●今回もテスト対策のプリント配ってくれて良かったです.頑張って勉強しまーす.
●テスト勉強まったくしてないです・・・.でもクリスマスもお正月も勉強なんて耐えられない・・・.お正月終わったら頑張ります.
●テスト対策プリントありがとうございました.これで頑張れます.
●テスト期間がせまってきていていやです.レポートもふえてきました.
●毎日レポートにテスト勉強に大変です.そろそろ化学も勉強し始めなくては・・・.
●テストがんばります.
●テストがんばります.
●どとうのようにしゃべり,スライドが進み,圧倒された(笑)全然わからない,頑張らねば・・・
●おふろのふたに「ポリプロピレン」って書いてありました!
身のまわりにあるさまざまなモノの材料に関心をもつのは良いことです.
●テスト頑張ります!私は暗記苦手なので計算で勝負しますよ!!!
選択科目だし,入学時点での化学理解度に大きな開きがあるクラスなので,各自得意な範囲で得点を取ってください.
●今日は前回の板書(ノート写し)していたためあまり授業きけてませんでした.
・・・・・
●授業終わるの嫌です.来年も授業してください.
来年も金曜2限を担当する予定なので,再履修すれば以下略
●今度 旧L1号館の写真を見たいです!
↓こちらをごらんください.
●昨日,倫理でエホバの人の輸血についての授業を受けました.そして人工血液が使えたらいいのにと思ったのですが,今現在開発されている人工血液はどういうものなのですか? 知っていたら教えてほしいです.
完全に血液の代用となる分子の合成には,現段階では成功していません.フッ素化合物の一種に酸素を運ぶ性質があることを利用して,代替血液にする研究が進められていましたが,実用化には至っていません.
●テストの時の構造式ってどこまで細かく書けばいいんですか?
これでOK.
●スライドに使っている写真は先生が撮っているんですか?
私が撮影しているものもあるし,あちらこちらからみつけてきたものもあります.日頃から使えそうな画像をみつけると保存しています.
●ソラカラちゃん,私けっこう好きです!
東京スカイツリー公式キャラクター「ソラカラちゃん」.ええと,なんでここに登場?
●さいごの授業.おつかれさまでした.
ちょっとまった,最終回は来月7日ですよ.お忘れなく,今回は2010年12月の最終回.
次回予告
医療や生命科学に関連する化学は今どこまで進展しており,これから先の10年間でどのように発展するのでしょうか.2020年の化学(医療関連)を考えます.2010年度の看護学部対象化学講義は,これが最終回になります.
リンク
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