Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

医療工学科の化学講義(10)物質の三態変化

履修者84名中82名出席.98 %.

前回やったこと・質問・コメント・その他紹介

くわしくは前回の講義録後半参照↓

状態変化

固体,液体,気体と状態が変わる際に,熱エネルギーの出入りが伴います.例えば氷の入った容器を暖めて行き,温度の変化を温度計で見て行くと,温度が氷点下から単調に 0 ℃まで上昇し,ここでいったん0 ℃の状態が続きます.このとき,容器内は氷と水とが共存した状態となっています.時間が経つにつれて氷の量が減り,水の量が増えて行きます.温度計の目盛りは0 ℃を指したままですが,容器内では,与えられた熱エネルギーが,氷→水の状態変化に用いられているのです.これは,氷から水に状態を変化させるためにエネルギーが必要だということを示しています.

同じことが水→水蒸気の状態変化においても見られます.液体の水を水蒸気として蒸発させるためには,熱エネルギーが必要です.温度計の目盛りは100 ℃を指したまま動かなくなりますが,その際に加えられた熱エネルギーは,水→水蒸気の状態変化に利用されています.

状態変化の応用例(1)エアコンのクーラーモードとか冷蔵庫とか

状態変化に伴う熱エネルギーの出入りを利用すると,熱を移動させることができます.このことを応用した身近な例が,エアコンのクーラーモードです,エアコンには室内機と室外機とがあります,両者をつなぐパイプの中には,冷媒と呼ばれる物質が入っています.室内において冷媒は気体の状態からスタートします.これが屋外に移動した際,室外機において圧縮されます.圧縮に伴って冷媒は気体から液体に状態変化し,その際に発熱します,発熱した熱は冷却ファンによって周囲に放出されます.熱を奪われた冷媒は外気温より少し高いくらいの温度まで冷却され,室内に戻されます.室内では冷媒に加えられる圧力を下げることによって,冷媒を蒸発させます.この蒸発に周囲の熱エネルギーが用いられます.この際,周囲は熱エネルギーを失うため,室内の温度は下がります.

同じ仕組みが冷蔵庫や冷凍庫でも利用されています.また,上記サイクルを逆に利用すれば,冬期に暖房として利用することができます.

●私は夏に扇風機しか使わないので,クーラーが苦手です!!!

●エアコンの室外機が不可欠なのを改めて知った.

●身の周りでいろいろな状態変化が起きていた.

●蒸発による吸熱の仕組みは知っていましたが,排熱ファンや冷媒の動きは知りませんでした.身近にもサイエンスとケミストリーですね.

●蒸発が吸熱反応だということは,高校で勉強したはずだけど,今日の授業でたとえを使って考えてみてやっと理解できた気がします.しかも身近にこの反応を使っているものがたくさんあると知って驚きました.もっと化学的な視点で周りを見て,化学オタクになりたいです.

●状態変化の時の熱の出入りのところがよくわかった.

●状態変化についてわかりやすかったです.

●凝縮や凝固のときに周囲に熱が与えられて,周囲があたたかくなるということは不思議でした.

●クーラーは室内機,室外機,運命共同体ですね(笑)

●クーラーのしくみとか初めて聞きました.分かりやすかったです.

●今使っているエアコンの仕組みが授業で説明できるなんて感動した.また,他にも状態変化を利用したものが多くあり,今度から化学が何か利用されていないかアンテナを立てて探してみたい.

●クーラーという身近なものの仕組みを知ることができてよかったです.室外機と室内機は一心同体ということは,一生忘れないでおきます.

●エアコンと冷蔵庫のデザインの変化がおもしろかったです.すずしくなるしくみもわかってよかったです.高校のときに,「夏になると水をまくのは,すずしくなるからだよ」を教わったことを思い出しました.

●一番最初の冷蔵庫は変な形をしていた.

●エアコンの冷たい風を感じながら機械の中でどうきうことが行われているのかを知りました.

●エアコンの仕組みは説明を受けて理解できました.うばう,うばわれるの関係があって成り立っていることがよくわかりました.

●エアコンの仕組みがわかっておもしろかったです!

●エアコンの仕組みを初めて知った.

●エアコンのしくみがわかった.

●エアコンが稼働するしくみがよくわかりました.

●エアコンのしくみがむずかしかった.

●エアコンのしくみに驚きました.

●エアコンのしくみがしっかり理解できました.

●エアコンが温度を下げる仕組みが意外に簡単だったからびっくりした.

●エアコンのしくみがよくわかった.エアコンを発明した人はすごいと思う.身の周りのもののしくみを知ることはおもしろい!

●エアコンや冷蔵庫の冷やす方法が,ピストンによって気体を圧縮したり,元に戻すことを利用しているとは思わなかったです.てっきり,モーターか何かで無理矢理冷やしているのだと思った.

●冷房の仕組みってすごいんですね!

●圧縮したときに,熱が発生するから,冷蔵庫の側面やエアコンの室外機は少し熱いんですね.チューブの中でフロンガスが行ったり来たりしているとも思いませんでした.オゾンホールの原因でもあるフロンなので,早く代替が発見されるといいですね.

●エアコンの原理がよくわかりました.もう2か月ほど使ってませんが.

●エアコンのフロンガスのかわりが早くみつかるといいなと思った.

●クーラーのしくみわかりました! 状態変化っていろいろなところで使われているんだなぁと思いました.

●クーラーや冷蔵庫のしくみの話を聞いたことがなかったので,そんなに化学の力を駆使して気温を下げていることを知り,面白いと思った.

●注射のアルコールの話は納得した.

●スプレー缶を爆発させるのかと思った.

●状態変化はまだ分かるけどこれから先 難しくなるのが心配.

●氷水を0℃にしたらどうなるかずっとわからなかったけど今日わかりました.

●夏に打ち水をするのも蒸発熱を利用していたんですね.

状態変化の応用例(2)冷却効果を用いた殺虫剤

スプレー缶の中で液化している物質は,噴出にともなって気化します.その際に蒸発熱を奪って行きます.この現象を利用した殺虫剤が商品化されています.はじめて商品化されたものは可燃性ガスを用いていたために火災事故を起こす可能性があったため,販売中止になりました.現在市販されているものは燃えにくいガスを用いたものです.

●あの殺虫剤,インパクトのわりに単純なしくみだったのですか.

●凍殺スプレーが欲しいですとても.

●私は虫が大嫌いなので,殺虫スプレーを持ち歩こうと思いました.

●殺虫スプレーの仕組みがわかって感動しました!!

●そういう仕組みの殺虫剤もあったんですね.

状態変化の応用例(3)氷のう

熱が出たときに用いる「氷のう」は,氷が水に状態変化する際の融解熱を用いた生活の知恵です.水や氷が冷えているからではなく,溶ける際に熱を奪うから応用できるのです.

●氷が冷たいから熱のときに良いのかと思っていたからびっくりだった!

●おでこに水をのっけても意味はないとは知らなかった.

●氷嚢と熱を出したときの例がとても身近で分かりやすかった.意外に理にかなっているんだなと思った.

●氷嚢が状態変化の応用だったなんて初めて知りました.

状態変化の恩恵:氷河

氷河には地球上の気温を調節する役割があります.水のもつ高い融解熱を用いて,太陽からの熱エネルギーで大気の温度が急激に上昇しないようにしているのです.

●氷河が地球のエアコンの働きをしているのが驚き.

●氷河がそんなことにも役に立っていたなんてびっくりです!

気体の性質

まず,圧力の単位から.

1 atm=1013 hPa=760 mmHg=760 torr

私たちをとりまく空気の圧力を1とするatmは,非SI単位系ですが,これからも用いられていくことでしょう.SI単位系ではPaが圧力の単位です.それを100倍したhPaが天気予報などで用いられています.血圧計などの医療器具ではmmHgが主流です.また,数値部分がmmHgと同じ*1 torrも用いられています.

●hPaをつかっていたから,まだatmに慣れません.

●torr,hPa,mmHg,atmの変換をしっかりとマスターしたいと思います.

●atmって何だろうと思いつつ,先生にきけなかったんですけど,今日知ることができてすっきりしました.

続いて気体の法則.

ボイルの法則,シャルルの法則,ボイル-シャルルの法則,理想気体,理想気体の状態方程式について解説しました.

●理想気体が出て来るところの計算問題は特に苦手だったので,しっかり復習しておきたいと思います.

●ボイルシャルルはむずかしかったです.

●わかりやすかった.PV=nRTでは,Tが絶対温度であることを忘れずに計算したい.

●シャルルの法則とかとてもなつかしかったです.でも苦手です.

●ボイルとかシャルルとか懐かしかったです.

●理想気体についての定義は,体積を考えないことと引力が無いということしか頭になかった.

●理想気体の定義がたくさんあってびっくりした.

●ボイル-シャルルの法則と状態方程式は,物理の分野なイメージが強いですが,化学の視点からの利用と物理の視点からの利用の違いを楽しみたいです.

●気体の状態方程式は奇跡的な大発見だと思った.

真空

私たちは1 atmの世界に暮らしています.これが真空になったらどうなるのでしょうか?体験した人がいます.

●真空ってこわい.よく死ななかったなー

●0気圧の話がおもしろかった.

●0気圧は絶対に体験したくないと思った.

●0気圧の状態では,人間は爆発してしまうのかと思っていました.

●舌の上が沸騰する感覚って,どんな感じなんですけねー(笑)

全般

●今日は「なるほど!!」と思うことがたくさんだった♪

●また一歩,化学の知識を豊かにすることができたんじゃないかなと思います.

●難しい・・・・復習頑張ります!!

●特になしです.

●おもしろかったです.

●化学IIの範囲だったけど理解できた.

●わかりやすかったです.

●今日の内容は,前の配位結合のへんに比べてわかりやすかったです.

●なんだか高校時代の物理を思い出しました.

●高校でやったことを深く知る事ができた気がします.

●高校のときの物理と化学の復習になりました,

●高校の復習みたいで楽だった.

●復習ができた.

●高校の物理の復習のようなかんじでした.楽しかったです.

●今日の授業内容は高校のとき習ったものが多く,特に難しいとは感じなかった.

●今回の講義では,高校で習った範囲だったので,理解しやすかったと思います.でも,理想気体についてのところでは,高校の頃には,習わなかったところまであったので,しっかりと覚えておこうと思います.

●高校までやらなかった詳しい所までできてよかった.

●今回は復習として非常に助かりました!

●身の周りのことばかりだったからイメージしやすかった.

●私もJAXA行きたいです....

年中無休で見学できます.詳細は公式サイトから↓

●先生,黒板の書いていく順は,ちゃんと一番古いやつを消して書いて下さい.たまに少し前に書いたばかりの所を消されて,ノートに書けなくなります.お願いします.

そんなにランダムに書いていたかな?

その他

●ひまわりの画像欲しいです.氷河の画像も.

以下にあります.

昨日ウミウシの写真集買いました.

ウミウシ!! きれいな色だ.

●テストが心配です.

●もうすぐテストなので頑張ろうと思った.

●試験頑張ります!!

●今日もありがとうございました.

質問

●8.314 J/mol KはPV=nRTからどうやって求めたのですか? Jってことは比熱をかけているの?

●単位換算をできるか不安です(;_;)

●単位の変換のやりかたがよくわからなかったです.

次回,詳しい説明をします.説明資料を以下からダウンロードできるようにしておきます.

●地球の気圧が変わることはあるんでしょうか.

地球上の場所によって変わります.高度が高くなると気圧は下がります.

●真空だと血が沸騰するって聞いたんですけど,ホントですか?

真空中に血液を置いたら沸騰するでしょう.上記質問はそういう話ではなく,ダイバーが深く潜った後に急に陸に上がろうとすると血液中の酸素が気化して障害が生じる,という話のことでしょう.これは圧力と溶解度との関係になります.次回解説予定.

●つまりクーラーからフロンガスは出ていないということですか?

●エアコンは冷えたフロンで室温を下げているんですか? 冷えたフロンを室内に流している訳じゃないですよね?

はい.排気口から出ているのは空気です.

●フロンのどのような性質が優れているのですか?

室温付近の沸点,人畜無害,など.

●フロンの代替材として使えそうだけどムリだという物質はありますか?

●フロンの代替物は開発中と書いてたが,ノンフロンの冷蔵庫等は何を使っているのか?

代替フロンに関しては以下のURLにまとめがあります.

●冷房の22℃と暖房の22℃は違うように感じるのですが,本当に同じ22℃なのですか?

同じです.ただし冬の暖房22 ℃と夏の冷房22 ℃では,屋外と屋内との温度関係が逆転しています.そのため,違うように感じます.

●運動エネルギー∝温度,これは何ですか?

比例記号です.

●気体は高温で低圧になるほど,理想気体に近づくと聞いたが,なぜか?

高温で低圧だと分子と分子との接近する機会が減ります.そのため分子間相互作用の影響が少なくなるからです.こういう影響があると理想気体としての性質が失われます.

●自然に蒸発するのはどういう仕組みなんですか.

液体の分子集団のなかには平均値よりも高い運動エネルギーをもったものもいます,そういう分子の中には沸点以下の温度であっても,表面から外へ飛び出していくものもあります.エネルギーの高い分子は常に一定の割合で存在するので,徐々に蒸発して行くのです.

●最初の方で融解熱の話をしていましたが,今現在で融解熱が一番大きい物質は何でしょうか? 何℃くらいでしょうか.

みのまわりにある物質では水が最高です.それ以外,調べてみたのですが,みつかりません.

次回予告

気体の法則をおわらせ,第9章「反応速度と化学平衡」に進みます.

リンク

www.tnojima.net
www.tnojima.net

*1:厳密には同じではない