Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

ハワイ出張(1)何をしに行っていたのか

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12月17日(金)より12月22日(水)までハワイに出かけていました.

この期間*1,ホノルル市内で開かれていた,化学系研究者が集まる大規模な催しに参加したためです.

どのような催しだったのか

日本語では「環太平洋国際会議2010」,英語表記は「2010 International Chemical Congress of Pacific Basin Societies」です.略してPacifichem2010.5年に一度ハワイで開かれる行事です.主にアメリカ,カナダ,日本,ニュージーランド,オーストラリア,韓国,中国の化学系研究者,化学系教員が集まり,それぞれの専門領域に分かれて講演したりポスターを貼って研究成果を発表したりというイベントです.

今回の参加者数は12,000人以上,発表された研究成果は1,000件以上です.

開催場所はHawall Convention Centerでした.

1000件以上ある発表は275グループに分類され,それぞれ研究領域の近い参加者どうしが集まって研究成果を紹介しあったり,関連情報を交換しあったり,もちろん,ライバルの成果をチェックしたり,という具合に活動します.こうした情報交換と情報収集がなければ,Scienceは発展しないのです.

何を発表したのか

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発表セクションは,「Materials & Nanotechnology」(材料とナノテクノロジー)でした.数年前からDNAを遺伝情報記録媒体としてだけではなく,人工的な情報タグとか演算素子として使う方法をイロイロな角度から攻めていて,ナノスケールの分子操作ということで,この分類に登録したのでした.

発表題目は「PCR-based biomolecular logic gate」(PCRにもとづく生体分子から成る論理ゲート)です.3年前にスタートさせ,現在も進めている研究課題です.遺伝子分析においてDNAの増幅に用いられているPCRを,一種の論理判断機構ととらえて,プライマーの入力パターンと増幅あり/なしのパターンとの関係を様々にリンクさせる,という研究です.通常のPCRは2種類のプライマーが加えられた場合に限って増幅反応が進むので,2入力のANDパターンですが,2入力のORとか,1入力のNOTとか,情報科学の基礎で出てくる基本パターンをいろいろつくってみたわけです.生体分子のしくみを理解して組みあわせると,生体内とは異なった用途に利用できる,ということをデモンストレーションしている研究です.

発表はどんな感じだったか

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17日(金)の10:00-12:00に大ホールで開かれたポスターセッションで研究成果を発表しました.会場内に並んだパネルの,指定位置に,持参したポスターを貼り,説明を聞きに来た人や,近くを通りがかって足を止めてくれた人を相手に研究の説明をする方法です.2時間の持ち時間の間に,約20人の人と話すことができました.最初から私と会って話をしたかったという人もいて*2,それなりにチェックされている以上,このテーマはしっかり発展させて行かねばならない,と思ったのでした.

どんな研究をチェックしてきたのか

DNAで微小構造を組み立てるナノテクノロジー,PCRではないDNA増幅方法を利用した遺伝子検出,DNAに結合する分子を用いたDNA判定,極微量の溶液を取り扱う分析装置,というような研究発表をみて/きいてまわりました.問題に対する取り組み方が興味深いものが多く,考え方の参考になるものが多数ありました.

Pacifichem2010参加者のBlog紹介

以下の化学系BlogでもPacifichem2010のことを扱っています.

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*1:正式には12月15日から

*2:カナダの人とアメリカの人,だったかな?