Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

(11)酸化と還元I

6月最終日.出席者は少し戻って27名.

酸化と還元

酸素原子を受け取る,水素原子を奪われる,電子を奪われる,酸化数を増やす,といった場合が「酸化」です.これの逆が「還元」です.酸化と還元は必ずセットで起きます.

酸化数

誤解されやすい概念の「酸化数」です.「価数」と区別できていないと,塩素原子の酸化数が7というような場合に混乱することになります.酸化数と価数は別の指標です.

化学式中の各原子に酸化数を割り当てて行くルールは一般的に次のとおりです.

  • 水素に+1→酸素に-2→アルカリ金属に+1→2族に+2→ハロゲンに-1→残った原子に残りの数
  • 多原子イオンの場合はそれ全体の価数が酸化数

全体的に酸化数がゼロになればOK.イオンならばイオンの価数が酸化数になります.

今回わかりにくかったであろう問題は次のものです.

(4) 3Ag + 4HNO3 → 3AgNO3 + 2H2O + NO

-------- p75

上記手順に従うと,ここではAgとNの酸化数が不明です.Agが1以外の酸化数を取ることは滅多にないので,Agの酸化数を1としてしまえば消去法で左辺HNO3のNは+5,右辺AgNO3のNも+5,右辺NOのNが+2となります.

しかしAgの酸化数が+1であるという知識がなかった場合はどうすればよいでしょうか.ここでは「多原子イオンの場合はそれ全体の価数を酸化数とする」というルールが使えます.NO3-1が酸化数-1ということで,AgNO3のAgは酸化数が+1,また,NO3-1においては酸素を先に考えてNの酸化数を+5にすれば釣り合います.ちょっとつまずきやすい場所かもしれません.

演習問題には授業時間の半分を充てました.じっくりと元素記号を一つ一つ数えながら問題を解いて行けたことと思います.

理解できたような気がします.

前回のレポート課題に対する質問

次の各物質の0.1 mol/L水溶液について,pHの小さいものから並べ,その理由を説明しなさい.

アンモニア,塩化水素,塩化ナトリウム,酢酸,水酸化ナトリウム

この問題に対する質問を4名の学生から受けました.「0.1 mol/L」という濃度をどのように使うべきかがわからなかったあたりが混乱の元だったようです.ここでは「いずれも同じ濃度」という点だけが重要となります.考え方は以下のとおりです.

アンモニア→弱塩基

塩化水素→強酸

塩化ナトリウム→中性

酢酸→弱酸

水酸化ナトリウム→強塩基

というわけで,強塩基ほどpHの値が大きくなり,強酸ほど小さくなる,というルールに従い,以下のとおりとなります.

塩化水素,酢酸,塩化ナトリウム,アンモニア,水酸化ナトリウム

次回予告

第12章「酸化と還元II」に進みます.これが2009年度火曜2限化学要習の最終回になります.毎回のレポート課題の解答を配布します.

2009年度化学要習

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