履修登録者13名全員出席.写真は本日のL号館実習室前の新緑.
コメントおよび感想の紹介とそれらへの回答
2009-05-15のエントリーに記した内容を回答しました.
発光生物あれこれ
「基底状態と励起状態」の例として先週,ホタルの発光を紹介したところ,これについての質問が寄せられました.そこで様々な発光生物がいることを紹介しました.以下,参考にしたリンク.
発光生物を紹介した書籍としては以下のものがおすすめです.
発光生物のふしぎ 光るしくみの解明から生命科学最前線まで (サイエンス・アイ新書)
- 作者: 近江谷克裕
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2009/02/17
- メディア: 新書
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化学発光に関連して蛍光の話もしました.なんといってもこの話題です
ここで「蛍光蛋白質GFPの溶けている水溶液にブラックライトを当てると緑色に光る」という話をしたところ,
ブラックライトと言えば・・・・
白い服着てブラックライトに当たるとボヤーって光るじゃないですか.あれって何が起こってるんですか? 化学反応ですか?(・ω・)
あれは繊維に使われている蛍光色素が長波長紫外線から紫色の光に励起され,これが基底状態に戻る際にもう少し波長の長い可視光線が放射されているものです.化学反応とはちがいます.なお,洗濯物を白く見せる洗剤,にも同じような蛍光物質が混ぜられています.
「原子の構造」の続き
先週は周期表についての説明が時間切れとなっていました.ここは自然界に存在する様々な元素を整理して理解するために大切な箇所なので,復習も含めて時間をかけて解説しました.
高校時代,周期表について全く理解できていませんでしたが,今日の授業でかなり分かるようになりました.
周期律がなかなか頭に入らないです.むずかしいです.
それでは周期律完全攻略を目指してダメ押し解説を次回あたりにやりましょう.
周期表メドレーですね.結合きらいです^^
周期表といえば「萌える元素周期表」とかいう本ありましたよね.
ふざけてるかと思いきや説明はとても詳しい謎の参考書・・・
あと,ルテチウムちゃんが可愛い^o^
先生,読みました? もちろん読みましたよね^^^^
この本,もってます.ルテチウムは71番元素.150ページに載っていますね.
[rakuten:book:13043143:detail]
大量の金属ナトリウムを処分する映像の紹介
眠そうな顔が増えてきたので,先週の続きとして以下の映像を紹介しました.戦時物資として蓄えられていた大量の金属ナトリウム(約9,000 kg)をドラム缶ごと,ドカンドカンと湖に投げ込んで爆発させる様子を記録したフィルムです.
VTRの爆発のスケールのデカさには驚きました.
爆発の映像はすごかったです.でも湖(海?)の環境はどうなるんだろうと心配になりました.
ここはグランドクーリーという地域にあるレノア湖という湖です.ここはもともと魚の住まないアルカリ性の湖だったので,廃棄ナトリウムによる環境への影響は無視できる程度だったようです.
原子の結合(p90)
イオン結合,共有結合,金属結合,があることを説明しました.この順番に講義を進めて行く計画です.
まずはイオン結合の実際例として,金属ナトリウムと塩素ガスとの反応を紹介しました.JSTが公開している理科教材コンテンツのなかに良いものがあったので,まずはそれを上映しました.ナイフで金属ナトリウムをスライスし,集気びんに入れ,ここに塩素ガスを入れて行きます.その後の様子を早送りで見て行くというものです.ナトリウムが白く色を変えつつふくらんで行く様子がよくわかります.
ナトリウムと塩素の反応で塩素は黄色かったけど,できた塩化ナトリウムは色がなくて白色になっていたのに驚きました.
化学反応の前後で物質は様々な性質を変えます.色もその一つです.
普通に売られている食卓塩はあのようにして作られるのですか?そうだとしたら少しショックでした.普通の塩の他にも岩塩が売られていますが,あれはどう違うのですか.値段も高いので,他のものも含まれているのでしょうか.
食品として売られている食塩は天然の岩塩を砕いたものです.ナトリウムと塩素を反応させて作られているわけではありません.ご安心ください(と言ってもNaClはNaCl).世界中にはさまざまな岩塩の産地があります.岩塩には産地ごとに不純物の種類と量が異なります.K+,Ca2+,Mg2+,Zn2+,など.そのため,見た目や味にちょっとした違いが出ます.そこが値段の違いになっています.
NaとClが反応して塩化ナトリウムができる様子をはじめて見た.爆発もそうだが,これからもいろいろな物質の反応がみたい.
今回はイオン結合の生成反応を紹介しました.次は共有結合の生成反応を紹介しましょう.
イオン結合の電子配置の仕組みがわかりやすかったです.今日習ったところはしっかりと覚えられるようにしていきたいです.
時間をかけて説明した甲斐がありました.ぜひ考え方を覚えてください.
たしかに.欠けている部分を持つ方を「マイナスのイオン」にしたくなる気持ちはたいへんよくわかります.しかしこれには深い理由があるのです.まだ電子も原子も分子もわかっていなかったころ,電気の流れについて研究が行われ,電流が流れる方向として+極と-極とが今の方向に決まりました.その後に電気回路を電子が流れることがわかったのですが,その流れが電流の向きとは逆だということもわかりました.つまり電子は+極に向かって流れているものなのだから,マイナスの電気を持った粒子だ,ということになったわけです.
もしもむかしむかし電流の流れる方向の符号を今とは逆に定義していたら,いまの「プラス」は「マイナス」に,「マイナス」は「プラス」になっていたことでしょう.そうするとNa原子から電子が1個とれた状態は「Na-」と記されていたかもしれません.
これは電気の研究を始めた昔、まだ電子が発見されていないときに正電気の流れる方向を電流の方向と定めたからです。今考えると逆のわけですが、これは別に不都合がないので、現在も電子の流れとは逆の方向を電流の方向としております。
NaClという表記はNa+とCl-とが交互に配列したイオン結合性結晶であって,食卓にあるアレはNaClという「分子」ではない,という説明をしました.[注意]としてこのことを板書しました*1.
「NaCl」というものはわたしの中で「NaCl」だったので,存在しないと知ってとてもおどろきました.
[注意]のところに書いてあることをよく理解できませんでした.
ここのところ,次回の講義で補足説明しましょう.
イオン結合,共有結合,金属結合がごちゃごちゃです.高校の時に結合がいっぱいかいてあったものをみせられ,みわけろといわれてできなかったのを覚えています・・(泣
おお,これはテスト問題のつくりかたの参考になるぞ やみくもに覚えるのではなく,使い回しの効くルールをマスターして行くことを目指しましょう.2年生に進級したときには「みのまわりの物質で化学式を見せられればだいたいどんな結合なのかわかる」という状態になることを目標にしましょう.
金属結合とは何でしょうか?
金属原子どうしが結びつく様式のことです.指定教科書には載っていないのですが*2,実生活に深くかかわるものなので次回かその次あたりに説明します.
遷移元素は2種類以上のイオンをつくることが多いとありましたが,なぜですか?
不安定な物質なんですか?
これは原子番号が増えて行って遷移元素のあたりに来ると,内側の電子殻から順に電子が収まるのではなく,ところどころスキップして行くからです.その理由については何回かあとの講義で説明する予定です.原子が不安定だからではありません.事実,銅,ニッケル,鉄,コバルトといった「丈夫な」元素も遷移金属元素です.
以下の場所に電子配置をリスト化されています.ここを見ると,最外殻電子の数が変わらないまま内側の殻の電子数が変わる様子がわかります.
その他コメント
爆発させるシリーズの動画とてもおもしろいし,化学にすごく興味がわきます.授業で板書だけでなく映像もついていてわかりやすいです.
なぜか好評な「バクハツ系」.しかしすべての項目にバクハツ系のネタがあるわけでもなく,毎週毎週無い知恵を絞ってネタ探しをやっています.
これまでのバクハツ系ネタ*3
科学者は壊すことが趣味なのですね
「壊す」→「なかみのようすをみてみる」という意味において,そのとおりです.趣味というよりは考え方でしょうか.
春の陽気のせいか,眠そうな顔が目立ちました.フラフラしている学生もおり,もしやインフルエンザでは,と心配したのですが,そうではなかったようです.眠るなとは申しませんが,この先,講義室は冷房onになるので風邪など引かぬようよく眠ってから登校しましょう.
今日はすこぶるねむくて大変でした.頑張って90分意識もたせました.ぅぅぅ
私も最近寝不足なので豚フルとかかぜにかからないようにしっかり寝たいです.
次回は元気になって授業にのぞみたいです.すいませんでした.
健康第一.
講義を終えて
ノートをとる側にしてみれば非常に不親切な黒板の使い方をしているということを感じており,改善法をいろいろと考えているのですが,ノートと黒板とでは縦横比がまったく違うので一筋縄では行きません.私は文章は書かず,キーワードや説明図を二次元的に連結させて行きながら話を完結させて行く方法を採っているのですが(それが私のアタマの中の仕組みなのですが),はたしてこれが「わかりやすい」のかどうかまだ何とも言えない状態です.
次回予告
原子の結合(p90)の続きをやります.共有結合の説明.もしかしたら金属結合も紹介するかもしれません.
リンク
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*1:食卓のアレを「NaCl分子」と理解している人が意外と多いものです.なお,気体状態ではNaCl分子になっているのですが,これは別のハナシです.
*2:指定教科書は生命科学分野を専攻する学部生を対象として書かれているため,金属結合については割愛されたものと思われます.
*3:Brainiacの実験映像に関しては作り物なのではないかという意見があります.作りものなのかもしれないし,有能な実験家がスタッフにいて上手に実験を成功させているのかもしれないし,何度もやりなおしをしてベストのシーンを撮影しているのかもしれません.実際のところどうなのか,私にはわからないし,それを検証するのは私の仕事ではありません.