80名出席(履修者85名).なんとなく遅刻者が目立ち始めたようなここ数回です.
前回の講義に対するコメントの一括紹介
これらをひととおり紹介しました.回答内容は2009年5月27日のエントリー参照.
結晶格子の名前の紹介
代表的な例として「体心立方格子」,「面心立方格子」,「六方最密構造」を採り上げました.
参考リンク→「化学教材のホームページ」
1968年
私がうまれた1968年について紹介しました.化学分野ではPCBが社会問題になっていました.
40才というのが本当でビックリしました.先生の遊び心が好きです.先生が楽しそうに講義してくれると聞いている方も楽しく頭に入れられマス.
楽しく行きましょう!
↑そういえば”キャッチコピー診断に「大学1年生の化学」と入力したらこのようなコピーが出てきました.
ドライアイス危険
今回はCO2がところどころで出てきます.そこでドライアイスの話題を紹介しました.アイスクリームの季節になるとドライアイスで怪我人が出たとの記事が新聞に載ったりTVニュースで報道されたりします.単純な思いつきでペットボトルの中にドライアイスを入れてみたりすることが非常に危険だということを体積変化を引き合いに出しながら説明しました.
参考リンク
また,ドライアイスの昇華にともなう体積変化が持つ破壊力を以下の動画で理解してもらいました.
コンクリートブロックが砕け散るほどの威力を持っていることがわかります.
ドライアイス爆発おもしろかったです.
また動画を見たいです
ぜったいにマネしないように!
前回の続き:多重結合(p99)
ルイスの点電子式を用いて二重結合と三重結合をあらわす方法を説明しました.余っている点電子と空いている場所との交換でオクテット則を満たします.
電子軌道(p70)
あとまわしにしてきた箇所です.有機化学の範囲に入ってから扱おうと思っていたのですが,メタン,アンモニア,水といった分子が非共有電子対も含めた状態でなぜ正四面体構造をとるのかを説明するためには軌道の話をしておかなければなりません.
分子内のすべての結合が単結合の場合,14族元素周りの原子の配列は正四面体となり,15族の場合は三角錐形,16族の場合は折れ線形,17族の場合は直線になる
----- 生命科学のための基礎化学 無機物理化学編 p104
教科書には漠然とこのように記されているのですが,大学に入って学ぶ化学ではその理由についても知りたいところです.数式を使うことなく具体的な例を出しながらs軌道,p軌道,sp3混成軌道について解説し,分子の形が正四面体になる理由を説明して行きました.
まず水素原子の電子が存在する確率について古典モデルと量子論的モデルを比較しました.そして水素分子,ヘリウム原子と例を持ち出して1s軌道の説明.
続いてL殻に相当する2s軌道と2p軌道を考えました.第2周期の元素に関して各軌道への電子の収まり方を説明し,続いて炭素の軌道を説明しました.ここでは,炭素が4個の水素原子と共有結合をつくる際に,立体的な反発を減らすために軌道を組み替え,sp3混成軌道を形成します.その結果,メタン分子は正四面体構造となります.次にアンモニア分子を考えました.ここでは正四面体の角の一つが非共有電子対になります.水分子では二つが非共有電子対となります.
最後に簡単にsp混成軌道とsp2混成軌道を紹介し,両者の組み合わせ例としてCO2分子を紹介しました.しかしここは時間の関係で大幅に内容を省略したためわかりにくかったことと思います.
有機電子論の基礎でもあるこの部分を,化学を専門としない1年生に講義するという試みなので,高校化学を超えた範囲に新しさを感じる学生と,付いて行けない学生とが現れることが予想されました.「電子軌道」の概念が一度に理解できるとしたら相当の秀才でしょう.何が何だかわからない領域に来てしまったと感じる学生が多数となる事態を予想しました.しかし化学の奥深さを知る良い項目でもあると考え,あえて採り上げてみることにしました.
今回はこれまでになく多数のコメントが寄せられました.その過半数がこの電子軌道に関するものでした.まず,かなりエキサイティングだと感じた学生からのコメント.
spおもしろいです!!もっと細かい世界を知りたいです.
分子の形の違いが高校のときよりも違うのに驚いた.こういったことをもう少し増やしてほしい.
この軌道の形の存在に最初に気づいた人はどんなに興奮したことだろうと思った.d軌道にある2つに分割した軌道などではどのようにして電子が存在しているのか不思議だ.
つづいて今回の講義内容にポジティブな印象を受けた学生からコメント.
高校で化学選択だったがs軌道,p軌道のはなしは初めて知った.
高校で深く学ばなかったことを学べたので良かった.
今回の内容は高校でも習ったことのないところだったので,聞いていて楽しかったです.
今日は高校ではやらなかったところに触れることができたので,知的好奇心が少し刺激されたような気がしました.
これまでは高校化学の復習という感じが濃厚でした.これからは高校化学では扱われていない内容も増やして行きます.今回のはその第一陣でした.
今日の講義を受けて今までの化学の授業をよりいっそう深く理解することができた.
今回の授業のおかげでいろいろ理解が進んだと思う.
理解が深まったと感じる学生が出てきたことが何よりです.
今までは漠然と理解していた分子の「かたち」について,そうなる理由が分かっておもしろかった.
軌道の形など自分が思っているより複雑で興味深い内容でした.
今日やった電子軌道は数学でいう「領域」みたいなものですね.座標で考えると少し近くなった気がしました
電子の配置がこんなに複雑だとは思わなかった.なんとなくだけど形がわかって良かった
電子軌道についてはなんとなくわかったような感じがする.ただ,今はL殻の原子中心でやっているが,M殻やN殻などになった場合にどうなるか疑問に思った.
今まで分子の形はただ憶えているだけだったけど,その理由が電子の軌道によるものだとわかった.
少し難しかったけれど初めて聞いた内容でおもしろかったです.
せっかく大学に入学したのだから新しい内容を学びたいところですね.
一方,今回の内容に関して理解に苦しんだ学生からもコメントあり.
立体的で少しイメージしづらかった.
イメージしづらくて難しかったです.
3次元空間のイメージは個人差も大きく,難しいと感じる人も必ず現れます.3Dグラフィクスを上映して済ませるという手も考えられるのですが,軌道の概念図はまずは自分で書いてみることが大事と考え,あえて板書で講義を進めました.
量子論難しい.
そんなあなたに量子論の入門書↓ おそらく国内で最も売れた量子論の参考書でしょう.コンビニにもあったし.電子の振る舞いとかを理解するのに役に立ちます.
何の話をしているのか全くわからなかった.
sp3,sp2,sp軌道のことがよくわからなかった.
混成軌道がよく分かりません.
軌道がよくわからなかった.
混成軌道が難しかったです.
新しい概念に出くわしたときはどうしても理解に苦しむところです.しかしそれを乗り越えることが大事なのです.
混成軌道が理解できなかったのですが理解した方が良いですか.
「理解できなかったものを理解できるようになる」ことには意義があります.「混成軌道」を理解することにどれほどの意義があるかというと,有機化合物の性質を理解するときに非常に役に立ちます.では有機化合物の性質を理解することにどれほどの意義があるかというと,あとは個人の問題になります.
CO2の混成軌道がよくわかりませんでした.
CO2のやつがよくわからなかった.
CO2に関してはちょっとわかり難い図を書いてしまいました(なんか軌道の数を間違えているし).京都薬科大学のサイト内に模型を使ったとてもわかりやすい説明図をみつけましたのでこれを次回紹介します.
よくわかりませんでした.
関連して,
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はい.ハイゼンベルグの不確定性原理です.その本は話題になっていたのは憶えていますがまだ読んでいません.
オービタルの混成軌道はどのような時に起こるのですか?混成軌道はいつでも起こり得るのですか?
有機化学の範囲に入ったとき説明します(たぶん).
○
電子軌道のコンピュータシミュレーションを投影しました.使ったプログラムは以下のサイトで公開されているJavaアプレットです.
しかしプロジェクタの不具合で赤色が出ず,十分な説明ができませんでした.講義室設置機器のケーブルに不具合がありました(交換してもらいました).
動画の赤が映らなくて残念だった.
次回再度投影します.
その他のコメント
図を書く順番を統一してください.
それは難しいですねえ.説明は表を読み上げるようにはできないからです.
聞こえてくる声の量に波があります.顔が横を向いたときが顕著です.
声が聞き取りづらいのはマイクの位置が下すぎるからではないでしょうか.
前の席があいていますよあいかわらずの音響問題.本日はワイヤレスマイクの電池が途中で消耗し始めていたようです.次回は新品に交換して講義を始めます.
CO2の画像の文字が小さすぎて見にくかったです.
見づらいフォントサイズの具体的な値がわかりました.次回からは大丈夫です(たぶん).
右の黒板の下の方に文字を書くと,左の席から見えなくなってしまうので,できれば上に書いてほしい.
パソコンが開いていると黒板の下の文字が見えない.
黒板の下を使わないことにします(きっと).
今日の話は結構面白かった.でもちょっと難しかった.
難しくても面白いほうが良いでしょう.
結構おもしろかった.でもすぐに忘れてしまいそうです.
人間は忘れる動物です.電子軌道は教科書下巻に進んだときに再びやってきます.
高校で深く学ばなかったことを学べたので良かった.
それが大学の化学です.
入試問題みたいのをやりたい.
センター試験みたいなのでしょうか,個別学力試験みたいなのでしょうか.
テストの形式は?
入試問題みたいの(←うそ).
特になし.
次回予告
第4章「原子の結合」を終わらせ,第5章「化学反応式とモル」(p120)に突入する予定です.
リンク
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