↑試験問題の解答例を掲示してもらいました.
今月16日(金)に行われた,医療衛生学部CE & RT「化学」の後期試験はすでに採点も終わり,通年の評価も終わっています.本日午後,合格者の学籍番号一覧が医療衛生学部1階に掲示されました.ここに学籍番号がある人はめでたく合格です.
学籍番号がみつからなかった人は2月5日(金)3限-4限に開講される補講にもれなくご招待となります.モル濃度計算がバッチリできるように鍛えてさしあげます.電卓を持ってきてくださいね.
さて,試験問題の難易度は,化学を専攻「しない」医療系学部1年生向けとしては,スタンダードなものでした.高校時代の「貯金」がある人は満点はムリでも余裕で合格ラインを突破できたことでしょう.
どんな感じだったかというと・・・・
[2] プロパン(C3H8)の完全燃焼に関する以下の問いに答えよ.
(i) プロパン500 g を完全燃焼させた際に生じる二酸化炭素(CO2)および水(H2O)の質量を求めよ.
二酸化炭素が1.50 kg,水が818 g.
高校化学をマスターしている人にとっては得点源になるようなこの問題,正答率は二酸化炭素が94 %,水が92 %でした.ここでプロパンをブタンに変えて数値をちょこっと変えたものが前期試験で出されていました.前期の復習をしておくようにとの指示を守っていれば解ける問題です.
二酸化炭素の質量と水の質量とをセットで求める問題なのですが,前期には不注意からか片方だけしか求めていない答案がありました.今回はそういうことのないように注意を促してあったので大丈夫でした.
(ii) この時に発生する二酸化炭素が25 ℃において占める体積を求めよ.
834 L.
これ,気体の状態方程式を使ってもいいし,シャルルの法則を使ってもいい問題です.温度が25℃となっているのがクセモノで,ここを298 Kとしなければいけないのに273 Kとしている答案が目立ちました.このミスを犯している答案が多かったため,正答率は61 %.前期も同じワナに引っかかっていました.*1
[3] 水溶液の調製に関する以下の問いに答えよ.
(i) 5 mol L-1 の塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を500 mL 調製するために必要な塩化ナトリウムの質量を求めよ.
146 g.
正答率は83 %でした.計算ミスが目立ちました.
(ii) 5 mol L-1 の塩化ナトリウム保存液と0.3 mol L-1 のリン酸保存液を用いて,塩化ナトリウムを0.15 mol L-1,リン酸を0.015 mol L-1 含む水溶液を500 mL調製する方法を述べよ.
5 mol L-1の塩化ナトリウム水溶液15 mLと,0.3 mol L-1のリン酸水溶液25 mLをとり,水で希釈して500 mLにする,が答え.
濃縮液をブレンドして望みの濃度の水溶液を調製するために必要な計算です.このパターンの問題は10月に演習の時間を設けて書き込み式プリントも配って集中して取り組みました.
その結果,8割くらいの学生がモル濃度計算をマスターしたのでした.
実際に採点してみると正答率は80 %.他に計算ミスが数名いましたので,モル濃度計算の教育的効果は上がっているとみてよさそうです.
その次は苦手意識の高いpH関連の問題.
[4] 水素イオン濃度に関する以下の問いに答えよ.
(i) 1.0 mol L-1 の硝酸(HNO3)水溶液を1 mL 取り,100 mL の純水に希釈したとき,この希釈液のpH はいくらになるか.この条件において硝酸は完全に電離するものとする.
pH 2が答え.
関数電卓がなくても,電卓がなくてもできるはずのこの問題,どうしたわけか正答率は62 %でした.pHという2文字をみると混乱する人もいるようです.
これに続いて記述問題.
(ii) 身体が炭酸緩衝系を用いて体液のpHを一定の範囲に保つしくみについて説明せよ.
りん酸緩衝系の場合について模擬問題で出題してあり,その解説が載っている教科書の同じページにこれの説明が書かれています.そこを確認してあれば解答できるのですが,平衡が絡む記述問題というのはとりつきにくかったようです.解答できていたのは半数程度でした.
↑模範回答例.
今回の試験ではボーナスポイントになる追加問題を6題出題しました.正答すれば成績に加算されて行くというオシシイ企画.しかしまったく取り組んでいなかった答案が半分くらい.
ここでは救済処置と腕試しとを混ぜて出題しました.
たとえば↓これは救済処置.構造異性体の問題.
C4H10Oであらわされる化合物の構造を全て記せ.ただし,不斉炭素をもつ化合物どうしは区別しないものとする.
7とおりあります.10点満点.部分点あり.7通り全て答えられたのは8名でした.
↑模範解答例.
一方,↓こっちは理解度上位層からの解答を想定した問題.指定教科書のレベルを少し超えています(が,講義では解説しました).
モル濃度Caの酢酸とモル濃度Cb の酢酸ナトリウムから成る緩衝溶液を純水で10倍に希釈しても,そのpHはほとんど変わらない.この理由を説明せよ.酢酸の電離定数をKaとし,電離度をαとする.
完全回答2名.部分点3名.履修者84名の中にはこういう問題が好きだというコメントをしてきていた学生が数名いたので出題してみました.
↑模範解答例.
有機化学のほうはやたらめったに暗記をしなくて済むように,覚えておくべき物質名と構造を指定してありました.その中から出題しました.「覚えて行けば得点になる」ということで,集中して暗記に取り組んだ学生も多かったようです.入学時アンケートで高校時代に化学を履修していなかったと回答している学生とか,前期試験で不調だった学生が根性を出して全問正解達成,という例もありました.
↑模範解答例.
暗記が得意な学生と,計算が得意な学生,高校で化学を履修していなかった学生と,化学を選択科目に選んで入試で入ってきた学生.84名それぞれのバックグラウンドが活かせるような出題形式にしたのですが,出題者の意図は理解してもらえたでしょうか.
それでは合格となったみなさんはとりあえず他の科目の合格発表を心配してください.不幸にも不合格となった数名は補講でお会いしましょう.
なお,今回の試験の略解は以下のリンクからダウンロードできます.
リンク
www.tnojima.netwww.tnojima.net
*1:「同じ手を使うなんてセコいぞ!」→「ふふふ,同じ手にかかるとはな!」